投稿日 2022.01.31

最終更新日 2022.01.31

中小企業がDXに取り組むメリットは?成功の秘訣や取り組みの方法などについて解説

中小企業がDXに取り組むメリットは?成功の秘訣や取り組みの方法などについて解説

日本経済の未来をつなぐためにも、各業界DXへの取り組みが急がれています。DX推進の波は、大企業のみならず中小企業にも押し寄せ、一企業として大きな変革のときを迎えているというところも少なくないことでしょう。

しかし中小企業にとっては、人材の確保もコストの確保も難しいことから、DX自体の難易度が相当高いと感じているケースも。今回は、日本経済を支える存在である中小企業のDXにスポットを当てて、そのメリットや成功の秘訣について解説していきます。

 
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中小企業におけるDXの現状

中小企業におけるDXの現状

DXに取り組み始めている企業は年々増加している一方、中小企業においてはDXへの取り組み率がなかなか上昇せず、日本経済が抱える一つの課題となっています。中小企業におけるDXの現状はどうなっているのでしょうか。

データをもとに、中小企業のDXの現状に目を向けてみましょう。

圧倒的に低い中小企業のDX取り組み状況

2021年の7月~8月にかけ、一般社団法人日本能率協会によって企業のDXへの取り組み状況についての調査が行われました。
中小企業のDX取り組み状況
引用:一般社団法人日本能率協会  『日本企業の経営課題 2021』 調査結果速報 【第3弾】

DXへの取り組み状況について、2020年と2021年の比較がグラフ化され、DXへの取り組みをすでにスタートさせていると回答した企業の数は大幅にアップ。45%以上の企業がDXに取り組み始めており、日本でもDXの波が加速していることがよくわかる結果となりました。

しかし、同時に実施された従業員規模別の調査結果を見ると、企業の規模によってDXの取り組み状況に大きさ差があることがわかったのです。

引用:一般社団法人日本能率協会  『日本企業の経営課題 2021』 調査結果速報 【第3弾】

従業員数が3,000人を超える大企業では、DXへの取り組みをスタートさせているという回答が65%を超えたのに対し、従業員数300人未満の中小企業では28%を下回るという結果に。日本国内の企業という大きなカテゴリで見ると、日本のDXも浸透し始めた印象を受けますが、企業の規模別に見ると中小企業においてはまだまだDXへの取り組みが行われていないのが現状なのです。

中小企業の割合が圧倒的に高い日本において、この結果はまだまだDXが進んでいないということの表れ。中小企業のDXへの取り組み状況をいかに上げていくかが、日本経済の未来を左右すると言っても過言ではないのかもしれません。

中小企業がDXに取り組むメリットとは

中小企業がDXに取り組むメリットとは

DXへの取り組み状況がまだまだ芳しくない中小企業。この現状を変えるためには、今一度中小企業がDXに取り組むメリットに目を向けてみることが大切です。

では、中小企業にとってのDXに取り組むメリットについて、一つずつ確認していきましょう。

生産性が向上する

DXを実施することのメリットの一つに、生産性の向上があります。これは、企業の規模に限らずDXに取り組むことで得られる恩恵のひとつ。中小企業が抱える長年の問題として生産性の向上が挙げられていることから、中小企業にとってDXに取り組むことで得られるメリットは大きいと言えます。

少子高齢化による人口の減少は、少ない従業員で業務をこなさなければいけない中小企業にとって大きなダメージとなることは間違いありません。人口減少に伴う労働力不足を回避するためには、ITツールをうまく活用しながら業務効率を上げていくことが有効です。

DXは、ツールの導入だけでなく根本的な業務プロセスの見直しにもつながることから、質の高さを重視した生産性の向上につなげることができます。

働き方の幅が広がる

ペーパーレスやデジタル化など、DXに取り組む上で今までの業務プロセスに大きな変革が起こります。例えば、今まで紙で保管されていた情報などは全てデータ化されクラウド上に保存するようになったり、取引先とのコミュニケーションもオンラインに切り替わったりと、働き方に変化が表れるようになるのです。

業務に必要な情報がクラウド上に保管できるようになったり、オンラインで取引先とやりとりできるようになったりすると、オフィスへの出社にこだわる必要がなくなります。テレワークなど、社員にとっても働き方の選択肢が広がることから、働き方改革の実現にもつなげることができるようになります。

