MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)とは?特徴などを活用事例を含めて分かりやすく解説

2022.04.21

2022.05.26

マーケティング

MMMとは?特徴などを活用事例を含めて分かりやすく解説
近頃ではメディア広告が多様化しており、各メディアで行った広告などの施策が実際にマーケティング活動にどのような影響を与えたのか、その因果関係を捉えることは簡単ではありません。広告だけに限らず現代のビジネス環境は、マーケティングにかかわるさまざまな要素が複雑化しています。そのため、多くの企業にとって施策とマーケティング活動との因果関係を捉えることは重要な課題です。その課題を解決するアプローチとして、マーケティング・ミックス・モデリング(あるいはメディア・ミックス・モデリング、以下MMM)が注目を集めています。

MMMの概念とは?

MMMの概念とは?
MMMとは、広告などの施策がどれだけマーケティングの成果に影響を与えたのかを推定できるように、マーケティング施策のデータを統計的に分析して、モデル化する手法です。マーケティング施策の影響を具体的に判別できるようにするために、効果を定量化する分析方法であるといえます。しかし、統計的手法をマーケティングに用いる試みは、決して新しい考え方ではありません。これまでにも消費者調査やログ分析などによって、メディア広告の成果を個別具体的に判断するアプローチが採用されてきました。では、どのような点でMMMは従前の統計的手法と異なるのでしょうか。従前の統計的手法と最も異なる点は、MMMはあくまでメディア・ミックスの最適化を前提としたモデル化であるという点です。

メディア・ミックスの最適化

メディア・ミックスの最適化
現代のマーケティング活動においては、集客するための経路(チャネル)の確保が欠かせません。そのために顧客とのコミュニケーションを図る必要性があります。売上げの拡大を目指すのであれば、コミュニケーションをはかる先は、既存の顧客だけには限らず、新規顧客にも情報が届くようにしなければなりません。

そこで企業のマーケティング活動は、TVCM・ラジオCM・印刷物といった従来のオフライン広告の利用だけでなく、ホームページやSNSの利用、あるいはオンライン広告やデジタルサイネージを利用したOOH(Out of home advertising)といった新しい媒体を組み合わせることによって、顧客と結びつくチャネルを多く確保するようになっていきました。これはメディア・ミックスと呼ばれており、近頃のマーケティング戦略では重要なものとみなされています。

しかし、単に複数の媒体を利用しただけでは、顧客との強固な結びつきを作り出すことは叶いません。多くの顧客との密接なつながりを確保するためには、メディア・ミックスを最適化する必要があります。それにはROI(投資収益率 Return On Investment)を調べた上で、マーケティング戦略自体の見直しをしなければなりません。MMMはこのようなケースでも役立つ手法です。メディア・ミックスで用いられたさまざまな媒体のデータの分析をし、その上でマーケティング活動に適した媒体利用方法を明らかにするからです。これによってより高いROIを実現できるモデルの作成ができるようになります。

MMMの特徴

MMMの特徴
MMMには、マーケティング活動に利用した施策の効果を数値として表し、可視化できるようにするという特徴があります。これによって、本来はわかりづらい広告のマーケティングへの貢献度が捉えやすくなります。このほかにも、MMMには以下のような4つの特徴があるので順に見ていきましょう。

数学的処理が必要

MMMによる分析では、数学的処理が必ず用いられるという特徴があります。例えば、重回帰分析や因子分析を用いた構造方程式モデリングです。これは社会科学や行動科学にも用いられる手法で、観測される「顕在変数」と観測できない「潜在変数」を分析データに入力することで、マーケティング活動の施策が互いにどのように影響を与えあっているかを推定します。また、複雑な計算を扱いやすくするために、MMMでは分析ソフトや専用ツールが積極的に使われています。

異なるデータの蓄積

統計的な手法を用いるといっても、類似するデータだけではMMMでモデルを作成できません。MMMでは異なる種類のデータを対比して分析する必要があるからです。そのため、異なるデータの蓄積はMMMにとって欠かせない特徴となっています。また、正確に分析し推論を立てるためには、そのデータの粒度も細かくなければなりません。

マーケティング活動をMMMで分析するなら、次のデータは日次で取得するようにしましょう。まず、サービスごとのアクセス量です。製品やサービスにどれだけのアクセスがあり、何件がアクセスから販売につながったのかを示すデータです。次にマーケティング活動で利用した媒体のインプレッションやリーチ量のデータを取っておく必要があります。もちろん、媒体に支払ったコストのデータも取らなければなりません。

このほかに、顧客や販売店の地理情報、気候や季節を示す情報、マーケティング活動をした時期の経済データなども利用します。特定のキャンペーンをした場合には、その情報も必要です。製品の販売総数や売上金についてのデータも使います。

