投稿日 2023.07.24

最終更新日 2023.07.24

リテールメディアとは?注目されてる理由やメリットなどを分かりやすく解説

リテールメディアとは?注目されてる理由やメリットなどを分かりやすく解説

リテールメディアとは?

リテールメディアとは、個人消費者向けの流通・小売事業者(リテール)が、消費者の購買データなどを活用して広告を配信する仕組みです。流通・小売事業者の実店舗に設置されるデジタルサイネージや、各事業者が運営するWebサイト・ECサイト・店舗アプリなどを使用して広告を配信します。

なぜリテールメディアが注目されているのか?

なぜリテールメディアが注目されているのか?
リテールメディアに注目が集まる要因は複数存在します。ここでは、主な要因を4つに絞って解説します。

リテールメディアを実現する環境が整備されてきた

テクノロジーの発達により、大手企業に限られた広告配信やデータ活用が流通・小売業者でも利用できるようになったことは、リテールメディア普及の足掛かりになりました。効果が高い広告を配信するには、データを分析しターゲットを明確にする必要があります。そのためにはデータを活用する技術や仕組みが必須です。その点、近年は、収集した情報を活用するのに役立つデータプラットフォームが発達しています。また、プラットフォーム上でデータを分析するツールとなるAIや機械学習技術が登場し、一般的な活用も広がりました。このことがリテールメディア拡大の大きな推進力になっています。

新型コロナウイルスの流行

テクノロジーの活用が特に進んだのは新型コロナウイルスの流行期です。人々が不要不急の外出を避け、ネットショッピングを多用するようになったことで、従来の営業スタイルを取る実店舗は窮地に立たされました。その打開策として、リアル店舗はWebを介しての商品販売やPRの方法を積極的に取り入れ始めました。ライフスタイルが大きく変わったことが、結果としてリテールメディアに注目が集まり、参入企業の増加につながっています。

日本特有の事情

リテールメディアに注目が集まる背景には、日本が置かれている状況も関係しています。経済成長が低迷し、消費者の購買意欲は上向いていません。総務省の統計によると、日本の人口は2021年に64万人以上減少しました。これらの複合要因により、従来型のビジネスモデルが通用しないと感じる小売事業者が増加しています。そのため、新しい選択肢としてリテールメディアに注目が集まっています。

Cookie規制

サードパーティCookieが規制の対象になったことも、リテールメディアが注目されるきっかけとなりました。Cookieは、Webサイトを訪問したユーザーの情報を一時的に保存する仕組みです。Cookieに保存される主な情報は、ログインIDやパスワード、カートに入れた商品の情報や住所などです。Cookieは大きく分けて2つの種類があります。一つはファーストパーティーCookieで、訪問先のWebサイトから発行されます。もう一つは、訪問しているWebサイトとは異なるホストから発行されるサードパーティーCookieです。
 
サードパーティーCookieは、自社サイトに訪問したユーザーに対し、別のサイトを閲覧した際にも広告を配信できる「リターゲティング広告」に利用されています。加えて、広告の貢献度を理解できるアトリビューション分析や効果測定、アフィリエイト広告にサードパーティーCookieが活用されています。サードパーティーCookieは、デジタル広告の成否を左右する存在と言えるでしょう。
 
サードパーティーCookieの規制は、2018年5月施行の「EU一般データ保護規則(GDPR)」、2020年1月から施行された「カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)」に伴い強化されています。日本でも、2022年4月より「改正個人情報保護法」が施行され、Cookieの利用には本人の同意が必要になりました。Webサイトを開くとCookie使用の同意許可が求められるのはこれらの法律が関係しています。サードパーティーCookieの使用に制限がかかった分、小売企業が保有するファーストパーティーCookieの存在感が増し、リテールメディアが注目されています。

リテールメディアの市場規模

リテールメディアの市場規模

注目されるリテールメディアですが、どれほどの市場規模になっているのでしょうか。これまでの展開や今後の推移を含め、企業のマーケティング担当者は気になるところでしょう。ここで世界の市場規模やこれまでの経緯に加え、日本の状況を解説します。