企業競争力の維持

ディスラプターと呼ばれる存在など、近ごろは消費者の行動の変化に素早く対応できる企業の存在が既存企業の脅威となっており、企業競争力をいかに維持するかが重要になっています。日々新しいIT技術が生まれる今、消費者のニーズも多様化。これまでの事業のやり方では、高度な消費者のニーズに応えることが難しくなり、ディスラプターなどトレンドの変化へ柔軟に対応できる企業には太刀打ちできなくなってしまうのです。

これまでの状態のままでは企業競争力が低下する一方である中小企業にとって、DXの推進は企業の競争力を高めるためのチャンス。DXに取り組むことでIT技術を活用しながら消費者のニーズへ柔軟に対応できるようになることから、中小企業にとってもメリットが大きいと言えるのです。

中小企業が抱えているDXに対する課題

中小企業が抱えているDXに対する課題
大企業に比べ、DXに取り組めていないところが多い中小企業。では、中小企業にとってどのようなことがDXに対する課題として挙がっているのでしょうか。

そもそもDXの取り組みに回せる人材がいない

DXに取り組む場合、ITの知識やスキルを持った人材の確保が必要になります。また、ただITのスキルあるだけでなく、今その企業が抱えている課題に対してITツールを活用した解決策を見いだせる人材が確保できなければ、DXを推進することはできませません。

しかし、もともと人材不足の中日々の業務をこなしてきた中小企業にとって、DXのための人材を確保するのは至難の業。DXの必要性、重要性が理解できていても、DXを推し進められるだけのスキルを持った人材が確保できないことから、中小企業のDXへの取り組み状況は改善されないままでいるのです。

DXに必要な予算の確保ができない

DXを行うとなれば、新しいITツールの導入や人材育成など、ある程度のコストが発生するのは当然のこと。その上、いざDXに取り組み始めてみると、追加で必要なものがたくさん出てきて当初の予算を大幅に超えてしまうというケースも珍しくありません。

中小企業にとって、すぐに結果の出ないことに対しての出費はできるだけ避けたいもの。そもそもDXに対しての予算が組めるほど余力が残っていない企業も多く、なかなかDXのための費用が捻出できないケースも多いのです。

DXに対しての予算が組めないということは、その必要性を理解していても永遠に着手できないということ。大企業と違い、少ない予算の中でやりくりしている中小企業にとっての大きな課題となっています。

レガシーシステムへの依存

コストをかけて新しいシステムの導入を行う大企業に対し、中小企業ではいわゆるレガシーシステムと呼ばれる古いシステムに依存した業務を行っているケースが少なくありません。しかし、レガシーシステムへの依存は2025年の崖を引き起こす要因にもなっているため、早急に各部署で連携の取れるシステムへと切り替えるべきなのです。

レガシーシステムを使い続けると、時代に合った柔軟な対応ができず、DXへの取り組みを阻害してしまうケースも。いざDXに取り組もうと思っても、結局社内のシステムがあだとなって断念しなければいけないという残念な結果を招きかねません。

上記のような理由から、レガシーシステムからは早急に脱却すべきであることがおわかりいただけるかと思いますが、中小企業ではまだレガシーシステムから脱却できないところが多いのが現実なのです。

中小企業がDXを成功させるために知っておきたいポイント

中小企業がDXを成功させるためには、いくつかおさえておくべきポイントがあります。いくつかピックアップして、ご紹介しましょう。

経営者をはじめ社内の意識を改革する

DXに取り組むためには、全社を挙げて同じ目標に向かっていくことが大切です。これまでとは全く異なる考え方が求められるケースも増えるため、経営者はもちろん従業員の意識改革も行なっておかなければいけません。

社内でDXに対する意識がズレてしまうと、社内での足並みがそろわずDXの実現じたいが難しくなってしまいます。まずはしっかりと経営者自身にDXの必要性の落とし込みや意識の改革を行い、従業員一丸となってDXの実現に動いていきましょう。

DXの目的を明確にして共有する

DXは明確な目的があってこそ行動に移していけるもの。会社として、なぜDXを行うのかが明確になっていなければ、DXの実現は夢のまた夢です。

DX実現の先に設定するゴールは、より具体的なものにしておくのがベスト。明確な目的(ゴール)が設定されていなければ、ゴールまでの道筋となる戦略を立てることもできません。

