不動産テックとは?最新トレンド(AI、IoT、AR)のビジネス活用を分かりやすく解説

2023.10.26

2023.10.26

DXのあるべき姿を考える

不動産テックとは?最新トレンド(AI、IoT、AR)のビジネス活用を分かりやすく解説

不動産のテックとは?

まずは不動産テックへの理解を深める土台として、基礎的な知識を以下に紹介します。

不動産テックの意味

テックとは「テクノロジー」を略したもので、不動産テックは「テクノロジーによって不動産業界における慣例的な商習慣の改革、および課題の解決を試みる仕組み」を意味する造語です。不動産は英語で「Real Estate」、資産は「Property」なので「リーテック」「プロップテック」といった別名もあります。不動産業界では既に物件情報を紹介するWebサイトの運営などが一般的になっていますが、不動産テックの取り組みはその一歩先を行く「新しい価値やサービスの創出」が目的です。不動産テックが利用されている事業カテゴリーは、一般社団法人不動産テック協会によって以下の12種類に分類されています。

  • 不動産情報
  • 仲介業務支援
  • 管理業務支援
  • 価格の可視化、査定
  • ローン、保証
  • AR、VR
  • IoT
  • メディア、プラットフォーム
  • リフォーム、リノベーション
  • クラウドファンディング
  • マッチング
  • スペースシェアリング
    • 市場規模の成長

      不動産テックが台頭し始めたのは2010年頃のアメリカと言われています。ビジネスモデルが確立されるとアメリカの不動産テック市場は急速に拡大し、2014年には不動産テック関連のベンチャー企業による累計資金調達額が10億ドルを突破したのです。2016年になると本格的にサービスの多角化が進み、市場は年間200兆円規模まで成長を遂げました。不動産テック隆盛の流れはアジア圏にも波及しており、中でも中国における市場拡大が顕著です。2016年には中国の不動産テック市場で草分け的な存在のHomelink社が、評価額10億ドル以上のユニコーン企業となりました。
       
      海外に遅れを取っているものの、日本においても不動産テックの導入・認知が徐々に進んでいます。中国の不動産テック市場が活性化を見せていた2017年の調査(一般社団法人不動産テック協会「不動産テックカオスマップ」)によると、この年の国内における不動産テックサービス数は約80件と小規模なものでした。しかし2019年に国内初となる不動産テック特化型のファンドが設立され、2021年7月に発表されたカオスマップの第7版では446件のサービスが確認されています。

      日本の不動産業界における課題点

      不動産テックへの理解を深めるためには、日本の不動産業界が抱える「3つの課題」についても知っておくことが大切です。まず真っ先に挙げられることの多い課題は「デジタル化の遅れ」と言われています。デジタル化は業界を問わず各企業において喫緊の課題とされていますが、不動産業界では「宅地建物取引業法」の存在が障害となりました。同法では不動産契約の際、主任者が主任証を提示した後に「口頭」と「書面」によって契約上の重要事項を説明することを義務付けています。したがって不動産業界では対面での契約を重視する風土が抜けず、オンラインでの契約実現が進まずにいたのです。2017年になって国土交通省が「IT重説」の運用を開始したため、オンライン上で非対面式の重要事項説明が可能となりました。2019年からは電子署名サービスの普及を視野に入れた社会実験が行われていますが、2023年時点でデジタル化による業務効率化やサービス利便性の向上は十分に達成されていないのが実情です。
       
      日本の不動産業界では「情報の不透明性」も大きな課題とされています。通常、モノの売買契約においては「売り手」と「買い手」の双方がそれぞれ十分な情報を持っている状態がベストです。ところが日本の不動産市場では仲介業者が持つ情報量の方が多く、入居希望者や売却希望のオーナーが契約において不利とされています。不動産業界では業者のみが閲覧できる「レインズ」と呼ばれる情報ネットワークが存在するため、必然的に情報量の偏りが発生していました。

      3つ目の課題は「不動産データベースの不備」です。不動産業界で運用されているデータベースには「取引履歴」「維持・管理状況」「リフォーム歴」「成約価格」といった情報が集約されておらず、信頼度が特に重要な要素となる中古物件の流通が滞っていました。その結果、総務省による「平成30年住宅・土地統計調査」では国内の空き家数約849万戸・空き家率13.6%という過去最高数値が算出されたのです。

      不動産テックによってもたらされるメリット

      上記のように大きな課題を抱えている不動産業界ですが、不動産テックの普及はその解決にも効果的なメリットが期待されています。例えば不動産テックを活用すれば「情報の一元的管理」が実現可能です。不動産テックによるデジタル化で物件データを一箇所に集約・公開することで、消費者側にも必要な情報が行き渡るようになり情報の透明性が向上します。さらに業者側でも情報の管理運用が効率化されるため、特定の担当者への業務属人化防止が期待できるでしょう。
       
