Fabeee×マイナビの資本業務提携から見る「2025年の崖」対策に必要なマインドと人材

2021.08.27

2021.08.27

DXのあるべき姿を考える

Fabeee株式会社
佐々木淳

株式会社マイナビ
濱本 剛史


 

デジタル後進国である日本は、DXに関してもなかなか進んでいないのが現状です。しかしこのままの状況が続くと、「2025年の崖」は避けて通れないでしょう。ただ、この状況を打破しようという動きがあるのも事実です。
今回は、先日DX推進のために実施された資本業務提携がきっかけとなって実現した、Fabeee株式会社CEO佐々木と株式会社マイナビ濱本様によるDXの現状とこれからについての対談内容をご紹介します。

 

Fabeee株式会社
代表取締役CEO 佐々木 淳

大学卒業後、営業職・新規プロジェクトの立ち上げなどの経験を経て、2010年に20代の若さでFabeee株式会社を創業。「オンラインとオフラインの境界線のない世界」の実現を目指し、同代表取締役に就任(現任)。

 

株式会社マイナビ
海外事業企画部部長 濱本 剛史

新卒で株式会社マイナビに入社し、大学・短大・専門学校の学生募集支援を行う進学情報事業部で営業や企画運営を経験。
2019年にグループ経営統括本部に異動しASEANのスタートアップへの出資やM&Aを担当。

 

■マイナビ様とFabeeeの資本業務提携の先に考えるDX推進とは?

 
―このたび、資本業務提携に至った経緯についてお聞かせください。
 

濱:今の日本のITエンジニア不足を解決するために、海外のエンジニアを活用しようということが資本業務提携のきっかけでした。元々は海外のITエンジニアに日本で働いてもらおうというプロジェクトがあったのですが、ITエンジニアのスキルも必要ですし、日本語のコミュニケーション能力も必要ということで、ハードルが高いものでした。
 
エンジニアにとってはメリットが少なく、英語でアメリカやヨーロッパとやりとりできるのに、わざわざ日本語を学ぶインセンティブが少ない…。このような理由から、優秀なエンジニアがそもそも日本に来ないという状況が続いていました。
 
こういった悩みを抱える中で、海外のエンジニアに日本に来てもらうのではなく、「日本の案件を海外で受けてもらう」というスキームであれば、まだまだ可能性はあるのでないかと考え、複数のオフショア会社を選別し、日本とビジネスするのはどこが適切か、検討しました。
 
その中で見つけたのが、ベトナムの企業です。ベトナムは他の国に比べて日本語も堪能な方が多く、ベトナムのオフショア会社と資本業務提携して、日本のクライアントに提案していこうというプロジェクトが始まりました。
 
しかし、「要件を固められない」「どのような業務フローにするか、サービスを作る上でどのような技術が必要かわからない」などのクライアントの課題に対して、PMやITコンサルタントのような職種の人がいない場合、適切な回答ができません。このような問題を解決するためには、DX領域においてコンサルティングを行う企業との結びつきが必要だと感じ、Fabeeeさんとの提携に至りました。

佐:Fabeeeでは、当時大きな課題を二つ抱えていました。一つ目は、「マーケティング・セールスにおけるリード獲得」。マーケティング・セールスの仕組み化を行い、オペレーションを確立したいと思っていました。
 
PMやコンサルティングなどが、適切なドキュメントをオフショア会社様に流すというスキームの中で、課題となるのはシステムの品質だと思っており、品質に対する不安を「担保します」と言い切れるセールスというのは、今後、Fabeeeの大きな強みになるのかなと思っています。この強みを最大化させるためにもリード獲得の仕組み化を重要視しておりました。
 
もう一つの課題は、「人材不足」です。Fabeeeでも人材不足で悩んでいる時期があり、海外の人材を日本で活用したかったのですが、コロナの影響もあり、困難となっておりました。その状況下で、他社がベトナムに参画している実例を目にし、ベトナムに参画していること自体のバリューやベネフィットです。実際の例を見てベトナムの良さを感じ、マイナビさんと一緒に「海外オフショア会社と連携したDX」を日本で推進しようという気持ちになりました。

