クッキーレスの時代に注目されるMMMとは?

2022.07.06

2022.07.06

マーケティング

クッキーレスの時代に注目されるMMMとは?

「ユーザー」に軸をおいたこれまでの分析手法

「ユーザー」に軸をおいたこれまでの分析手法
人々のライフスタイルが多様化し、変化のスピードが激しい現代社会では、ユーザーに軸を置いたマーケティング分析が盛んにおこなわれてきました。では、これまでどんな分析方法が功を奏してきたのでしょうか。

行動トレンド分析

ユーザーに視点を置いた分析方法の一つが行動トレンド分析で、過去の購買傾向から今後の購買率を考える分析手法です。例えば、アパレルメーカーなど、季節ごとに商品を展開する業界では、行動トレンド分析を行うことで、次のシーズンのユーザーのニーズをつかみ、過不足なく商品を提供する体制の構築に役立ちます。売れる商品と売れない商品をあらかじめ予測し、適正在庫や経費削減に資する働きをしてきたのが、行動トレンド分析といえます。

セグメンテーション分析

セグメンテーション分析も、ユーザーに軸を置いた分析でよく使われる手法です。自社で獲得しているユーザーの共通項を洗い出して、ターゲットとなるユーザー像を作成し、その傾向をもとにビジネス展開していくというものです。居住地や年齢、趣向や行動パターンなどの属性ごとにグルーピングすると、それぞれのグループごとの方向性がつかめます。中でも、売上・利用頻度ともに高いユーザー層を特定し、その傾向を細かく分析すると、高い効果が期待できます。逆に、一人当たりの売上も利用の回数も少ないユーザーを分析し、他のグループと比較すると、より効果が見込めるアプローチ方法の開発に役立ちます。

RFM分析

RFM分析は、直近購入日(Recency)・購入頻度(Frequency)・購入金額(Monetary)の3つの指標を使ってユーザーをグルーピングし、分析する手法です。それぞれの指標に重みづけをすると適切なグルーピングができ、分析結果から考察されたアプローチの効果が大きくなります。指標の重みづけですが、最終購入日が近い、購入頻度が高い、これまでの購入金額が大きい顧客が優良顧客と位置付けられます。RFM分析は、各顧客グループに合わせ、長いスパンで展開するマーケティング戦略を立てるうえで効果を上げてきました。

デシル分析

ラテン語で10等分を意味するデシル分析は、購入金額を高い順に10のグループに分け、それぞれのグループの購買データから、顧客の傾向を読み解く手法です。各ユーザーの購入金額のみを分析に使うため、精度が低くなる懸念点はありますが、比較的簡単にデータが用意でき、分析に時間を要さないのがメリットです。各グループの傾向を踏まえ、継続して購買を促す戦略や、他社への乗り換えを防ぐアプローチの仕方を検討できる点が、デシル分析を利用する良さといえるでしょう。

プライバシー情報の取り扱い制限によってこれまでの分析ができなくなる?
プライバシー情報の取り扱い制限によってこれまでの分析ができなくなる?
ユーザーに軸を置いたマーケティング分析ですが、プライバシー情報の取り扱い制限により、今までの方法が使えなくなる懸念が出てきています。この点は、マーケティングに必要な情報収集の仕組みをおさえておくと、理解が増すはずです。

ユーザーに軸を置いた分析手法には、当然のことながら分析のもととなる情報が必要です。分析のベースとなる情報は、インターネットの普及により、以前よりも効率よく得られるようになりました。ユーザー分析に必要な情報は、Cookieを利用すると比較的容易に手に入ります。Cookieは、ウェブサイトなどにアクセスした情報を閲覧ソフトであるブラウザに一時的に保存する仕組みで、ユーザーにとっては情報入力の手間を省略できるなど、利便性が高くなるメリットがあります。一方、企業は、ユーザーがCookieをもとに自社のウェブサイトを開くと、自社サーバーにCookieが送られ、そのCookieを読み取ることでユーザーの個人情報を入手し、分析に利用できます。

ユーザーの分析に役立つCookieは、「1st Party Cookie」と「3rd Party Cookie」の2種類に分けられます。1st Party Cookieは、ユーザーが直接訪れたウェブサイトなどのCookieを表し、3rd Party Cookieは、訪問したサイト以外のCookieを指します。3rd Party Cookieは、ウェブサイトに掲載される広告が紐づいていることが多く、ユーザーのブラウザには閲覧したという認識がないサイトのCookieが保存されることになります。企業側の視点で考えると、自社サイトなどで得られる1st Party Cookieの情報は限定的ですが、3rd Party Cookieからは幅広い情報が得られ、マーケティング分析の正確性を上げるのに役立ちます。

