投稿日 2021.12.20

最終更新日 2021.12.20

不動産業界においても急がれているDX!業界内の現状と課題に立ち向かう術とは?

従来の商習慣から脱却するためにも、取り組みが急がれているDX。コロナ禍を経て、DXの必要性はさらに高まっています。
各業界、DXの成功事例も増えてきていますが、不動産業界はまだまだその推進率が低いのが現状です。そこで今回は、不動産業界のDXについて考えていきたいと思います。
業界自体の現状や課題に目を向けながら、不動産業界になぜDXが必要なのかというところについて考えていきましょう。
 

■不動産事業者様必見!DXの課題を分かりやすくまとめました。

まだまだ進んでいない不動産業界のDX

DXは、デジタル技術を活用しながらビジネスを豊かに変革していくという取り組みのこと。各業界においてその必要性が叫ばれており、日本のビジネスにも変化が起こり始めています。
不動産業界も、DXに取り組みながら変革を起こすべき業界の一つ。まずは、日本の不動産業界においてDXがどれくらい進んでいるのかに目を向けてみましょう。

アナログ文化が根強く残る不動産業界

デジタル後進国と言われる日本。各業界、徐々にデジタルに対する意識が変わりつつあるとは言え、世界に比べるとまだまだ遅れているのが現状です。

そんな中でも、不動産業界はアナログ文化が根強く残っている業界の一つ。対面での営業やFAXで紙を使っての資料のやりとりなど、不動産業界ではアナログな業務がまだまだ主流となっているところが少なくありません。特に、地域密着型の小さい不動産会社などでは、アナログ文化が特に根強い傾向にあります。

DXに取り組むためには、社員たちの意識をアナログ→デジタルへと変えていくことが大切ですが、不動産業界にはアナログ作業がまだまだ多く残されていることもあり、アナログから脱却できないまま。全ての業務を一気にデジタル化するとなると難易度が高くなりますが、それでも今のままのアナログ主流のシステムを続けていると、将来的に業務の遂行自体ができなくなってしまう可能性も否めません。

アナログな業務が主流となっている影響から、不動産業界はDXに関してもなかなか進んでいないのが事実。業界全体で見ると、約60%が何かしらDXに対してのアクションを起こしていますが、100人以下の規模の不動産会社に目を向けると、DXへの取り組みが50%にも満たないという現実が潜んでいます。

今ある課題を解決して未来を作っていくためにもDXへの取り組みが急務ですが、不動産業界ならではなアナログ業務がネックとなり、まだまだ推進率が低いのが現状です。

不動産業界の現状と克服すべき課題

DXの推進に関しても、課題が多い不動産業界。では、DXを推進する上で明確にしておくべき「業界の課題」はどのようなものが挙げられるのでしょうか。

不動産業界の現状と合わせて、課題に目を向けてみましょう。

人口減少による業界規模の縮小

不動産業界のみならず、日本企業全体にとっての大きな課題となっている人口減少。これから迎える超高齢化社会に向けて、各業界DXへの取り組みが急がれています。

不動産業界にとって人口減少は、業界の需要に影響を与える大きな課題の一つ。住宅を購入するのは主に若年層であるため、超高齢化社会の到来によって市場の需要減少は避けられません。

また、新築の需要だけでなく住み替えに対する需要も減少傾向に。不動産全般への需要が減少するため、業界の規模の縮小が懸念されています。

人手不足による長時間労働

不動産業界にとって人口の減少は、業界自体の需要減少のみならず働き手にとっての大きなストレスにもなっています。不動産業界は、比較的残業時間が多いことで知られる業界。人口減少だけでなく、業界全体に根強く残っている“アナログ主義”も、長時間労働を招く要因の一つとなっています。

物件情報の管理や接客対応、顧客管理、重要事項説明、契約手続き、間取り図・チラシ作成など、不動産業界にはさまざまな業務がありますが、アナログ文化が根強く残っていることから、まだまだ効率化が図れていないのが現実。パーソル総合研究所の残業実態調査によると、月30時間以上残業を行っている社員の割合が31.8%にも及んでおり、14業種のうちで4番目に高い残業水準になるという結果が出ました。

