投稿日 2024.01.22

最終更新日 2024.01.22

賃貸不動産DXで不動産管理業が変化する理由を解説

賃貸不動産DXで不動産管理業が変化する理由を解説

不動産テックとは?

不動産DXと不動産テック

DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略称であり、デジタルテクノロジーの力によって業務効率化や新しいビジネスモデル・価値の創出を目的とした取り組みです。一方不動産テックは「不動産」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語であり、一般社団法人不動産テック協会によって「テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと。」と定義されています。不動産DXと不動産テックはアプローチや目的に共通している部分も多いですが、基本的にDXが既存の企業が取り組むことを前提としているのに対して不動産テックはスタートアップ企業も含んでいるのが相違点です。

また、不動産テックはIT企業とのマッチングやクラウドファンディングの活用など外部との連携も視野に入ります。不動産DXでは業務効率化や競争力向上など、内在的な諸問題に対してデジタルの力を活用することに重きを置いているのが特徴です。課題解決の結果から新しい価値を作り出すのが不動産DX、積極的に革新的なサービス創出に取り組むのが不動産テックであるというイメージを持っておくと良いでしょう。

注目を集めている背景

不動産DXが業界内で注目を集めているのは、不動産業界が抱える様々な課題点に対して有効性が期待されているためです。例えば、不動産業界では長きにわたって「デジタル化の遅れ」が指摘されてきました。不動産業界では物件情報・顧客情報・各種契約書類など紙媒体の資料が多く、ペーパーレス化が進んでいないという実情があります。特に「宅地建物取引業法」の第35条で規定された宅地建物取引主任者の口頭および書面における重要事項説明は、デジタルツールによる非対面式接客の妨げとなっていました。2017年10月から「IT重説」の運用が開始されたことで非対面サービスへの突破口が開かれたものの、不動産業界内では浸透が進まず抜本的な課題解決が求められているのです。

また、時代の移ろいによって不動産サービスに対する顧客のニーズが変化しているというのも、不動産DXの必要性が高まっている大きな要因です。従来の不動産サービスと言えば利用者が不動産業者の店舗に赴き、希望するあるいは紹介してもらった物件の内見に行くというのが通例でした。しかしインターネットの普及やWeb上の各種不動産サービスが展開されるようになったことから、利用者はスマホやPCから膨大な情報を収集できるようになっています。情報は持っているものの「時間を有効活用したい」「遠方への内見が難しい」といった利用者のニーズに応えるには、不動産業者側でデジタル化を進めなければなりません。

デジタル化で不動産管理業が業務効率化できる

不動産DXは現場のアナログ業務をデジタルへ移行することによって、業務の効率化・自動化を実現可能です。例えば書類作成1つを取ってみても、デジタルツールであれば管理や修正が容易となるため作業時間の削減が期待できます。クラウドシステムや社内コミュニケーションツールなどを活用すれば、部署間・支社間での情報共有がスムーズになるでしょう。多くの顧客情報や物件データを蓄積する賃貸管理業務において、データの管理・運用は生命線とも言えるべきポイントです。DXツールを開発しているメーカーからは不動産情報の管理に特化したシステムもリリースされているため、こうしたデジタルツールを積極的に活用してみてください。

顧客対応という観点から見ると、チャットボットや電話自動応答システムの導入も効果的です。自社の営業時間外でもこうしたシステムで顧客からの問い合わせに対応できるようにしておけば、機会損失を防いで契約数アップが見込めます。また、不動産DXによる業務効率化や自動化は手作業で引き起こされる入力ミスやヒューマンエラーの予防にも効果的です。余計な修正作業が必要なくなれば残業時間削減や人件費抑制にも繋がります。限られた人的リソースで効率的に仕事を回せるようになるため、人材不足への対策としても不動産DXは注目されているのです。働きやすい環境には人材が定着しやすく、離職率低下や働き方改革の下地作りにも有効となります。さらに効率化された業務は顧客へ提供するサービスの品質向上にも反映され、ひいては顧客満足度も向上していくでしょう。

不動産管理業が業務効率化できるサービス

ノマドクラウド

イタンジ株式会社の「ノマドクラウド」は全国で累計2,000店舗の導入実績がある、不動産仲介会社向けの顧客管理・業務改善クラウドシステムとなっています。外部の不動産情報サイトとの連携機能が備わっており、顧客のニーズにマッチした物件をスムーズに紹介可能です。即決に至らなかった顧客へのメール配信や顧客関係管理(CRM)など、仲介業務を効率化させて売上アップに繋げるための機能が豊富に搭載されています。

いえらぶCLOUD

導入実績15,000社以上を誇る業界大手とも言える「いえらぶCLOUD」は、株式会社いえらぶGROUPが運営・提供しています。オールインワン型と言われる同製品では、顧客情報管理や追客といった基本的な機能の他にもホームページ作成・チラシ作成・入出金管理・空室対策など多岐におよび業務をサポートしているのがポイントです。初めてのDXツール導入で製品選びに迷っている場合におすすめですが、多機能さに惑わされず必要な部分から段階的に導入していくようにしましょう。

賃貸名人

管理業務のDXに注力したい場合は、株式会社ダンゴネットが提供する「賃貸名人」をチェックしてみてください。賃貸管理システムのパイオニアとして知られる同社のノウハウが惜しげもなく投入されたツールであり、全国で5,500社以上の導入実績を誇ります。各種契約書・収支報告書・出頭帳票といった煩雑な書類作成を効率化させるとともに、顧客からの問い合わせ・入金管理・更新手続きなどの重要業務もカバーしているので安心です。運営体制に強みがあり、最新版への随時アップデートや専用コールセンターによる手厚いサポートも魅力となっています。

不動産管理業が業務効率化した事例

三井不動産

業界大手として知られる三井不動産では、DX本部を設置して社内全体でDX化に取り組むなど本格的な動きを見せました。様々な施策が講じられていますが、基幹系システムのすべてをクラウド化した上でモバイルワークと組み合わせ、年間5万8千時間の業務量削減を見込んでいます。同社では決裁・会計システムの刷新にも注力しており、クラウド化とペーパーレス化によって会計業務の約35%を削減することに成功しました。こうした取り組みは高く評価され、経済産業省による「DX銘柄2022」に選出されています。

上総屋不動産株式会社

茨城県つくば市・土浦市を中心に展開している上総屋不動産株式会社では、顧客からの電話対応における取次ぎミス・聞き取りミスが課題とされていました。問い合わせ内容をエクセルに起こして管理するなどアナログ作業も多く、正確性向上と効率化が求められていたのです。そこで同社では通話自動録音・音声テキスト化・発着信履歴・顧客情報管理・SMS発信などがパッケージングされたCTIツールを導入しました。その結果、従業員の負担軽減と対応品質向上の双方に成功しています。

あいホーム

宮城県に本拠地を置く不動産業者のあいホームも、早くから本格的なDX化に取り組んだ事例で有名です。同社では書面の電子化・リモート接客・SNSを利用した採用活動を通じて従業員の働きやすさを改善、新規人材の獲得にも成功しています。また、展示場のVR化によってリモート環境での内見サービスを構築し、契約数128%増という大きな成果を上げました。

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この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。