【医療編】他企業はビッグデータをどう活用してる?業種別に見るビッグデータの活用事例10選

2021.11.16

2021.11.17

DXのあるべき姿を考える

ビジネスの世界において活用されることが当たり前となったビッグデータですが、実は医療の分野でも昨今さまざまな場面で利用されています。“医療ビッグデータ”という言葉もあり、医療とビッグデータとの関係が密接であることが伺いしれます。

今回は、ビッグデータ活用の情報収集をしている方に向けて、医療業界に特化したビッグデータの活用事例をご紹介。どういった場面で、またビッグデータを活用することでどのような結果になっているのか、一つずつ解説します。
 
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ビッグデータの利活用が急速に進んだ医療分野

ビッグデータの利活用が急速に進んだ医療分野

各分野においてさまざまなケースでビッグデータが活用されていますが、医療分野はその中でも特に急速にビッグデータの利活用が進んでいる分野の一つ。“超高齢化社会”と言われる日本において、医療やヘルスケア分野での人材不足は深刻さを増すばかりであり、こういった背景も医療分野でのビッグデータ利活用が急速に進んでいる原因の一つであると言えます。

医療分野においてのビッグデータは”医療ビッグデータ”とも呼ばれており、医療や人の健康に関わるデータのことを指します。レセプトやカルテなどが電子化されたこともあり、人々の健康にまつわるデータの収集もしやすくなりました。

医療ビッグデータを有効活用するために、厚生労働省では2015年より「データヘルス改革」の取り組みに着手。ビッグデータを収集するためのプラットフォームを構築し、ICTを活用しながら医療業界の人材不足を補おうというのが、データヘルス改革の大枠です。

データヘルス改革を進めていく上でも、医療ビッグデータは重要な存在に。それだけでなく、新薬の開発や最新医療技術の開発、地域の包括ケアサービスの推進など、人々を取り巻くさまざまな医療の場面において、医療ビッグデータは活用されているのです。

医療のビッグデータ活用事例10選

医療のビッグデータ活用事例10選

医療のビッグデータはすでに世界各国で活用され、病院や製薬会社などの小さなコミュニティだけでなく地域の包括医療にも役立てられています。では、医療ビッグデータがどのように活用されているのか、日本だけでなく海外の事例にも目を向けてみましょう。

エビデンスに基づいた医療政策を立案/横浜市

横浜市では、医療実態の正確な把握が求められる医療政策の立案時に、医療ビッグデータを活用しています。「YoMDB(Yokohama Original Medical Data Base)」と呼ばれる独自のデータベースを活用し、医療レセプトデータや介護データ、特定検診等のデータを分析。導き出された結果を基に、在宅医療の将来的な需要や在宅緩和ケアの実態、がんの在宅ターミナルケア患者の分析などを行っています。

2018年にはYoMDBを用いた分析結果の論文が国際誌に取り上げられるなど、その活動は世界から注目を集めています。

医療ビッグデータを使って健康増進について研究/大阪大学大学院・日本生命

大阪大学大学院と同大学医学部附属病院は、日本生命保険相互会社とともに「産学連携・クロスイノベーションイニシアティブ」と呼ばれるプラットフォームを立ち上げ。このプラットフォームは臨床・研究・産業・行政などの多様な組織を連携するために立ち上げられたもので、双方が持つビッグデータを活用する場となっています。

それぞれのビッグデータを活用することで、健康増進や健康寿命の延伸、民間企業による保険商品・サービスの強化などに向けた研究が可能に。再生医療の発展にも期待が持てることから、注目すべき取り組みであることが伺えます。

生体システムビッグデータから疫病システムを解明/早稲田大学

早稲田大学と国立研究開発法人 産業技術総合研究所がタッグを組み、国内生物のビッグデータ解析のための基盤を構築。バイオ分野と情報技術とを組み合わせることでさまざまな産業への応用ができると期待されていますが、一方で迅速に結果を示すための情報解析技術の開発が急がれているという背景もありました。

早稲田大学と国立研究開発法人によって設立された「産総研・早大 生体システムビッグデータ解析オープンイノベーションラボラトリ(CBBD-OIL)」は、両者の情報解析シーズ技術と早稲田大学が持っている生体ビッグデータを組み合わせ、疾病のメカニズム解明や個別化医療実現のための研究が行える施設。研究が進むことで、特効薬の開発につながったり、病気の予防や発症を予測できるのではという期待が持たれています。

医療に関わる問題解決のために医療ビッグデータを活用/イスラエル

イスラエルでは、1990年代半ばから収集し始めた医療ビッグデータを活用し、デジタルヘルス分野への取り組みに力を入れています。活用されているのは、個人の一生涯に渡る医療データ。イスラエルはその人が生まれたときから亡くなるまでの一生涯の医療の記録が電子データとして保管されており、医療費の抑制や国民健康寿命の延伸、医療従事者にかかる負担の軽減などに必要なデータが役立てられています。

また、長年蓄積したデータを分析して、病気になる前に診察が受けられるような仕組みも確立。医療ビッグデータを分析することで、再発の予防や遺伝的な要因から起こりうる病気の予防、病気の早期発見など、データの力を有効活用しながら“予防医学”にも国を上げて取り組んでいます。