 
―以上が、両社の資本業務提携の背景ということですね。
 

濱:そうですね。背景であり、狙いと言ったところでしょうか。

■国内のDX状況と社会課題である「2025年の崖」について

 
―資本業務提携を元にDXを推進するにあたって「2025年の崖」という社会課題は見逃せないかと思いますが、「そもそも2025年の崖とは?」というところを、改めて少しお聞かせいただけますでしょうか。
 

 

佐:大きくは二つです。最適化や過剰なカスタマイズを繰り返した結果、システムの複雑化・肥大化を招き、経営そのものを圧迫。海外はもっとモダンな環境で実装され、柔軟性があるシステムを作っています。発展途上国なら、最新のシステムをつい最近導入したばかり…となるため、レガシー言語を残しながらのシステム開発は難しくなってしまうのです。そういうところが、2025年の崖の大きなポイントになっていると思います。
 
あとは人口が右肩下がりに減っている中で、レガシー言語を理解し扱えるエンジニアの多くが、2025年までに定年を迎えてしまいます。その結果、エンジニアという「専門技術者」が減るということは、大きな課題です。

 
―ありがとうございます。大きな社会課題がある中で、Fabeeeとしてはどういった取り組みを行い、そこに対してどうアプローチしていくべきだとお考えでしょうか?
 

佐:2025年の崖に向けて、まず「DXとは?」を浸透させることが大切だと思っています。DXの推進とは、単純にデジタル化することや、AI、最新技術を使うことだけが目的ではありません。
 
組織が新しいステージに向けて生まれ変わるためには、「失敗を受容できる組織運営」をもとにDXを推進していく必要があります。
 
そのためにデジタルが必要ならデジタル化を進め、データ分析が必要なら今あるデータの資産を活用し、分析・可視化をする必要があります。データを活用すること自体を自社の文化にしていきましょうという啓蒙活動も重要です。
 
その先に、既存事業の資産を使って新規事業を創出したり、既存事業を変革したりすることで、企業として新しく生まれ変わることが重要と考えます。

 
―マイナビ様はいかがでしょうか?
 

 

濱:マイナビの主な取引先となるのは中小企業様です。その中で、「新規事業をやりたい」・「業務改善したい」となっても、“IT人材”がいないのでなかなかやりたいことが進まない…。このようなお客様が多いのです。
 
今まではクライアントに対して総合的な人材サービスの提供をメインに行ってきましたが、加えてマイナビが「こういう技術を使ってこういうサービスを作っていくといいですよ」というソリューションを提供できたらいいなと思っています。

佐:全国にネットワークがあるというのは大変すばらしい資産であると同時に、課題抽出のきっかけを作ることができます。Fabeeeは量の担保ができていませんでしたが、質というところでは自信があります。
 
上流課程から入っていきながら、ときには経営課題に直面したものをコンサルティングする。また、事業課題に対してコンサルティングすることもあります。今回の資本業務提携は、「オフショアの低コスト×Fabeeeによる品質担保」というメリットがあると感じています。
 
「安くて、早くて、品質が高い」
この三拍子が揃った新しいデジタルソリューションという形をマイナビさんとFabeeeで作ることができれば、日本の中小企業様をもっと良くすることができます。これが、最終的なゴールだと思っています。

 
―ではゴールに向けて、そもそも中小企業側がDXをどのように捉えているという印象をお持ちでしょうか?
 

 

佐:中小企業様に話を聞くと、まず「DXって何から取り組んだらいいの?」という質問をよく頂戴します。実は、「DX」という言葉は海外にはありません。当然非IT産業の企業様からすると、「DX、DXって言われてもなんのことかわからない」というのがまずそもそもの問題なのではないかと思います。

 
―マイナビ様はいかがでしょうか?
 