施策の相互効果を検討する

マーケティング活動に複数の施策を用いた場合、MMMは施策の相互間の影響を検討し、モデル化するという特徴があります。

オフライン広告に新聞広告とTVCMを、オンライン広告としてターゲティング広告を出した場合を例にして考えてみましょう。この場合、それぞれが広告としての誘因効果を持つだけでなく、互いの広告を後押しする効果が生まれます。新聞広告やTVCMを見た後で、オンライン広告が表示されたときのクリック率が高くなっているのであれば、それは相互効果があった証左といえるでしょう。そこでMMMではこの相互効果をわかりやすくするために、ほかの広告がなくとも単体で獲得できた結果を「ベース」とし、ほかの広告の影響で獲得できた結果を「インクリメント」として、それぞれを分けて数値化します。

過去の事例を参考にする

マーケティング活動に用いた施策の情報以外もMMMは分析の材料として用います。なかでもマーケティングや広告についての過去の事例を評価・分析してモデリングに利用するのは、MMMの目立った特徴といえるでしょう。過去にどのような製品(Product)が、幾らで(Price)で、どこで(Place)、どんなプロモーション(Promotion)を通して販売されたのかというマーケティングの4Pの記録は、MMMにとって大変重要な情報です。これらの情報を利用してMMMではモデルを最適化していくからです。

また、時としてマーケティング活動は、予想も付かない要件によって、予定していた目標から大きく結果が逸れてしまう場合があります。それが自然活動なのか、あるいは国家間の争いなのかはわかりません。ですがMMMではそのような外部要因を含めて、分析ができます。マーケティング活動が思いもよらない外部要件によって失敗に終わった場合でも、外部要因を除いた結果を数値化して捉えることも可能です。

「4C」と「4P」とは

「4C」と「4P」とは

マーケティングミックスは、「4P」と「4C」という構成要素から成り立っています。では、「4P」と「4C」とは何を指す言葉なのでしょうか?その意味を確認していきましょう。

「4P」とは?

「4P」とは、マーケティングミックスの構成要素である「Product(製品)」・「Price(価格)」・「Place(流通)」・「Promotion(プロモーション)」の頭文字を取った言葉。それぞれの意味合いについて、以下にまとめました。
 
【Product(製品)】
企業が生産している、製品やサービスのこと。Product(製品)のPが、マーケティングミックスにおいて第一のPとなっており、4つの構成要素の中でも特に重要な存在として扱われています。
Product(製品)には、製品コンセプトを実現するためのパッケージ案や技術、デザイン、品質、アフターサポートなどさまざまな要素が含まれています。
 
【Price(価格)】
企業が生産した製品に対して、顧客が支払う対価のこと。Price(価格)は売上に直結する要素であり、変動費と固定費から見るコストや顧客の持つ価値相場観、ライバルブランドとの比較、ブランド戦略などの観点から策定していきます。
 
【Place(流通)】
顧客と製品とを結ぶ経路(チャネル)のこと。Place(流通)は、「どこで製品を販売するのか」ということだけに限らず、顧客と製品とが結びつくまでの経路(チャネル)や供給流量なども含んでいます。
Place(流通)のPがあって初めて顧客と製品とがつながるため、売上アップにも直結する重要な要因の一つです。
 
【Promotion(プロモーション)】
広告や宣伝にまつわるプロモーション戦略のこと。Promotion(プロモーション)は、製品を顧客に購入してもらうために重要な役割を果たすものです。
マス広告やSNS広告、キャンペーンなど、プロモーションの手法は多岐に渡ります。顧客の購買意識に変化をもたらし、製品の購入へとつなげるためにもPromotion(プロモーション)による顧客とのコミュニケーションが大切です。

「4C」とは?

企業側の視点から実施される「4P」に対して、「4C」は顧客側の視点から4Pを見直したもの。「Customer Value(顧客価値)」・「Cost(顧客側の経費)」・「Communication(顧客と企業のコミュニケーション)」・「Convenience(顧客の利便性)」の頭文字を取って、「4C」と呼ばれています。それぞれの意味合いについて、以下にまとめました。
 
【Customer Value(顧客価値)】
4Pにおける「Product(製品)」と対になるのが、「Customer Value(顧客価値)」。顧客を対象とした製品やサービスから感じ取ることができる、価値観のことを指します。
顧客側の視点で製品やサービスを見たとき、その製品やサービスに対してどのような価値があるのかを考えるための要素です。
 
【Cost(顧客側の経費)】
4Pにおける「Price(価格)」と対になるのが、「Cost(顧客側の経費)」。製品やサービスのために顧客が支払う対価のことです。
製品やサービスを手に入れるために支払うお金だけでなく、その製品やサービスを購入するために支払った交通費や移動の時間なども、Costに含まれます。
 
【Communication(顧客と企業のコミュニケーション)】
4Pにおける「Promotion(プロモーション)」と対になるのが、「Communication(顧客と企業のコミュニケーション)」。その単語のとおり、顧客と企業のコミュニケーションのことを指し、製品と顧客との接点の部分にあたります。
対面でのコミュニケーションやイベント、SNSなどによる発信はもちろん、カスタマーセンターなど顧客側からの問い合わせ対応も含まれます。
 