ユーザーに軸を置いた分析に欠かせないCookieのうち、3rd Party Cookieは、プライバシー保護の観点から利用に大きな制限が課されるようになっています。こちらではCookie規制の動向を取り上げますが、Cookie規制のポイントを理解すると、今後のマーケティングの在り方が展望できるに違いありません。

GDPR

2018年5月からEUで施行されている法律に、GDPRがあります。GDPRは「General Data Protection Regulation」の頭文字がとられた言葉で、日本語では「一般データ保護規則」と表現されます。EUでは、1995年からデータ保護の法律が施行されていましたが、さらに踏み込んだ形となったのがGDPRです。GDPRでは、IPアドレスに加え今まで個人情報とされなかったCookieが、新たに個人情報として認識されています。Cookieが個人情報とみなされたことで、Cookieを取得する企業は自らの情報や連絡先、Cookieの利用目的や第三者に提供するかどうかに加え、Cookieの保管期間などについて、ユーザーにあらかじめ同意を得る必要があります。

GDPRの施行により、企業側の負担も増しています。GDPRでは個人情報を大量に扱う企業に対して、中立の立場で個人情報の取扱いをアドバイスする「データ保護オフィサー」を配置することを求めています。罰則規定も強化されています。GDPRでは他国の企業であっても、EUに子会社や支店、営業所などを置いていたり、EU内に商品やサービスを提供している企業は対象とされるため、グローバルに取引を行う日本企業も自分事として考える必要があるでしょう。

CCPA

CCPAは「California Consumer Privacy Act」の頭文字をとった言葉で、日本語に訳すと「カリフォルニア州消費者プライバシー法」となります。アメリカ・カリフォルニア州で2020年から運用が開始された法律で、テクノロジーの進歩に合わせた個人情報保護の考え方が取り入れられています。CCPAでは、個人を識別できる氏名や住所、電話番号や社会保障番号とともに、IPアドレスやメールアドレス、アカウント名に加え、Cookieも個人情報としています。さらに、条文に記載されていない情報も対象になりうると述べ、個人情報の範囲の拡張性を示唆しています。

CCPAでは、ユーザーが個人情報を収集する企業の理由を知る権利や、個人情報の削除要求ができる権利を強化しており、IT産業が盛んなカリフォルニア州で規定された意味は大きいといえます。プライバシー保護に積極的に取り組む姿勢が企業に求められています。

MMMは「ユーザー」を軸に置かないので今後も活用できる分析手法

MMMは「ユーザー」を軸に置かないので今後も活用できる分析手法
マーケティング分析は、企業の事業展開や宣伝戦略に欠かせないものとなっています。3rd Party Cookie規制の流れを受け、代替手段を考えておきたいマーケティング担当者は少なくないことでしょう。新たなマーケティング分析手法として役立つものの一つが、MMMです。

MMMは「Marketing Mix Modeling」の頭文字をとった略語で、自社のマーケティング手法最適化と言い換えることができます。MMMにおいてメインで利用する情報は、広告媒体の出稿データです。これには、広告が表示される回数であるインプレッション数、実際に広告にアクセスした数であるクリック数、広告掲載期間と期間中の売上高などが含まれ、ユーザーに軸を置かない情報が分析に用いられます。さらに、これまでの販売実績や競合他社のデータ、販売に影響を与える外的要因として気候や曜日などの情報も含めることができるでしょう。

自社で収集できる情報に加え、信頼に足る外部データを取り入れることで、昨今の個人情報保護の対象となる3rd Party Cookieを排除したとしても、正確かつ多角的な分析が可能になるはずです。
 
■mmmについて知りたい方はこちら

【まとめ】Cookie規制を考慮したマーケティングの重要性

Cookie規制を考慮したマーケティングの重要性
インターネットが普及し、得られる情報を分析できるツールが開発されたことで、Cookieを使ったユーザー分析が企業の成長を後押ししてきました。しかし、欧米で施行されているGDPRやCCPAでは、Cookieが個人情報と位置付けられ規制が強化されているため、同様の方法を使い続けることは難しくなるかもしれません。規制対象の3rd Party Cookieを使わないMMMなどの手法を検討することが、企業に求められています。

この記事の監修者:冨塚辰

この記事の監修者:冨塚辰

Fabeee株式会社のデータサイエンティスト。 広告代理店でオン・オフ問わずプロモーション領域を中心にプロデューサー、制作ディレクターとして国内・外資、幅広い業界のクライアントを担当。
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