【製造業編】他企業はビッグデータをどう活用してる?業種別に見るビッグデータの活用事例10選

2021.11.10

2022.02.02

DXのあるべき姿を考える

ビジネスにおいて、欠かせない存在となっているビッグデータ。各業界、ビッグデータを活用することで、持続的な成長を遂げていることでしょう。

今やさまざまな企業のビッグデータ活用事例がネット上などで紹介されていますが、今回は各業界の中でも早めにビッグデータの活用に着手した「製造業」にスポットを当て、ビッグデータの活用事例をご紹介します。ぜひ、ビッグデータ活用の参考にしてください。
 
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製造業ではビッグデータの活用で生産性がアップ

製造業ではビッグデータの活用で生産性がアップ

IoTの定着が他の業界に比べて早い段階で進んでいた製造業界。IoT化が進んでいる業界であることから、ビッグデータの活用についても当たり前の状況となっています。

製造業においては、ビッグデータの活用が製品の品質向上や生産性の向上、品質管理などに直結。生産過程における不一致が生み出される工程を見つけ出すことにもつながり、ビッグデータの活用はより安定した製品を生産するために欠かせないプロセスとなっています。

製造業に従事する企業の中には、“データアナリティクス”を重視する企業が多いのも自然な流れ。製造業の企業にとって、ビッグデータを活用することは意思決定や課題解決までの時間短縮につながるだけでなく、生産性のアップにつなげるためにも必要なことなのです。

製造業のビッグデータ活用事例10選

製造業のビッグデータ活用事例10選

製造業界では、さまざまな場面においてビッグデータが活用されています。実際にビッグデータの活用を行っている企業の事例をみていきましょう。

ビッグデータ活用のためのシステムを開発/小松製作所

建設機械や鉱山機械のメーカーとして知られる小松製作所は、ビッグデータ活用事の事例が特によく知られている製造業の企業の一つです。小松製作所では、「KOMTRAX(コムトラックス)」と呼ばれるIoTのシステムを開発し、重機それぞれからの情報を収集。収集したデータは社内だけでなく社外からも閲覧できるようになっており、省エネ対策や重機の保守管理に役立てられます。

また、KOMTRAXのデータは顧客にも開示されており、重機の稼働時間や作業者の名前を確認することが可能に。KOMTRAXにて収集したビッグデータを活用することで、故障原因の追究がしやすくなったりメンテナンスの迅速化が叶ったりと、さまざまなメリットが生まれています。

ビッグデータから時間別の来店人数を予測/アンデルセン

パンの製造・販売を行うアンデルセンでは、「ANS(アンデルセンシステム)」と呼ばれる販売管理システムを導入し、システムに蓄積されたビッグデータを商品売上パターン予測や時間別の来店客数予測に活用しています。

ANS導入前は、各店舗の店長の経験などから製造量が決められていたそうですが、ANS導入後は売上が1.1%上昇という結果に。ANSを導入していない店舗では売上が0.9%下がっているとのことで、ビッグデータの活用によって売り上げの実績にも大きな違いが出るということが証明されています。

走行データを活用して新たなサービスを創出/本田技研工業

日本の自動車メーカーであるHonda(本田技研工業)は、370万台ものホンダ車のデータを活用し、データサービス事業「Hondaドライブデータサービス」の新サービスである「旅行時間表示サービス」を生み出しています。日本で初めてとなる旅行時間表示サービスは、走行中のホンダ車からリアルタイムに集まってくるデータを基に、渋滞路や迂回路にかかる所要時間を計算。

分岐点に設置されたデジタルサイネージに所要時間が表示され、ドライバーのルート判断の材料となります。先に行われた実証実験では、同等の交通量の中で所要時間を半減させることに成功。旅行時間表示サービスによって渋滞が回避できるという結果が出たことから、今後は渋滞対策だけでなく都市計画や災害対策など幅広い分野での活用が期待されています。

故障の検知にビッグデータを活用/富士ゼロックス

複合機の製造企業である富士ゼロックスでは、コピー機の修理に対してもビッグデータを活用しています。従来のコピー機では、ユーザーからの申告があって初めて作業員を派遣するという流れでした。故障の原因や故障箇所については、作業員が確認して初めて状況がわかるため、迅速な対応ができません。

そこで富士ゼロックスでは、パフォーマンスデータを送信できるコピー機を開発。常時コピー機からパフォーマンスについての情報が送られるため、故障する前に不調な箇所を見つけることができ、迅速に対応できるようになりました。作業員の派遣が必要なケースでも事前にデータから現在の状況を確認することができるため、事前に現状に対する準備を行ってから現地に向かうことができるというメリットがあります。