濱:マイナビも同じ印象を持っていて、「何から始めていいのかわからない」というケースが多いと感じております。「やりたいことがあってもどうアプローチしていいのかわからない」、「やりたいことはあるけどそのスキルを持った人材がいない」といった課題です。

佐:本質的に言うと、「システム化より業務改善では?」という場合もあります。まずはGoogle Workspaceの導入やGoogle Driveの利用などを検討するところからおすすめすることもあります。

 
―今お話いただいたような現状があって、「DX」という大ゴールがある。では、具体的にどのような進め方をご案内されているのでしょうか?
 

 

佐:Fabeeeでは「失敗を許容・需要できる組織運営」=「DX」と定義しています。新規事業や既存業務の変革というのが、Fabeeeにとっての「最終ステップ=ゴール」です。
 
まずは、「紙の文化から脱却し、紙とデジタルの共存を目指す」ということから始めます。紙を管理するためのコストや、そのための人材コストがいつまで必要なのか。それなら、「まずデジタル化ではないですか?」と。「本当に必要なところに必要なスキルを持った人をアサインすれば、効率化を計れますよね?」というのが、第一ステップです。
 
次は、「データ活用を企業文化にしましょう」というのが、二つ目のステップになります。データを活用するためには分析基盤が必要です。分析基盤を作りながら、かつ簡単に難易度が高い分析に取り組める状況を作ることをおすすめしています。
 
以上のことができてはじめて、最終ステップに導かれると思います。しかし、1ができている企業もあれば2を始めている企業もある。さらに言えば、2が終了している企業もあります。各企業の状況や課題に合わせながら進めていくことが、重要です。

 
―一方で、DXを推進する人材を確保する必要も出てくると思います。その場合、どういう人材が必要になりますか?そもそも人材の確保自体必要なのでしょうか?
 

佐:まず、国内の人材リソースと海外の人材リソースの共存というのが主題になります。先ほどお話しした通り、「2025年の崖」において国内の人材が慢性的に足りなくなることは明確です。

濱:これは、人材を確保するだけで解決する問題ではないかなと思います。そこをどうコントロールしていくか、また上流工程でうまく調整できるかということが重要と考えます。

 
―そもそもIT人材の求職者は少なく、需要のほうが多いのでしょうか?
 

濱:日本はもちろん、欧米でも需要のほうが多いです。供給が追い付かず、未経験や経験の浅いエンジニアをどんどん輩出していかないといけないような状態になっています。
 
ただどの企業もエンジニア人材だけを求めているというわけではなく、PMも求めているという状況です。

 
―どの企業もPMも抱えたいが採用が困難であるため外注していることが現状なのでしょうか?

濱:実は、PMやITコンサルタントは採用がとても難しい職種です。独自の魅力的なサービスの展開や社風の革新性など、エッジが立っていないとそもそも自社でPMやITコンサルタントを採用することのハードルは高いです。
従って、外注するしか方法がない…という状況になってしまうのです。

 
―パッケージにすればこの問題は解決できるのでしょうか?
 

佐:できます。パッケージにすれば、メインのところはそれほど変える必要がないため、バージョンアップの際も低コストでの実施が可能です。

 
―誰でも扱えるようなパッケージということは、ノーコードに近いイメージですか?
 

佐:いえ、ノーコードでなくても問題はありません。これをノーコードと定義してしまうと、ノーコードに対する考え自体がおかしくなってしまいます。
 
パッケージ化できるシステムをきちんと作ることが、DXの中で最重要なことだと思っています。パッケージが良ければ、PMを無理に採用する必要はなくなります。

 
―そうすると、マーケティングの人材やセールスの人材を供給するだけでOKになるという認識で間違いないでしょうか?

佐:その可能性も多いにあると思います。

濱:ただ、新規事業やWebサービスを展開しようとする企業には、PMが必要になると思います。業務フローをどうするかなど、バックオフィス系の企業はパッケージが必要だと思いますが、自社サービスを作るのであれば、コンサルやPM的なポジションの人材が必要になるのではないでしょうか。

佐:個人的には、PMはどんな状況であっても必要だとは思っています。大小規模関係なく、どんなプロジェクトにもリーダーは必要です。より必要なのが新規事業やWebサービスを展開するタイミングというイメージでしょうか。

 
―マイナビ様としても、「人材を」というだけではなく、パッケージなどを提供できるようにしたいということでしょうか?
 

