DXと密接な関係にあるアジャイル型組織|その存在が求められている背景と実際の事例を紹介

2022.01.26

2022.02.02

DXのあるべき姿を考える

企業の今を未来へとつなげていくためにも、欠かせないプロセスとなっているDX。DXに取り組みはじめる企業が少しずつ増える中、同時にさまざまな壁を目の当たりにしている企業も増えています。

今回は、DXに取り組む上で出てくる組織に関する壁を乗り越えるために知っておきたい「アジャイル型組織」について解説。DXを加速させるためにも必要だと言われているアジャイル組織について、その必要性やメリットなどを知っておきましょう。
 
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アジャイル型組織とは?

まずは、アジャイル型組織とは何なのか?というところから、確認していきましょう。

アジャイル型組織という言葉の前半にあるアジャイル(Agile)とは、「素早い」や「機敏な」という意味を持つ言葉。ソフトウエア開発の手法の一つにある“アジャイル開発”から派生して生まれた言葉であることから、システム開発などに携わっている人にとっては身近な言葉でしょう。

アジャイルという言葉の意味のとおり、アジャイル型組織はスピード感のある組織に対して使われています。俊敏性、柔軟性に優れた組織構造となっており、計画を重視しながら時間をかけて物事を進めていくのではなく、素早い意思決定のもと実行に移しながら課題を解決へと導いていくことがアジャイル型組織の特徴です。

またアジャイル型組織は、人員に対する権限の与えられ方も特殊。あらゆる権限を持つ人材の下に指示通り動く人材が配置されるピラミッド型組織とは違い、トップダウンの形式を取らず、現場にいる人材に一定の権限を与えます。

DXに取り組む場合は次々と変革を起こしていかなければならないため、目の前に出てくる課題を克服するためには、スピード感に優れた組織であることが何よりも有利。個人ではなく、チームとして責任を取っていくアジャイル型組織は、DXに取り組む企業にとって必要な組織であると言えるのです。

アジャイル型組織が求められている理由

DXに取り組む企業が増えた今、アジャイル型組織に対しての注目度も上がっています。なぜアジャイル型組織の必要性が高まったのか、その背景に目を向けてみましょう。

ピラミッド型組織を脅かすディスラプターの存在

インターネットやスマートフォンの普及によって、人々の暮らしは大きく変化しました。これらのデジタル技術の活用は、組織の在り方にも大きな影響を与えています。

デジタルデバイスの高度化が進み、インターネットとスマートフォンがあればビジネスが行える時代に突入しました。今までの“当たり前”の枠にとらわれずに仕事ができるようになったことで今までになかったビジネスが誕生し、既存事業の存在が脅かされています。

このように、デジタルの技術を活用して行う組織はディスラプターと呼ばれており、ネットを駆使して市場に対し敏感に反応できることから、ピラミッド型組織をベースとした企業にとって脅威的な存在に。ディスラプターはハードウエアの更新を必要とせず、ソフトウエアの改善だけで新しいビジネスにトライし続けられるため、既存企業は太刀打ちできない状態となっていました。

既存企業がディスラプターと呼ばれる存在に太刀打ちするためには、今までの組織の在り方自体を見直さなければいけません。このような背景から、ピラミッド型組織とは異なる動きができるアジャイル型組織の必要性が高まったのです。

競合性優位を獲得するために求められる生産性の向上

企業がDXに取り組んで競合性の優位を獲得するためには、何よりも生産性の向上が欠かせません。諸外国では日本よりも早くアジャイル型組織が普及しており、その生産性の高さに注目が集まっていました。

DXはさまざまな変革を起こすために新しいものを次々と導入するケースが珍しくなく、目的達成までの工数がどうしても多くなってしまいます。働き方改革などによって生産性の向上が叫ばれていますが、DXに取り組むためにはより一層の生産性の向上が求められるのです。