ビッグデータを分析して乳児の命を守る/アメリカ・オハイオ州

アメリカ・オハイオ州は、アメリカの中でも特に乳児の死亡率が高いとされている州です。通常アメリカでは、乳児の死亡率減少に向けた対策など公衆衛生課題に対して、母親の行動に着目してプログラムを組んでいます。しかしオハイオ州では、憶測だけで解決できないこの問題の深刻さにメスを入れるためビッグデータを活用して的を絞り、そのターゲットに対して的確にアプローチするための新たなプログラムを組んだのです。

ビッグデータを活用する前は、「どういった乳児と母親が乳児死亡リスクが高いのか」、「どういった乳児と母親が医療の恩恵と支援を受ける可能性が高いのか」、「どういった医療行為とプログラムが乳児死亡率低下に対する費用対効果が大きいのか」という三つの問題の答えを導き出すことができませんでした。しかしビッグデータを分析・活用しはじめてから、上記の三つの問題は解決へと向かっていきます。

今では分析結果を基にした“医療行為プロトコル”を作成し、エビデンスに基づいたプログラムを策定。ヘルスケア提供者や家庭訪問スタッフ、州機関のスタッフなど、さまざまな人たちのもとで、人間中心設計のアプローチが進められています。

患者からの医療データを医療研究につなげる/Patientslikeme

アメリカでは、患者自身が病気についての情報を投稿できるサイトが存在します。「Patientslikeme」と呼ばれるこのサイトは、患者が自身の病気について投稿し、その内容を他者と共有できるのが特徴です。実際にその病気にかかっている患者からの医療データが集まることから、これらのデータを医療研究や治療法の検証などに活用。

通常、臨床実験を行うためにも時間的にも経済的にも莫大なコストがかかっていましたが、このサイトを利用することでコストを抑えながらこれまでと同等の臨床実験を行うことが可能に。膨大な量かつリアルタイムで患者の声が集められるとあって、今後も医療研究に活用される予定です。

AIによるビッグデータの解析でゲノム医療を実現

ガンの治療などに期待をも持たれているゲノム医療。ゲノムとは体の設計図であるDNAの中の“遺伝情報”のことですが、人間の力だけでこの遺伝情報を全て調べるとなると、膨大な量の症例データや論文などを調べなければいけないため、現実には難しいと言えます。

そこで注目されたのが、AIの存在。ビッグデータの解析を得意とするAIの存在が、ゲノム医療の進歩につながると考えられているのです。ゲノム医療がますます進歩すれば、ガン治療に対するゲノム医療の需要が高まるという一説も。ビッグデータの存在は、先進医療の進歩にもつながっているのです。

病気のリスクを特定するための研究にビッグデータを活用/MICIN

オンライン診療サービスなどを手掛けるMICINは、東京女子医科大学と共同でビッグデータを活用しながら脳梗塞のリスクについての研究を行っています。約1,500人の脳梗塞患者の過去の人間ドッグ結果から、リスクとなる因子を見つけ出すための研究を実施。

AIが人間ドッグの結果をもとにビッグデータを解析。どういう生き方をすると脳梗塞になるのかやどうすれば予防できるのかなど、この研究が実を結べばまだ病気にかかっていない人が「自身の病気の可能性」を認識できる日が来るのも近いのかもしれません。

GPSつき吸入器を配布し喘息の原因を究明/アメリカ・ケンタッキー州

アメリカ・ケンタッキー州ルイビル市は、国内でも特に喘息患者が多いことで知られる地域でした。その原因を究明するために活用されたのが、患者の吸入器につけられたGPSからの位置データ。
GPSセンターつきの吸入器を患者に無料配布し、発作が起きて吸入器を使用した際の位置や環境データを収集することで、喘息発作につながる原因を究明しようと考えたのです。

結果、喘息の発作が起こりやすくなる地域の特定に成功。どのような場所で発作が起こりやすいのかがわかったことによって、重篤な喘息患者への注意喚起が促せるようになりました。

遺伝子発現プロファイルを比較して新しい薬を生み出す

ビッグデータの存在は、創薬の世界にも影響を与えています。今世界では、「ビッグデータ創薬」・「AI創薬」なるジャンルが誕生しており、データを基にした創薬に力を入れる企業が少なくありません。

ビッグデータ創薬は、薬剤と疾患の相関性を表す膨大なデータの中から、人間が新たな共通点を見つけて新たな薬を生み出すという方法。“遺伝子発現プロファイル”を比較して薬剤の有効性や副作用、毒性などを見極める方法もあり、臓器別で分けられていた疾患の分類では見つけられなかったような親近性が確認できた例もありました。

日本では、超高齢化社会を迎えていることから、アルツハイマーに対する治療薬の開発が期待されているとのこと。ビッグデータは、苦しんでいる人を助けるためにも活用されているのです。
 
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まとめ

データサイエンスの時代とも言われている、21世紀。医療分野においても、データサイエンスの重要性は極めて高いものとなっています。

現在研究段階のものもまだ多くあるため、今後の医療の発展はビッグデータをどう活用するかに左右されると言っても過言ではないのかもしれません。

Fabeee編集部

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こちらの記事はFabeee編集部が執筆しております。