【Convenience(顧客の利便性)】
4Pにおける「Place(流通)」と対になるのが、「Convenience(顧客の利便性)」。これは、製品やサービスを購入する際の利便性にあたる要素です。
製品やサービスを購入する場所や購入にかかる時間、購入できるエリアの範囲をはじめ、Webで該当の製品・サービスを検索した際の見つけやすさや、決済に関する利便性なども含まれます。

MMMの活用方法

MMMの活用事例
海外ではプロモーションの有用性を重視する企業が多いため、MMMを導入する企業は珍しくありません。特にプロモーションに力を入れる傾向が強いアメリカでは、多くの企業が積極的にMMMを導入しています。これに対して日本では、MMMの導入に対して積極的でなく、それどころか導入している企業はほとんどありません。そのため、日本におけるMMMの事例はあまり多く公開されていません。しかし、近頃ではMMMの有用性の認知が徐々に広まっているので、これから導入に踏み切る企業は増えていくことでしょう。以下では限られた事例の中から、有用なものを2つ紹介します。

KPI(重要業績評価指数 Key Performance Indicator)の見直しにMMMを利用

MMMは必ずしもメディア・ミックスの見直しによって、直接に業績をアップさせるだけに使われるものではありません。情報キュレーションサービスを展開する会社が導入した事例では、KPIの見直しにMMMが用いられました。この会社ではマーケティング活動の成果を、デジタル広告・オフライン広告で分け、その費用対効果をMMMで明確にすることによって、KPIを是正したそうです。また、同時に広告費配分の最適化がなされました。

MMMを利用して予算の設定

多くの媒体を利用し地域ごとに違ったキャンペーンを展開している場合、その予算の策定は簡単ではありません。そこでキャンペーンを打ち出した会社は、予算策定をスムーズに進めるためにMMMを利用しました。MMMによってマーケティングが目指す結果ごとにモデルを作りあげれば、キャンペーンや媒体利用に必要な予算を明確にすることが可能です。また、施策で行ったキャンペーンを分析することで、地域ごとに異なる活動をしたとしても、それぞれのキャンペーンが結果にどのような影響を与えたのか明確にできます。

MMMの活用事例

スターバックスコーヒー

世界的なコーヒーチェーン店として知られるスターバックスコーヒーは、マーケティングミックスの事例の中でも最初に紹介されるケースが多く、有名な成功例として知られていいます。スターバックスが重視したのは、「単にコーヒーを売る店にしない」ということ。顧客にとって居心地の良い空間作りに重きを置き、“サードプレイス”として存在することを重視しました。

結果、コーヒー1杯300円という少し高めの値段設定であっても、業界内で確固たる地位を築くことに成功。企業側からのプロモーションを行わずとも、口コミやSNSなどで自然と店舗の情報が拡散されるなど、マーケティングミックスの効果が如実に表れています。

ニトリ

1967年に創業した「似鳥家具店」から成長を遂げ、今や人々の生活に浸透している「ニトリ」。ニトリも、マーケティングミックスに成功した企業の一つです。今や全国に400店舗以上を展開する大きな企業となりましたが、そんなニトリにも低迷の時代があり、低迷期から脱出するためにマーケティングミックスが活用されました。

ニトリの特徴は、ユーザーのニーズをくみ取った商品ラインナップとリーズナブルな価格設定。CMで流れている「お、値段以上」というフレーズの体現に成功しており、ブランドの確立につながりました。

商品の流通に関しては、店舗販売とオンラインストアが柱。郊外には大型店舗が配置されており、大型店舗に行けば全てそろうというのもニトリの魅力だと言えます。また、販売促進のためのトータルコーディネート例展示も、ニトリのマーケティングミックスにおけるカギの一つ。顧客の“まとめ買い欲”と掻き立てることにつながり、売上アップに貢献しています。ターゲットを絞ってマーケティングを行うことで、IKEAにも引けを取らない売上を実現。マーケティングミックスの成功事例としても、有名なケースです。

まとめ

MMMとはマーケティングに関するデータを分析してモデル化する考え方です。従来の統計的アプローチでは比較検討が難しかった事柄であっても、MMMを使えば推論を立てられるようになります。導入事例では、KPIの見直しやマーケティング予算の算定にMMMが用いられた事例があります。しかし、海外では一般的なMMMですが、日本では導入が進んでいません。もし、他社よりも一歩先を目指すのならMMMの導入を検討してみるとよいでしょう。

この記事の監修者:冨塚辰

この記事の監修者:冨塚辰

Fabeee株式会社のデータサイエンティスト。 広告代理店でオン・オフ問わずプロモーション領域を中心にプロデューサー、制作ディレクターとして国内・外資、幅広い業界のクライアントを担当。
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