世界全体のリテールメディアの市場規模

リテールメディアの市場規模は、世界全体で12兆円に達するとみられています。その半分を占めるのがアメリカです。2022年には約6兆円と、世界最大の市場に成長しています。なお、2023年には7兆円規模になると予想されますが、これは日本の広告予算総額に匹敵する数字です。もちろん、アメリカと日本の市場規模は異なりますが、リテールメディアに力を入れている様子がうかがえます。アメリカのリテールメディアは2012年から2014年にアマゾンやeBeyが開始し、その後の2017年から2019年にはウォルマートやターゲットが参入しました。そして、2020年以降は事業規模や業種を問わず、さまざまな小売事業者やEC業者が取り組みを始めて発展を続けています。

日本の市場規模と今後

2022年9月に株式会社CARTA HOLDINGSが発表した資料によると、2021年の日本におけるリテールメディアの市場規模は90億円でした。2022年には135億円、2023年には245億円になると予想されています。さらに、2024年は410億円、2025年は590億円、2026年には805億円に達すると見込まれます。
 
なお、リテールメディアに使用されるツールは、2023年にはデジタルサイネージが135億円、オウンドメディアやデジタル広告などオンラインメディアが110億円になる予想です。それが2025年になるとデジタルサイネージが290億円、オンラインメディアが300億円になるとされ、逆転が見込まれています。今後は小売企業のDX化が進み、一元的に顧客管理ができるツールなどが普及することで、付加価値が高いデジタル広告の導入が促進されると考えられています。

リテールメディアが与えるメリット

リテールメディアが与えるメリット
リテールメディアは、消費者・小売事業者・広告主の三者すべてにとってメリットがある仕組みと言われます。

消費者

リテールメディアは、すでに登録された顧客情報や購入データなどに基づき、広告を配信する仕組みです。消費者は、興味・関心がある商品の情報を最適なタイミングで得られるということです。小売事業者側は、消費者にとって不要な広告を排除して快適に買い物する環境を作り、購買意欲を高めることができるでしょう。

小売事業者

ファーストパーティーCookieは規制の対象にならないため、顧客から得た情報をもとに消費者一人一人に合ったサービスを展開するなどして顧客満足度向上を目指せます。店舗やECサイトで広告枠を設置し、広告収入を得ることも可能です。リアル店舗に加え、アプリやECサイトを導入すると、享受できるメリットが大きくなると考えられます。

広告主

消費者は、何かを購入する意図をもってリアル店舗やアプリ、ECサイトを利用します。ネットの検索エンジンやSNSの利用者に比べて購買意欲が高いと見込まれるため、リテールメディアに広告を出したい企業は自社商品やサービスの情報を効率よく提供できるでしょう。

リテールメディアの事例

リテールメディアの取り組みに成功した企業の筆頭にウォルマートが挙げられます。ウォルマートでは、リアル店舗で収集した顧客情報をもとに、店内に設置したデジタルサイネージや自社のWebサイトを通じて広告を配信しています。店内の壁面に設置された多くのディスプレイや決済端末に広告を表示できるようになっており、メーカーから広告収入を得ることも可能になりました。これらは、2021年に開始した広告プラットフォーム事業「Walmart Connect」の結果と言えます。なお、ウォルマートにおける2021年の広告事業の年間売上高は、21億ドル(2,400億円)に達した模様です。流通・小売業は商品を販売して得られる収益が頭打ちとされますが、広告収入を得る仕組みが登場したことで、新たな展開を見せる可能性があります。

【まとめ】今後、日本におけるリテールメディアはどうなるのか

リテールメディアによる日本の広告市場は、2021年から2022年にかけて約1.5倍に拡大しました。これは新型コロナウイルス蔓延の影響が大きいとされますが、前述で取り上げた予想数値にもあるように、今後も着実に成長することが見込まれます。リテールメディアという言葉を聞く機会は着実に増えています。また、リテールメディア専用の広告配信ツールを提供するベンダーの数も増加しています。リテールメディアが小売事業者を救う新たなビジネスモデルになるかどうかは、リテールメディアの導入・運用をサポートする外部パートナーの存在・配信できる広告の質と量・小売事業者側の意欲などが関係すると考えられます。

この記事の監修者

冨塚 辰

冨塚 辰

プロジェクトマネージャー