投稿日 2022.01.12

最終更新日 2022.01.12

アパレル業界にも届くDXの波!業界内で生き残るために必要な取り組みとは?


国内外問わず、業界内での生き残り競争が激化しているアパレル業界。現状を打破するために、アパレル業界にもDXの波が届き始めています。

そこで今回は、アパレル業界の現状と課題を通して、DXの存在意義やデジタル技術の活用シーンについて解説。実際にDXに着手し成功を収めたケースも、あわせてご紹介します。
 
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アパレル業界におけるDXの役割

デジタル後進国である日本は、世界と比べて各業界DXへの取り組みが遅れている傾向にあります。アパレル業界についても同じことが言え、なかなかDXの波に乗れていないのが現状です。

では、そもそもアパレル業界にとってDXとはどのような役割を果たす存在であると認識されているのでしょうか。アパレル業界とDXとの関係性に目を向けながら、その必要性について確認してみましょう。

業界内で生き残るために欠かせないDXへの取り組み

ITやAIなど、デジタルの力を活用しながらビジネスに変革を起こすDX(デジタルトランスフォーメーション)。日本国内でも国を挙げて企業のDXへの取り組みが後押しされており、徐々に国内のDX推進率も上がってきています。

SDGsサステナブルなど、昨今耳にする機会の増えた言葉が頻繁に使われるアパレル業界でも、DXへの取り組みに対する注目度が急上昇。しかしながら、まだまだその推進率は高いと言えないのが現状です。

しかし、アパレル業界においてDXに取り組むメリットはたくさん。検品や寸法検査などの業務において生まれるデータを活用することで、コストの削減や顧客サービスの向上につながったり、デジタル機器の導入によって実店舗における業務効率化が図れたりと、今すぐにでも取り組む価値のあるプロセスであると言えます。

アパレル業界の未来を作っていくためにはもちろん、日本経済を発展させるためにも、DXへの取り組みは欠かせないと言えるのではないでしょうか。

アパレル業界の現状と課題

DXを推進するにあたり、まず把握しておかなければいけないのは、業界の現状と解決すべき課題です。アパレル業界の現状と課題に目を向けてみましょう。

コロナ禍突入による大幅な売り上げ減少

コロナ禍に入り、大きなダメージを受けた業界が少なくありません。売上の減少はもちろん、業態の在り方自体に変化が求められた業界も多く、経済の大きな転換期となっていることは間違いないでしょう。

アパレル業界においても、コロナ禍は大きな影響を与えています。元々低価格志向景気の低迷など、消費者の意識はアパレル業界にとっては厳しいものとなっていました。そこへ追い打ちをかけるようにやってきたのが、他でもないコロナ禍です。新型コロナウイルスの蔓延により、外出機会は減少。実店舗の営業についても、休業または時間短縮などのような形となり、これまでの普通が通用しない世の中となりました。

明確な終わりを見つけることができないコロナ禍を乗り切るためには、実店舗の販売だけに頼るのでなくあらゆるチャネルでの販路拡大が求められます。

少子高齢化による国内市場の縮小

2020年に発表された日本の平均寿命は、男性が81.64歳、女性が87.74歳。女性の平均寿命は世界第一位となり、日本の高齢化が一目見てわかる結果となりました。一方で出生率は減少の一途を辿っており、コロナ禍の影響を受けて今後さらに少子高齢化が進むと考えられています。

この少子高齢化は、日本経済に大きな影響を与える要因となることは、言うまでもありません。アパレル業界も少子高齢化の影響を受けており、国内マーケットの縮小につながっています。

マーケットの縮小だけでなく、働き手の減少にも少子高齢化の影響が出てくることから、アパレル業界にとって克服しなければいけない大きな課題の一つとなっています。

解決が急がれる余剰在庫大量廃棄の問題

アパレル業界は、トレンドの移り変わりがとにかく激しいのが特徴。売れ残りがあったとして、トレンドが変わってしまうともうその商品を店頭に置いておくことはできません。

しかし、アパレル業界では大量生産・大量仕入れが基本。結果、売れる量よりも在庫の量の方が上回ってしまい、余剰在庫が発生してしまうのです。

今アパレル業界では、この“余剰在庫”の問題にスポットが当たっており、各企業あの手この手で余剰在庫問題の解消に着手していますが、これと言った大きな解決策が生まれていないのが現状。また、余剰在庫だけでなくそれにつながる“大量生産”や“大量消費”、大量廃棄など、衣料品に関わる問題が業界全体の課題となっています。

余剰在庫にまつわる問題は、金銭的負担や環境的負担を生み出す要因にも。自社を守るためだけでなく、世界の人々や地球を守るためにも、ビジネスモデルの変革が求められています。

アパレル業界におけるDXへの取り組み

現状に対する課題を克服すべく、アパレル業界でもDXに取り組む企業が増えつつあります。アパレル業界では、どのようなDXの取り組みが行われているのでしょうか。いくつかの事例をご紹介します。

展示会やファッションショーのデジタル化

アパレル業界において、商談の場にもなりうる展示会やファッションショー。しかし、コロナ禍に入り人との接触機会が制限される中、リアルの場での展示会やファッションショーの開催は難しい状況になりました。

そこで新たな取り組みとして始まったのが、展示会やファッションショーのデジタル化。展示会やファッションショーをオンライン上で開催することにより、柔軟な対応ができるようになったのです。