      不動産テックでは業者側の業務をデジタル化・自動化する方向性が打ち出されているため、業務効率化に大きな期待が寄せられています。紙ベースの文化が根強い不動産業界では定型的な書類作成業務も多いですが、不動産テックによって自動化・ペーパーレス化が進めば作業時間短縮や管理効率化が実現するでしょう。よくある質問などはチャットボットやFAQの活用で無人化することも可能です。浮いた時間や人的リソースをコア業務に回せば、社内全体の生産性や業績の底上げに繋がります。
       
      また、不動産テックでは物件の内覧や契約手続きのオンラインが推進されています。仲介業者側が現地に人を派遣する手間が省けるだけでなく、契約希望者も自宅に居ながら快適に住まい探しを進めることが可能です。不動産テックによって透明性の高い物件情報が公開されれば、契約希望者が自分で収集できるデータも多くなります。住まい探しは仕事の合間を縫って行うという人が多く、時間や労力が大きな負担となっていました。不動産テックによってこの点が解消されれば契約希望者側の満足度が高まるだけでなく、仲介業者側にも「取引機会の増加」というメリットが期待できるのです。

      不動産テックの最新テクノロジーをご紹介

      不動産テックでは様々な先端テクノロジーが活用されていますが、中でも注目度が高い領域を以下に3つ紹介します。

      AI

      AIは「Artificial Intelligence」の頭文字を取った略称であり、人間の思考を模倣したソフトウェアです。機械学習やディープラーニングといった手法を用いてシステムが学習することで、判断や回答の精度が向上していくという特徴を持っています。条件にマッチした情報のピックアップや顔認証システム、物件の売却額査定といったシーンで活用されることが多い技術です。マーケティングの分野では市場調査にも利用されています。

      IoT

      IoTの正式名称は「Internet of Things」であり、モノとインターネットを結び付けた製品のことを指しています。従来品にインターネットの機能を反映させることで、「新しい価値」を生み出す注目度の高いテクノロジーです。IoTは入居者が直接利用する部分に活用されることが多く、利便性の向上が期待されています。例えばスマホから自宅の施錠・開錠を行えるスマートロック、遠隔操作可能なWebカメラによるオンライン内見やセキュリティ管理などがよく知られているでしょう。

      AR・VR

      ARは「Augmented Reality(拡張現実)」、VRは「Virtual Reality(仮想現実)」を意味する語句です。ARはスマホやタブレットといった端末で映した現実空間に視覚的なデジタル情報を浮かび上がらせる、VRはゴーグルデバイスなどを用いて人間の視覚を仮想空間に落としこむことができます。ARは家具の配置をシミュレーションするアプリ、VRはオンライン内見で室内空間を疑似体験するツールなどに活用されているのです。

      不動産テックのビジネス導入事例をご紹介

      不動産テックはまだまだ推進過程にある取り組みですが、既に以下のような事例が確認されています。

      マンション購入検討サポートサービス(長谷工コーポレーション)

      業界大手の長谷工コーポレーションでは、新築分譲マンションを探す消費者に向けて「マンションFit」と呼ばれるサポートを運用しています。LINEから専用アカウントを友達に追加することで利用可能となり、いくつか質問に回答すると同社のデータベースから条件にマッチする物件情報を紹介してくれるというものです。時間や場所を選ばず営業マンと話す必要もないことから、消費者心理的にハードルが低く自分のペースで住まい探しができるとあって話題を集めました。

      Web会議システムによる成約率向上(野村不動産ソリューションズ株式会社)

      従来の営業スタイルでは直接対面による顧客のニーズ把握が重要視されていましたが、野村不動産ソリューションズではWeb会議システムによってモデルルーム来場前の顧客と接点を設けるスタイルを取り入れました。これによって現地で案内する前から顧客のニーズを把握できるようになったため、営業成約率が1.5倍~2倍に伸びたと報告されています。

      リノベシミュレーションサービス(リノべる株式会社)

      リノベーション事業を展開するリノべる株式会社では、施工希望者が事前に具体的な完成イメージを描くためのオンラインサービス「sugata」をリリースしました。同サービスは4,500件以上の事例(2022年12月時点)から好みのものを選択すると、リノベーションのテイストと家具・設備などが自動的に提案される仕組みです。提案内容は自由にカスタマイズ可能であり、実際にかかるコストも算出してくれます。施工希望者が抱える抽象的なイメージをスピーディに視覚化し、いつでもどこでも理想の住まい計画が立てられるツールとして人気です。

この記事の監修者:阿部雅文

この記事の監修者:阿部雅文

Fabeee株式会社バンソウDX事業部 部長
戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。

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