投稿日 2023.11.21

最終更新日 2023.11.21

不動産DXと業務効率化とは?成功事例を踏まえて分かりやすく解説

不動産DXと業務効率化とは?成功事例を踏まえて分かりやすく解説

不動産業界の現状と課題

様々な業界でDXが進められている中、不動産業界はどのような状況になっているのでしょうか。
元々、日本は海外に比べるとデジタル面では遅れ気味と言われています。中でも、不動産業界は営業や業務にアナログ文化が多く残されている業界の一つであり、DXの導入が容易ではありません。例えば、連絡は本人確認のため、あるいは誤送信を防ぐために電話で行うことがほとんどですし、建物図面や各種契約書、重要事項説明書などの資料はファックスでやり取りをすることが多いです。内見の案内や重要事項の説明などは対面で行いますが、高額の取引になるため、回数も多くなるでしょう。
中でも、地方に多い地域密着型の不動産会社では、高齢の社長が家族と事業をしているケースも多く、新しいシステムを導入しても対応しきれない、業務効率化を進めても大幅な変化が期待できない等、DXの取り組みには消極的な状況です。
 
このようにアナログ文化が根強い不動産業界において、どのような課題が考えられるでしょうか。
まず、超高齢化社会が進む日本では、今後市場の需要が減少すると考えられています。物件の売買・賃貸共に不動産業界の規模は縮小傾向となるでしょう。
加えて、労働者の人口が不足することも避けられません。現状でも不動産業界は作業量が膨大で、残業時間が多いことが問題になっています。今後従業員の数が減ることにより、さらに業務の負担が大きくなるでしょう。その結果、離職率が増える可能性も考えられます。
さらに、高額の取引において、新たにシステムを導入することへの不安もあります。大掛かりなシステム変更を行っている間、本業が滞ることも大きなリスクとなるでしょう。このような現状や不動産業界特有の問題点を踏まえ、どのようにDX化を進めていくかが今後の課題となります。

業務プロセスのデジタル化と自動化

不動産業界でDXに取り組む場合、業務の負担を減らすためにプロセスのデジタル化と自動化を進める必要があります。もちろん、要所ではアナログな対応も必要ですが、導入が可能な部分だけでもデジタル化することで、通常業務の負担が大幅に軽減されるでしょう。
例えば、契約書類を電子化する程度ならば、現状から大幅に変える必要もなく、精神的なハードルも低いです。なお、2022年5月に改正宅地建物取引業法が施行され、不動産の取引に関する書類の電子化が可能になっています。中には、基本的な書式がテンプレートとして内蔵されており、必要事項を入力するだけで、書類の分類や取引先への送信などが簡単にできるシステムもあります。各種資料の作成や対面の営業、書類の整理といった業務の負担軽減に大いに役立つでしょう。
 
また、今までは社員が同伴して現地に直接出向いていた内見や内覧も、VR(仮想現実)空間を活用して、オンラインで行うことが可能です。物件に関する相談や打ち合わせもオンラインで行うことにより、互いに現地まで出向く負担を軽減できます。
他にも、よくある問い合わせに関してはあらかじめ登録しておいた回答を自動で行い、個別の対応が必要な時にはオペレーターにつなぐことが可能なチャットボットなどを導入することで、自動応答ならば24時間365日いつでも対応でき、従業員は対応の件数を大幅に減らせるといったメリットが得られます。利用者の立場からすれば、いつでも簡単に必要な情報を収集できるため、満足度も高まるでしょう。

データ分析と意思決定の支援

DXを進めることにより、データ分析や意思決定が容易になるといったメリットもあります。不動産業界は、膨大なデータから不動産の相場を把握する必要がありますので、この部分を自動化することで大きな負担軽減となるでしょう。
例えば、査定の際にAIを導入すれば、指定した期間内で実際に行われた物件取引情報を抽出し、適切な査定金額を短期間で算出することが可能です。
ビッグデータを分析することで、不動産投資をする際の予測や顧客データを利用した業務の効率化なども期待できるでしょう。顧客行動を分析し、より使い勝手の良い自社サイトを作ることも可能です。
 
これらのデータ分析は、ビジネスにおいて意思決定をする際の基準としても非常に重要です。不動産業界では、市場のニーズや消費者の動向をいち早く察知して、様々な判断をしなければなりません。データ分析を簡単に行える環境を手に入れることで、その判断基準として客観的なデータを入手できますので、短期間に有効な判断をしやすくなります。従来、不動産業界では意思決定を長年の経験則から導き出していましたが、より膨大なデータ分析を短期間で行うことで、意思決定のスピードを上げるだけではなく、精度や確実性といった質の向上、リスクの軽減などが期待できるでしょう。

賃貸不動産DXの業務効率化の成功事例

不動産業のDX導入は難易度が高いといわれていますが、実際に賃貸不動産の取引にDXを取り入れて業務効率化を行った成功事例について見ていきましょう。

野村不動産

不動産管理事業を行っている野村不動産パートナーズ株式会社は、1万戸を超える賃貸物件を管理しています。細やかな対応が必要な部分についてはアナログの良さを取り入れつつ、ルーティーンワークはツールを導入して自動化を図りました。データの転記やメールの印刷などを自動化することで、マンパワーで行っていた作業を大幅に短縮でき、結果的に人為的なミスの予防、生産性の向上につながっています。

三井不動産

不動産事業の中でも老舗である三井不動産株式会社は、社内にDX本部を設置して積極的に様々な施策に取り組んでいます。IT技術職専門の人材を採用して、2025年を目安に事業変革や働き方改革、推進基盤の観点からDX化を進めており、最終的には年間5万時間を超える業務量の削減が期待できるという見込みです。部分的な変革ではなく、会計システムのクラウド化や全書類の電子化など、多角的にDX化を進めているため、導入が完了した暁には事業全体が円滑に進められるようになるでしょう。

東急不動産

東急不動産ホールディングス株式会社は、DXの推進や支援を行うために別途会社を設立し、AIを利用した価格査定、資金の効率的な投資、デジタル化による人材の活用などを目指しています。既に、年間1万5000時間以上の作業量削減を実現しました。
 
Fabeee株式会社ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援をしております。お客様と伴奏してサポートいたします。製造業、不動産、自治体など幅広い業界において、DXの実績を持ち、お客様のビジョンを実現するお手伝いをしてきました。事業戦略の策定から新規事業アイデアの創出、開発、実装、そして運用まで、DXプロジェクトのあらゆるフェーズをサポートします。お客様と共に新しいビジネス機会を探求し、戦略的なアドバイスを提供します。貴社の成長戦略を加速し、競争力を高め、持続可能な成功を支えます。
分かりづらいDXを分かりやすくかつ何をしたらいいのかを解説した資料を公開しておりますので是非一読してみてください。

この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。