また、コピー機からの大量のパフォーマンスデータは、製造課程においても活用。故障しやすいパーツの見直しなどに活かされ、プロセスの改善に役立てられています。

ビッグデータ活用のためにBIツールを導入/無印良品

製造業と販売業に従事する無印良品では、自社アプリである「MUJI Passport」にて収集したビッグデータを活用するため、BIツールを導入。顧客が商品の購入前から購入後までを店舗で過ごす“顧客時間”の分析に活用し、それまでエリアマネージャー自身の感覚に頼っていた商圏分析の結果の視覚化に成功しました。

商圏分析の結果が視覚化されたことにより、「新規出店が既存店に対してどのような影響を与えるのか?」という予測が従来よりも立てやすい状況に。今後は「顧客時間をどう伸ばすか?」というところに対しても、ビッグデータの活用が考えられています。

現場で蓄積されたデータを装置の制御や改善に活用/オムロン

医療機器メーカーのオムロンでは、製造現場において蓄積されてきたビッグデータを活用し、製造業の現場の革新に着手。製造の現場には数多くのセンサーが設置されていることから、「データの宝庫」として認知されています。

オムロンは、そんなデータの宝庫にて収集したビッグデータを活用すべく、制御用コントローラーを開発。自社だけでなく日本の製造業全体を改善するために、開発した制御用コントローラーを発売しました。

社内では、滋賀県にある草津工場において、「IoTの取り組み実証実験」を実施。データの量を増やしながら分析を行うことで生産性の30%アップを実現し、“製造業のための製造業”としてのポジションを築き上げています。

ビッグデータの活用から生まれたウェルネストイレ/TOTO

水回りの設備機器メーカーであるTOTOでは、トイレ×ビッグデータ×AIの組み合わせによって誕生した「ウェルネストイレ」が注目を集めています。ウェルネストイレは、人が日常的に利用するトイレを活用して健康状態の管理を行うもの。トイレの内部にあるセンサーに利用者の血流データや排せつ物の臭気データが蓄積され、スマホなどを介してその利用者に合った健康プログラムなどの健康に関するレコメンドが提供されます。

この機能を利用するにあたり、利用者自身が特別な装置などを装着する必要はなく、ただ普段通りトイレを利用するだけ。すでにアトランタ空港や成田空港などで利用が開始されており、今後の展開に注目が集まっています。

ビッグデータの活用で熟練技術の自動化に成功/ダイキン

世界的な空調機器メーカーとして知られるダイキン工業では、製造業全体を脅かしている熟練技術者不足の解消のため、熟練技術のデータ化に着手。IoTの活用によって熟練技術のデータ化を実現し、“スマートものづくり”の一歩を踏み出しました。

ダイキンが製造している空調機器が出来上がるまでの工程において、「ろう付け」・「旋盤」・「板金加工」・「アーク溶接」の四つの工程に職人の熟練技術が求められます。ダイキンでは、このうちの「ろう付け」の工程をデータ化し自動化。品質の安定と生産性の向上につながったことから、新たな価値の創出も期待されています。

世界130ヶ所の工場の自動化に成功/デンソー

数多くの自動車部品を製造しているデンソーでは、IoT技術でつなぐためのオープンソース「Factory-IoTプラットフォーム」を開発。そこで得られたビッグデータを活用することで、世界にある130ヶ所もの工場の自動化に成功しました。

世界130ヶ所の工場から、デバイス接続インターフェース経由で管理センターへ生産時の工場データを収集。収集したデータは、分析や設備稼働管理、品質管理などに利用されます。国内だけでなく海外の工場のデータもリアルタイムで活用することができるため、世界基準での生産体制の強化が見込めます。

アクセル踏み間違いによる事故の抑制にビッグデータを活用/トヨタ自動車

自動車メーカーのトヨタ自動車では、コネクティッドカーを用いて収集したビッグデータを活用して、「急アクセル時加速抑制機能」というアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故を抑制するための機能を開発。これまであった「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」の機能では、障害物がある場合に対してのアクセルの踏み間違いを抑制することはできましたが、障害物のない道でのアクセル踏み間違いには対応できませんでした。

新たに開発された急アクセル時加速抑制機能は、障害物がない道でもアクセルの踏み間違いに対応可能。アクセルペダルが全開で踏み込まれたときの“踏み方”の特徴を、コネクティッドカーにて収集したビッグデータと照らし合わせ、以上なアクセル操作の特定につなげています。
 
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まとめ

今回は、日本の製造業の企業を中心に、ビッグデータの活用事例をご紹介しました。ビッグデータが活用されたことによる功績は、私たちの生活の身近なところで新たな技術となって生まれ変わっています。

ビッグデータの活用から新たな視点を見つけた製造業の企業の事例を参考に、ぜひデータサイエンスの方向性を見出してみてください。

この記事の監修者:冨塚辰

この記事の監修者:冨塚辰

Fabeee株式会社のデータサイエンティスト。 広告代理店でオン・オフ問わずプロモーション領域を中心にプロデューサー、制作ディレクターとして国内・外資、幅広い業界のクライアントを担当。
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