組織のメンバーそれぞれに役割が与えられるアジャイル型組織は、従業員のモチベーションとパフォーマンスの向上に直結する組織運営であると言われています。従業員のモチベーション、パフォーマンスの向上は、スピーディーに業務を回すためにも重要なこと。DXを実現するためにも、生産性の向上が期待できるアジャイル型組織の採用に期待が高まっています。

DXにアジャイル型組織を採用するメリット

DXの推進と切っても切れない関係にある、アジャイル型組織。では、DXに取り組む上でアジャイル型組織を採用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

変化に対して柔軟に対応できる

アジャイル型組織は、実行に移すまでのスピードが非常に早いことから、変化に対しても柔軟に対応することができます。DXにおいて、変化に対応できる力は欠かせない能力の一つ。

事業の変革に伴う変化へ柔軟に対応するためにも、DXにおけるアジャイル型組織の採用は大きなメリットと成りうるのです。

改善と評価の回転が速い

アジャイル型組織は、試行錯誤を高速で繰り返すことができることから、改善から評価、そしてまた改善へとスピーディーにつなげていくことが可能です。細かく改善を繰り返すため、次の改善までにやらなければいけないことの工数を最小限に抑えることができます。

結果、顧客のニーズに対しても短期間で答えることができ、新たなビジネスチャンスにもつながる可能性が高まります。

従業員の自立性や主体性が養える

アジャイル型組織は、従業員一人ひとりに役割を与えるため、それぞれに存在意義が生まれます。上からの指示にただ従うだけではなく、自ら考えて行動する力が養われることから、個々のエンゲージメントが向上。

結果的に生産性の向上にもつながることから、アジャイル型組織とDXの相性が良いとされているのです。

アジャイル型組織を学ぶ上で知っておくべきSpotify社の例

アジャイル型組織は、先ほど「アジャイル型組織が必要となった背景」のところでも登場した“ディスラプター”によって広まった組織の在り方。今は世界中で見られるアジャイル型組織ですが、その先進事例として知られているのが音楽のサブスクリプションサービスで知られる「Spotify社」です。

Spotifyは、「Squad」・「Tribe」・「Chapter」・「Guild」の4つのグループで構成されています。それぞれのグループの特徴は、以下の通り。
 
「Squad」…プロダクトの責任者が中心となって構成されているSquadは、グループの最小単位でありメンバーの勤務場所は一ヵ所。プロダクトオーナーという存在はあるが、リーダーやマネージャーと言った存在は用意されていない。
 
「Tribe」…複数のSquad(部族)をまとめるために存在しているグループ。近しい事業・分野のSquadを一つのTribeとしてまとめ、人数は最大100名までが目安となっている。Squad とは違い、Tribeには長となるTribe Leadが存在する。
 
「Chapter」…さまざまなSquadに存在している、同じ職務の人たちをまとめるためのグループ。Chapter Leadという長が存在しており、Chapter内のメンバーの人事評価もChapter Leadが行っている。
 
「Guild」…同じ分野に興味や関心を持つ人が集まる、社内のコミュニティ。完全に横断的な集団。
 
この4つのグループがSpotify社の組織を構成しており、それぞれ自グループの役割を果たしながら残りの3つのグループと連携を取り、顧客ニーズや社会ニーズに応えるためのサービスを開発・提供しています。

アジャイル型組織における課題

今の時代に対応できる企業になるためには、アジャイル型組織を取り入れてDXを推進していくことが求められます。しかし一方で、アジャイル型組織には課題があるのも事実。きちんと課題にも目を向けておきましょう。

アジャイル化自体がそもそも難しい

DXを推進するために、組織の在り方をアジャイル型に変えようとするケースは珍しくありません。しかし、今までやってきた組織とは全く異なる形式の組織に変えなければいけないため、そもそも組織のアジャイル化自体が非常に難易度の高いことなのです。

減点思考、管理思考の中で長年養われてきた人々の意識を改革すること。従業員のマインドの変革から始めなければいけないアジャイル型組織の形成は、大きな壁を何度も乗り越えるためのタフさが求められます。