濱:今、Fabeeeさんと一緒に取り組んでいますが、各業界にはそれぞれ同じような課題があると思っています。今後は各業界の課題を解決できるようにパッケージ化してカスタムしていくという展開も行なっていきたいと考えています。

―企業の状況によっては、パッケージを入れた後に人材を供給するのも然りという形で、総合的にソリューション提供されたいということですね?

濱:そうですね。

佐:今濱本さんがおっしゃったように、新規事業はゼロから「今」の環境を提供できるので、ゼロからというのはありだと思います。

 
―マイナビ様のオフショア開発事業への出資の狙いをお聞かせください。
 

濱:アジアの優秀なエンジニアとともに、日本や欧米のITエンジニア不足を解決できるようにしたいです。
 
その第一歩として、ベトナムのオフショア会社とFabeeeさんと連携をしながら、日本での事業機会を探っていきたいと思います。

佐:マイナビさんのミッションのためにも、オフショア会社でも、Fabeeeでも、簡単に開発できるような環境を、お互いに作っていきたいです。例えば完了までに一週間かかるはずだったものが、共通理解のあるレスコードであれば、一日で開発できるようになる。
 
クライアントに対しては、安くて早く品質が担保されたものを提供できる。こういう流れを一緒に作ることでできれば、お互いにメリットがあると思います。

 
―プロジェクトのノウハウをどんどん貯めていくことで効率化していき、簡単に安く提供できるものを作れると良いのでは?ということですね。
 

佐:私は、ノーコードである必要もないと思っています。受発注の世界でも、お金を払ってでもやって欲しいという声があります。
 
安く、早く、開発ができる技術・ノウハウを活用し、希望の光を持っているスタートアップや中小企業様をサポートしていきたいと思っています。

―今後の展開として、最後に将来的なお話をお聞かせください。今回の取り組みの強みや特徴を考えたときに、どういった企業の課題を解決できそうでしょうか?
 

佐:大きなところで言うと、「自社の既存業務をもっと成長させたい」と考えている企業様や、「次の中期経営計画の中で新規事業を立案しないと、自社のバリエーションが上がっていかない」という企業様には、我々のDXのアプローチは非常に効果的です。現在保持しているデータの活用方法がわからない企業様や、データを活用してどんな未来が描けるのかがわからない企業様にも、フィットするでしょう。
 
働き方改革で時間的制約が大きくなった中で、世の中では効率が求められています。業務を効率化するのであれば、例えば業務に使っている紙はデジタル化しませんか?という考えの企業様にも、フィットするかと思います。

濱:経営陣や人事担当者との商談機会が多いので、「新規事業や業務効率化でこんなことをしたい」というニーズは拾えると思います。新しいことをやるために人材を採用するとなったときのために、転職サイトや人材紹介で人材採用をお手伝いするに留まらずに、新規事業開発等のソリューションを提案出来ればと良いなと思っています。

 
―両者のお話を聞いて、質を担保することの大切さを再確認することができました。
 

佐:重要なのは、課題に必ず向き合っていくこと。「もっとこうしたら良くなるなのに…」と思ったら、その思いをお伝えしないのが一番の悪だと思います。正しくお伝えすることが重要で、「ダメなものはダメ。それではグロースしないですよ」と気づかせてあげることが、Fabeee×マイナビの仕事だと思います。
 
ジタバタしてしまっている企業に「落ち着きましょう」と言ってあげることも、Fabeee×マイナビがやらなければいけないことだと思います。
 
いかに経営陣にアタックするか。経営陣のマインドがチェンジすれば、変わる会社は変わります。正しいことを正しく言えば、きちんと通っていくのですから。

Fabeee編集部

Fabeee編集部

こちらの記事はFabeee編集部が執筆しております。