残業水準が高いだけでなく、サービス残業の割合が高いのも不動産業界の課題の一つ。離職率が高くなってしまうのも、自然の流れだと言えるのかもしれません。

既存システムへの依存

日本では今、目前に迫っている問題として「2025年の崖」というものがあります。国内でDXへの取り組みが急がれているのも、この2025年の崖に立ち向かうため。しかし、不動産業界では未だ既存システムに依存しているケースが多く、DXに着手する基盤ができていないという大きな課題を抱えています。

Excelなどを活用している企業も多いですが、重要なのは今あるデータが活用できる状態になっているかどうか。この視点から考えるとまだまだデータを連携できるような基盤を作れている企業は少なく、DXの恩恵が受けられない状況で業務を執り行っているケースが多いのです。

新たなシステムの導入や移行は一時的に大きなエネルギーを要しますが、業務の効率化を図る上では避けて通れないプロセスの一つだと言えます。

 
■DXの課題に関して知りたい方はこちら

不動産業界におけるDXへの取り組み

業界全体に遅れがみられる不動産業界のDXですが、取り組みを行うことで今ある課題の克服につながっていきます。DXは不動産業界にどのような変革を起こすのか。代表的なケースを見ていきましょう。

業務効率化の実現

アナログ的な業務が多い不動産業界は、業務効率化を図るべき場面がまだまだたくさんあります。効率化を図る余地が多い不動産業界にとって、DXは大きな光となる存在なのです。

まずは、マンパワーに頼っている業務にデジタル技術を活用して自動化を図ることからスタート。顧客からの問い合わせ対応にチャットを導入したり、システムを導入して帳票の入力を自動化したりするだけでも、業務効率化の大きな成果が期待できます。

デジタル技術の導入によって業務効率化を図ることは、入力漏れやミスなどの人為的ミスが減るだけでなく、業務の質の向上にも直結。社員間での引継ぎ業務なども必要なくなるため、人件費のコスト削減効果も期待できます。

人材不足の解消と働き方改革の実現

不動産業界に蔓延している人材不足の課題にも、DXは大きな力を与えてくれます。DXを実現するために、まず守りのDXと言われる「業務プロセスの改善」に取り組む企業は少なくありません。業務プロセスを見直すことは、業務の中にあるムダに気づくきっかけとなります。

業務プロセスの中にあるムダをなくすことは、それだけ人の手がかかる場面も減らせるということ。結果、今よりも少ない人数で同じだけの業務がこなせるようになるため、DXは人材不足の解消にも効果が期待できるのです。

また人材不足の解消につながるということは、今までの働き方の見直しにもつながるということ。業務効率化が実現すると今までよりも少ない時間で同じだけの業務を行えるようになるため、一人ひとりの業務負担も減少。

新人社員が即戦力になるなど、想定外の恩恵が受けられるケースもあり、全体的な生産性の向上につながっていきます。
 
■守りのDXに関して詳しく知りたい方はこちら

顧客満足度の向上

DXに取り組むことで、新しいビジネスの創出につながるケースはめずらしくありません。これまで見つけることができなかったビジネスチャンスに、目が届くのはよくあること。Webコンテンツの充実によってWebからの問い合わせが増加したり、リモートでの物件相談が受けられるようになったりと、新しいビジネスの創出によって顧客満足度も向上していきます。

また、これまでに蓄積されたデータを活用して、消費行動やマーケットの変化に対する迅速な対応も可能に。いち早い顧客のニーズの汲み取りが可能となるため、企業のDXは顧客をこれまで以上大切にすることにもつながるのです。

不動産業界でのデジタル技術活用

不動産業界でのデジタル技術活用

DXを推進する上で必要なのが、デジタル技術の活用。不動産業界のDXには、どのようなデジタル技術が活用されているのでしょうか。

VRによるオンライン内覧

新型コロナウイルスのパンデミックにより、不動産業界では物件の内覧という顧客への営業の生命線が一時絶たれてしまいました。また、人々の消費に対する意識がモノからコトへと変化したことも、不動産業界にとって大きな転換期となったことは間違いありません。