グループ内のスキルギャップが埋めにくい

アジャイル型組織は、自立型の組織であることが大きな特徴です。組織を機能させるためには、個々の自発的な行動がカギとなります。

ここで忘れてはいけないのが、個々のスキルの差。アジャイル型組織はピラミッド型組織のように単体の機能での人材が集まっているわけではないため、教育をしたり経験させたりという点においては難しい組織の在り方であると言えます。

スキルセットの合うメンバーがいない、個々の習熟度の違いなどの問題は、アジャイル型組織に起こりがちであるということを頭に入れておきましょう。

起動修正が繰り返されるため明確な終わりが見えない

これまでの組織においては、計画を立て開発を行い、リリースを行うことで一つのプロジェクトを終えたという考え方でした。一方アジャイル型組織の場合は、新しいサービスやプロダクトを常に生み続けられることが特徴であるため、ここで終わり!というようなプロジェクトに対する明確な終わりを設定することができません。

これまでとは違い、スケジュールの立てにくさを実感するケースも。常に新しいことにトライし続け、新しいものを生み続けるんだというマインドセットが求められます。

アジャイル型組織を作るためにやるべきこと

アジャイル型組織は、その機能も考え方もこれまでの組織の在り方とは大きく異なります。そのため、組織の作り方についてもこれまでのものとは全く違うことであることを頭に入れておかなければなりません。

アジャイル型組織を作る上でまず取り組んでおきたいのが、従業員たちの考え方に変革を起こすこと。これまでピラミッド型で運営してきた組織を、いきなりアジャイル型に変えるのは無謀です。ピラミッド型組織に比べて個々の自由度が高いアジャイル型組織では、従業員自身がアジャイル型組織であることの意味をしっかりと理解できていないと、空中分解を起こしてしまいかねません。

このような失敗を生み出さないためには、まず実際にアジャイル型組織が成功を収める課程をしっかりと見てもらうことが大切。そこでおすすめなのが、限定的なチームであるパイロットチームを作り、そのチームでのトライアルの実施です。

社長直結の部隊として作成したパイロットチームには、主に顧客サービスの担当を任せ、成功体験を積み重ねていきます。確実に成功体験を増やすために、小さなグループで担当できるような内容にとどめておくことが大切です。

このパイロットチームの成功体験をもとに、従業員たちの考え方に変革を起こしていきます。その後人材のマネジメントを行い、少しずつアジャイル型組織を増やしていくと、無理なくマインドセットの浸透とともに組織にも改革を起こすことができるでしょう。

アジャイル型組織の成功事例

アジャイル型組織の代表的な例として、先ほどSpotify社のケースをご紹介しました。日本国内でもアジャイル型組織を採用して成功を収めた事例が増えてきています。

生命保険会社のアクサ生命も、アジャイル型組織にて成功を収めた企業のひとつ。日本国内ではいち早くアジャイル型組織の運営に着手した企業として、注目を集めました。

アクサ生命では、ITに関連する複数の部門内をまず承認数のSquadにわけ、それぞれのSquadをビジネス部門の組織と組み合わせてTribeを作成。IT部門の人間とビジネス部門の人間がタッグを組んで仕事に取り組めるようになったことは、企業にとても大きなメリットとなりました。

また、システムの内製化を進めるためにITエンジニアも積極的に採用。組織の改革によって従業員たちの意欲向上の効果も表れ、迅速性の担保につながっています。

まとめ

企業が改革を拒めば淘汰される今の時代。アジャイル型組織に対しての理解も、しっかりと深めておかなければいけません。

DXを推進する上で、有利に働くであろうアジャイル型組織。人材の配置や従業員の考え方など、改革のために着手しなければいけないポイントはたくさんありますが、これからも時代も生き残っていける企業になるためには、アジャイル型組織の考え方にも柔軟に対応できるようになっておくといいかもしれません。

この記事の監修者:武田恭治

この記事の監修者:武田恭治

デジタルソリューション事業部 部長。
最新テクノロジーを活用した新規事業開発をすべくFabeeeに参画。
同社デジタルソリューション事業部 責任者として企業及び地方自治体のDX推進に従事。 プロフィール情報