また、明確になった目的は、経営者や管理者層のみだけでなく従業員全員に落としこんでおくことが大切。会社に所属する人間全員でDXに取り組むためにも、明確な目的を設定したあとはしっかりと共有しておきましょう。

アウトソーシングの力を借りる方法もある

中小企業のDXが進まない理由の一つとして、人材不足という課題を挙げました。とは言え、人材を採用するのにもコストがかかるため、DX実現のための人材を簡単に増やすということはできません。

とは言え、人材不足の理由だけでDXを断念してしまうのはもったいない。そこでひとつの選択肢として頭に入れておいてもらいたいのが、「アウトソーシング」というやり方です。

DXに取り組むためには、プログラミングやデザイン、ITのインフラ設備などに関する知識とスキル持ち合わせた人材の確保が必要となります。しかし社内にこのような知識・スキルを持つ人材がいない場合は、アウトソーシングで外部から人材を借りる方法もあるのです。

アウトソーシングを利用すれば、その道のプロである人材の確保が可能。第三者としてDXに携わってもらえるため、社内にあるしがらみの影響を受けずにDXに取り組めるという利点もあります。

中小企業が実践すべきDXへの取り組み方法

中小企業が実践すべきDXへの取り組み方法

DXに取り組むと言っても、何から始めればいいかわからないという悩みを抱えるケースも少なくないことでしょう。中小企業は大企業に比べて、従業員全員が社内の全体を把握しやすいというメリットがあります。

DXに取り組む際は、小さいところから少しずつ始めていくことが大切。例えば、書類やハンコなど紙・対面にこだわっている業務があれば、その一部をペーパーレス・電子化するところから始めてみるなど、まずは小さい規模での変革を起こしていきましょう。専用のソフトやクラウドサービスを利用することで、業務の効率化も図れたというケースは珍しくありません。

また、既存のシステムから脱却するために、今あるシステムを可視化するのもDX推進に有効な手段。小さなところからDXへの取り組みを始めたら、その都度振り返ってその取り組みに対しての評価と見直しを行うことも、確実に企業のDXを進めていく上で大切なポイントとなります

DXに取り組む中小企業が受け取れる補助金

DXに取り組む中小企業が受け取れる補助金

DXのための予算を捻出できず、なかなか行動に移せないというケースも多い中小企業。そんな中小企業のDXに対して、補助金が出されているのはご存知でしょうか?

もちろん申請や審査は必要となりますが、返済の必要がないためできるだけコストをかけたくない中小企業にとって心強い味方となってくれます。補助金の対象となるのは、ITの導入にかかる費用や生産プロセスを改善するための設備投資に対する費用など、さまざま。

資金面でDXへの取り組みに不安を感じている場合は、ぜひ補助金の申請も視野に入れて行動してみてください。

中小企業のDX事例

ここで、中小企業のDXをよりリアルにイメージいただくために、実際の事例をご紹介します。

「働く=幸せ」の実現のためにDXに着手/株式会社ヒサノ

熊本県にある株式会社ヒサノは、荷物の輸送や工事物流を手掛ける中小企業。「働くことを幸せにつなげる!」をテーマに掲げ、企業を挙げてDXに取り組んでいます。

同社では、
1.デジタル技術を活用した最適な物流の実現
2.データにもとづいた業務プロセスの改善
3.新しい物流サービスの提案
という三つの目標実現のためにDXを実施。

人や車、倉庫などの“モノ”だけでなく、データもしっかりと活用しながら、より良い物流の実現に向けて動いています。三年先の目標値も具体的に設定されており、しっかりと評価と見直しが行われていることも明白。

ただITツールを駆使するだけでなく、人を大切にしながらDXを推進することで着実に成果を上げています。

まとめ

中小企業にとっては、なかなか難易度が高いイメージのあるDX。しかし、日々の業務を見直すことから、DXへの取り組みは始められるのです。

補助金を利用すれば、コスト面での心配が軽減される可能性も。日本を支える中小企業のDX実現なくして、日本経済の未来はありません。未来につながる企業へと成長するためにも、DXへの最初の一歩を踏み出してみてください。

この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。