広告効果を考える時にぜひ考慮したい「ベース売上」の存在

2022.05.11

2022.05.26

マーケティング

広告効果を考える時にぜひ考慮したい「ベース売上」の存在

広告経由で発生した売上は全て広告のもの?

広告は、売り込みたい商品・サービスの情報を届けるためのアプローチです。その広告がどれだけの効果を発揮したのかを知りたいのであれば、マーケティング効果を測定するべく分析をしなければいけません。そこで用いられるのが、アトリビューション分析です。アトリビューション分析は、購入する直前に接触した広告だけでなく、以前に接触した広告や展示会の履歴も考慮した評価を行います。より正確にマーケティング効果の測定ができる分析方法であり、分析結果を活用して広告の貢献度を調べれば将来的に無駄な広告費を費やさずに済むでしょう。

従来型のアトリビューション分析は優れている部分がある一方で、問題点もあります。広告経由で発生した売上を、広告を出した効果として計上することです。確かに広告を見てから商品・サービスの購入をするのであれば、広告と売上には因果関係があるのでしょう。しかしながら、それは顧客の消費行動が、広告の存在なくしては成立しないという話ではありません。広告を見ていなかったとしても、顧客が必要だと考えているならば消費行動をするでしょう。広告なしでも消費行動をする顧客がいるのであれば、売上の全てを広告の効果とするのは誤りです。

ベース売上とは?

ベース売上とは?
従来のアトリビューション分析では、正しい広告効果を把握する事はできません。正しい広告効果を把握したいのであれば、売上を広告の影響を受けない「ベース売上」と広告の影響を受ける「インクリメント売上」に切り分けなければならないでしょう。「ベース売上」を簡単に言うと、過去に積み重ねてきたブランド構築の成果です。知名度の高いメーカーや商品は、広告を見せなくても店頭で他社の製品が並んでいたときに購入を検討してもらえる存在になります。また、商品を購入した顧客に高い満足度を与えることができれば、買い足しや買い替えをするときに同じ商品を購入してくれるでしょう。このように新たに広告を打たずとも発生する売上こそが、「ベース売上」です。

ベース売上はどう考えるか?

ベース売上はどう考えるか?

計算式からわかること

広告を出した際の売上は、その内容から「ベース売上+外的要因+広告貢献分」という計算式で表せます。この計算式を利用すれば、広告貢献分が売上からベース売上と外的要因を差し引いたものであることがわかります。ここで言う外的要因というのは、天候や大型連休など消費行動に影響を及ぼす外部の出来事です。外的要因は自然や社会からもたらされるものですから、コントロールすることは困難です。

続いて「ベース売上」を見ていくと、「ベース売上=季節変動+何もしなくとも発生する売上」という計算式で表せます。季節変動とは、例えば季節に合わせて売上が増減する家電やファッションを例に挙げればわかりやすいでしょう。寒くなれば自然と暖房器具や厚手のコートの売上が伸びます。これは広告を出さなかったとしても発生する売上です。その季節変動をベース売上から差し引けば、会社や商品のブランド力によって生まれた売上が明らかになります。

「ベース売上」における「何もしなくとも発生する売上」は、これまでの企業努力に対して顧客がどのように評価をしたのかで増減します。もし、ベース売上が伸びているのであれば、会社や商品のブランド力が強化されているということですから、事業が成長していることがわかるでしょう。以上のことを踏まえて「ベース売上」が、過去のマーケティング戦略の成否を判断する一つの基準と言えます。

ベース売上をどのようにして推定するのか

正しい広告効果を導き出したいのであれば、広告とは関係なく発生する「ベース売上」を把握する必要があるでしょう。しかし、売上の中で「ベース売上」にあたる部分と「インクリメント売上」にあたる部分が明確に区別されているわけではありません。そこで、「ベース売上」を推定するべく使われるのがMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)です。MMMは売上などの目標について、影響を与える要因の時系列データを統計学的に分析し、どの程度の寄与があったのかを推定することができます。

MMMでは、目的に合わせて分析ロジックを決定します。続いて過去に行ったマーケティング施策をまとめて、内部要因と外部要因を洗い出します。内部要因というのは、商品・サービスを提供する会社や店舗が関わる部分です。過去に行ったマーケティング施策や流行にあわせた商品の発売などは内部要因です。それに対して、外部要因とはコントロールできない外部の出来事であり、感染症・金融恐慌・戦争などが該当します。

洗い出しをした施策は、顧客の購買行動である「認知」「興味・関心」「比較・検討」「行動」という段階の中で一致するものに振り分けていきます。施策の洗い出しと振り分けができたら、いよいよ分析です。時系列で収集した施策と成果データを、選んだ分析ロジックで分析します。この一連の作業により、広告が売上にどれだけ寄与したのかが明らかになるでしょう。また外的要因の洗い出しも行っているので、売上から広告と外的要因による増分がどの程度占めるのかがわかります。そこから、ベース売上を推定することが可能です。

 
■mmmについて知りたい方はこちら

MMMの注意点

MMMは、売上における「ベース売上」と「インクリメント売上」の切り分けに役立つことが確かなのですが、必ずしも分析が正しいとは限りません。その理由は、分析で必要となるデータが欠落していたり、データの扱いを間違えれば真の数値とはかけ離れてしまうためです。必要に応じてデータの再収集や再分析をしなければ、今後のマーケティング戦略を誤ることもありえます。また、専門的な知識を必要とするMMMは、専門外の社員が基礎からやり方を学ぶとなれば、かなりの時間を費やすことになるでしょう。費用がかかっても、分析ができるスタッフを雇ったり、外部のコンサルティング会社に依頼する方が簡単かつ正確です。

ベース売上に注目するメリット

ベース売上に注目するメリット
広告効果を考えるとき、普通ならば売上における広告が寄与した増分が主役です。しかしながら、あえて広告が寄与しない「ベース売上」に注目する理由は、広告効果を過大評価しないためです。例えば、もともとそれなりのブランド力を持ち、ある程度の「ベース売上」がある企業があったとします、売上の全てを広告がもたらしたと解釈すれば、広告の費用対効果が高いと誤解してしまうでしょう。その誤った認識のもとで、次はさらに売上を増やすべくテレビ・新聞・雑誌・WEBで広告を出せば膨大な広告費を支払うことになります。しかし、真の広告費用対効果はそれほど高くはないので、期待するほど売上は増えません。誤った広告の費用対効果を基にしたマーケティングは失敗です。

「ベース売上」を知ることは、事業の成長性を確認する手段でもあります。広告の効果で売上が増えているのに、事業が成長していると誤った認識をすると無謀な事業計画を立てることになります。それは事業の存続を危うくする危険なことです。大きなことに挑戦するのは「ベース売上」の推移を見て、確実に成長しているとわかったときだけにしておきましょう。もし成長していないことが明らかならば、実情にあわせて堅実な事業計画を立てれば安全です。

【まとめ】MMMでベース売上を正しく知ろう

正しい広告効果は、今後のマーケティング施策を決定する上で重要な情報です。しかし、ただ広告が寄与した増分だけに注目していると、「ベース売上」という大事な部分を見落としてしまいます。MMMのような分析手法を用いて、正しく「ベース売上」を把握することを心がけましょう。必要ならば、外部の専門業者の力を借りてでもMMMの採用をおすすめします。

この記事の監修者:冨塚辰

この記事の監修者:冨塚辰

Fabeee株式会社のデータサイエンティスト。 広告代理店でオン・オフ問わずプロモーション領域を中心にプロデューサー、制作ディレクターとして国内・外資、幅広い業界のクライアントを担当。
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