展示会・ファッションショーのデジタル化は、出張費の削減や対顧客とのやり取りの実現など、さまざまな場面においてメリットを発揮。アパレル業界にとって、大きなDXへの取り組みの一つであると言えます。

実店舗での商品販売をなくす

アパレル業界では実店舗に商品を置き、顧客に実際に見て触れてもらって購入してもらうというケースがほとんど。しかし、DXの取り組みの一つとして、あえて実店舗での販売を取りやめるケースも増えてきています。

モノを買う場所として、今は実店舗ではなくネットショッピングを主にしている人も少なくありません。人々の購買行動の変化に対応するためには、アパレル業界の企業においても、実店舗の在り方を見直す必要があるのです。

実店舗は、試着や採寸のみを行って消費者の興味を商品へと移す場になり、商品の購入はネットショップから行ってもらう。実店舗とオンラインショップを連動させながら売上を向上させることが、これからのスタンダードとなります。

アパレル業界でのデジタル技術活用

アパレル業界のDXを加速させるためには、デジタル技術の活用が欠かせません。アパレル業界では、どのようなデジタル技術が活用されているのか。すでに取り組みが行われている事例に目を向けてみましょう。

流通数が増えているRFIDタグ

アパレル業界のDXに欠かせない存在となっているのが、RFIDタグ。RFIDタグとは、非接触でその商品にまつわるさまざまな情報が得られる仕組みのことです。

RFIDタグは、在庫管理を行う上で今やなくてはならない存在。RFIDタグ自体の平均価格が下落したこともあって、アパレル業界ではその流通数が上昇の一途を辿っています。

非接触でさまざまな情報が登録できるRFIDタグは、レジの無人化や棚卸の効率化など、アパレルのDXに必要不可欠であることから、今後もその流通量は増える予想です。

AIによるデジタル採寸

AIは、DXへの取り組みを行う際によく活用されるデジタル技術のひとつ。アパレル業界のDXにおいても、AIが大きな力を発揮しています。

アパレル業界では、AIを活用した採寸が新たなスタンダートに。スマホに専用のアプリをインストールするだけで採寸が行えるため、顧客にとっても実店舗へ行くという手間が省けます。

ECサイトでの商品販売がメインとなりつつある今、大きな課題となっていたのが顧客の採寸。AIは、ディープラーニングによって蓄積した膨大な量のデータをもとに、ユーザーの性別や年齢からその人の体の各部位を高い精度で計測します。

ECサイトにつきまとう返品の問題も、AIによる採寸が可能となったことによって減らすことが可能。消費者に安心した買い物を楽しんでもらうためにも、AIによるデジタル採寸を取り入れる企業が増えています。

スマートグラスやバーチャルヒューマンの活用

アパレル業界は、製品ができるまでにサンプルなどの作製の工程を経ることから、どうしても廃棄が多くなる傾向に。サステナブルやSDGsが叫ばれている今の世の中の流れとは逆行した業務プロセスは、DXを通じて改革していかなければいけません。

そこで今、アパレル業界にて増え始めているのが、スマートグラスやバーチャルヒューマン、3DCGなどのデジタル技術を活用した、バーチャルな展示会・ショーの開催。新作のアイテムとなる3DCGを着用させたバーチャルヒューマンをスマートグラス越しに見ることで、目の前に実物がいるかのような感覚で素材感などを確認することができるようになります。

このシステムの活用によって、実際の生地や糸を使わずともサンプルの確認が可能に。時間や場所にとらわれることなく展示会・やショーが開催できるため、リアルで会えない今の時代に必要なDXであると言えます。

アパレル業界のDX成功事例2選

アパレル業界には、すでにDXに取り組み成功を収めている事例があります。自社のDXの一歩を踏み出すためにも、まずは成功事例に目を通してみましょう。

AIのデジタル採寸を一躍有名にした「ZOZOSUIT」/ZOZOTOWN

ファッションECサイトの代表格とも言える、ZOZOTOWN。知名度も高く利用者も多いZOZOTOWNでは、ECサイトの革命とも言えるAIのデジタル採寸システム「ZOZOSUIT」のサービス提供を開始し、今まで以上に注目を集める存在となりました。

ZOZOSUITは、専用のウエアを身につけて専用のアプリで360度撮影するだけで、体のサイズを3Dで計測できるという画期的なサービス。計測したサイズから自分の身体に合うアイテムを探すことができるため、時間も場所も気にすることなくショッピングが楽しめます。

3Dデザイン技術を導入してデザイン性を向上/Tommy Hilfiger

アパレル業界にとって、デザインは企業の生命線。アメリカのアパレルブランドであるTommy Hilfiger(トミーヒルフィガー)は、デザイン性を向上させるためにDXを実施しました。

Tommy Hilfigerでは、3Dデザイン技術を導入して従来のデザイン手法を一新。ただ技術を導入するだけでなく、最大限にその技術を活用するために専門のチームを立ち上げ、企業を挙げてデザイン性の向上に取り組みました。

2020年の時点で、デザイナーの約70%が3Dデザインの訓練を受けていると合って、今後のデザインの変革が期待されています。

まとめ

まだまだ低いと言われている、アパレル業界のDX。しかし、消費者行動の変化やコロナ禍など、これからも立ち向かっていかなければならない課題は山積みです。

業界を盛り上げることはもちろん、日本経済を立て直すためにも、アパレル業界のDX推進が急がれています。

この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。