そこで新たなサービスとして注目を集めたのが、「VR」の技術を活用したオンライン内覧。以前より物件紹介ページ内に物件内部の画像をアップしているケースは多くありましたが、VRを活用することによって現地に行かずとも、物件内部をリアルに体感することが可能となりました。

VR内覧は、コロナ禍で“行きたくても行けない”状況に陥ったときも内覧を実施できることから、顧客にとっても企業にとってもメリットが大きいサービス。顧客は現地に行かずとも暮らしをリアルにイメージすることができ、企業にとっては内覧にかかる時間と人材の節約ができるとあって、これからの主流となっていくDXの取り組みです。

IoTを活用したスマートロック

モノのインターネットであるIoTは、不動産業界においても大きな力となっています。IoTは、今主流となりつつ「スマートロック」に活用されている技術。スマホのアプリを利用して玄関の鍵の開閉が行えることから、内覧時の担当者の同行なくとも顧客自身が自由に内覧できるというサービスを実現しています。

スマートロックを活用した内覧は、鍵の受け渡しや同行スケジュールの調整など、内覧の省力化を実現。顧客は自分の好きなタイミングで内覧ができ、企業はオフィスにいながら鍵の施錠状況が確認できるとあって、内覧をより気軽なものへと生まれ変わらせることに成功しました。

SFAで営業活動を効率化

さまざまな作業が必要になる営業活動にも、デジタル技術が活用されています。不動産業界の営業活動には、SFA(Sales Force Automation セールス・フォース・オートメーション)と呼ばれる営業を支援するためのシステムを導入するケースが増加。
SFAは商談の開始から商談、購買までのプロセスをサポートしてくれるシステムであり、営業活動の効率化を図るために欠かせない存在となっています。営業プロセスや進捗状況、顧客との関係性なども可視化できることから、営業活動に必要な情報の把握・共有に最適なツール。

データ共有のための会議を設ける必要もなくなるため、SFAの活用によって営業担当者自身の生産性向上につながっていきます。

不動産業界のDX成功事例2選

不動産業界のDX成功事例2選

DXによって、大きな変化を遂げることができる不動産業界。すでにDXへの取り組みによって成功を収めた事例に、目を向けてみましょう。

バーチャル展示場の実現で契約率アップ/あいホーム

住宅販売が主力となる不動産会社にとって、人が集まるイベントに対しての制約やソーシャルディスタンスの意識づけは売上を低迷させる大きな要因となりました。宮城県の工務店である「あいホーム」は、コロナ禍のピンチをチャンスに変えるべく「バーチャル展示場」のアイデアを実現。

バーチャル展示場は、スマホを使った物件内覧サービス。気軽に出かけられない今のご時世でも、リアルに物件の雰囲気を感じることができるようになっています。

一社単独で開発された展示場ということもあり、バーチャル展示場はあいホームの売り上げアップに大貢献。契約件数は前年比の128%にアップし、大きな成果を上げたDXの事例として注目を集めています。

売買契約に関する書類を電子化/野村不動産

不動産業界の大手である野村不動産では、デジタル化の遅れを見せている不動産業界を変えるべくDXに着手。野村不動産のDXでは、売買契約書類の電子化に注目が集まっています。

2020年8月より実施されている契約書類の電子化は、不動産契約にまつわる顧客の負担の軽減に直結。電子化にあたっては「Musubell(ムスベル)」という専用のシステムを導入し、不動産契約の一元管理に成功しました。

この取り組みは、ペーパーレスのみならず顧客満足度の向上にも直結。重要事項説明の電子化にまつわる法の整備が進めば、不動産業界にもさらなるDXの追い風が吹くと考えられています。

 
■ペーパーレス化に関して知りたい方はこちら

まとめ

アナログ主義の文化がまだ根強く残る不動産業界。しかし、積極的にデジタル技術を活用しながら、DXに取り組んでいる企業も増えてきています。

日本の不動産業界を世界と戦える存在にするためにも、DXへの取り組みが急がれます。

この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。