投稿日 2024.01.18

最終更新日 2024.01.18

不動産業界でブロックチェーンを活用した事例をご紹介

不動産業界でブロックチェーンを活用した事例をご紹介

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンは、特定のデータを、ひとつのブロックという単位としてまとめて、暗号化する仕組みです。ブロックを複数連結させたものを、ブロックチェーンと呼びます。特定のブロックにアクセスするには、連結されている他のブロック情報が必要です。もし、ブロックの内容を変更すると、アクセス用のブロック情報も変わる仕組みになっていて、他のブロックにアクセスできません。つまり、ブロックチェーンの改ざんは不可能です。そのセキュリティ性の高さを活かして、中央サーバーを置かず、複数のコンピュータにブロックを分散させて保管するという構造を作れます。そして、権限を持っている参加者は、誰でも同じブロックデータにアクセスできるのも特徴です。

不動産業界でブロックチェーンをどんな業務で活用できるのか

不動産情報の管理

不動産業界では、建物の間取りや所有者のプロフィールなど、不動産に関する様々な情報を管理しなければいけません。その情報管理業務に、ブロックチェーンを使えます。不動産のあらゆる情報をブロックチェーンとして連結させておくと、一括管理が可能です。不動産に関する情報が必要になった時には、少ない情報を入力するだけで、ブロックチェーンに連結された他の情報をまとめて取得するということができます。

不動産の契約手続き

ブロックチェーンを取り入れると、不動産の売買や賃貸契約などの手続きを、全てオンラインで済ませることも可能になります。本来、不動産の手続きを行う場合、対面でのやり取りが欠かせません。情報の改ざんや、誤入力などのトラブルを防がなければならないからです。取引を行う人がそれぞれ異なる情報を持っていた場合、訴訟などの大問題に発展する恐れがあります。ブロックチェーンであれば、取引に使用するデータは改ざんできず、誤入力の心配もありません。取引を行う人同士が、必ず同じ情報を共有可能です。そのため、オンラインでの取引も問題なく行えます。

送金の手続き業務

ブロックチェーンは、仮想通貨の送金に使用されることが多いです。その仕組みを、不動産売買の契約を結んだ際の送金に応用できます。ブロックチェーンを使用した送金は、金融機関を介さないのが特徴です。送金記録は全て、改ざん不可能なデータとして残ります。そのため、金融機関の仲介なしでも、送金が成立しない、送金記録が紛失するといった問題は起こりません。そして、全ての送金手続きは、オンラインで完結させられます。

不動産業界でブロックチェーンを活用するメリット

手続きがしやすくなる

不動産業界では、数多くの手続きをしなければなりません。ブロックチェーンを導入すれば、その手続きがスムーズになるのがメリットです。従来の方法だと、対面で書類を確認しなければならない手続きであっても、ブロックチェーンを使えばオンラインで済ませられます。端末さえ用意できれば良いので、場所を選ばず、時間帯も特に限定されません。また、ブロックチェーンと連結させていれば、不動産に関する情報も一括で取得できるため、色々なところから情報をかき集める手間を省けるでしょう。

手続きの一部を自動化できる

不動産業界の手続きは、いくつもの手順に分かれている場合が多いです。そのため、手間と時間がかかってしまいます。ブロックチェーンであれば、その手続きの一部を、プログラムによって自動化することが可能です。わざわざ人が作業をしなくても、プログラムが自動で処理を済ませてくれます。手続きに不慣れな顧客であっても、スムーズな手続きを実現できるでしょう。どのような手続きをすれば良いか、顧客に詳しく説明する手間も省けます。

不正が発生するリスクを抑えられる

不動産業界では、高額な不動産を使った取引が行われるため、データを有利な内容に書き換えるなど、悪質な方法で得をしようとする人が現れる恐れがあります。けれど、ブロックチェーンを用いた取引では、改ざんができません。また、取引関係者など、限られた人にのみデータが見えるようにすることも可能です。よって、不正が発生する可能性を、大幅に下げられるでしょう。

顧客の信用を得やすい

不動産業界では、不動産会社のみが閲覧できる情報が多く、不動産会社と顧客の間で、取得している情報量の差が大きくなりやすいです。その結果、顧客が不信感を抱いてしまう恐れがあります。そこで、ブロックチェーンを導入し、誰でも情報を閲覧できるようにすれば、不動産会社と顧客の情報格差を少なくできます。そうして、顧客に信用してもらいやすくなるでしょう。

情報の紛失リスクが下がる

ブロックチェーンは、複数のコンピュータに、データを分散させて保存するという特徴があります。そのため、一部のコンピュータがトラブルなどによって破損してしまったとしても、残りのコンピュータにデータは残ります。そうして、取引に関する情報や顧客の個人情報など、重要なデータが紛失してしまうリスクを下げられるのもメリットです。

不動産業界でブロックチェーンを活用した事例

積水ハウス株式会社

不動産の大手である積水ハウス株式会社は、賃貸住宅の入居手続きのために、ブロックチェーンを導入しています。賃貸への入居時には、賃貸契約の他に、様々なインフラ契約が必要です。そして、契約ごとに、個人情報を入力するなど、面倒な手続きをしなければなりません。そのやり取りが、ブロックチェーンによって簡素化されています。個人情報などのデータを、保険会社やエネルギー会社がアクセスできる、ブロックチェーンに連結する形です。そうすることで、契約ごとに、毎回全ての情報を入力するという手間を省き、スムーズな手続きを実現しています。

また、ブロックチェーンに連結された情報は、内覧時にも活用されています。本人確認の情報を積水ハウス側に送り、その情報を元にブロックチェーンから、内覧許可に関するデータを引き出す仕組みです。そして、遠隔で賃貸の鍵を開ければ、不動産を仲介する担当者の立会を必要とせず、申し込んだ人だけで内覧ができます。担当者とのスケジュール調整や、待ち合わせなどは必要ありません。

株式会社LIFULL

株式会社LIFULLは、所有者不明の不動産が数多く存在する問題を解決するための、ブロックチェーンの実証実験を行いました。不動産の所有権を、ブロックチェーンで取引できるデータに変え、第三者に譲渡しやすくするという実験です。不動産が所有者不明になってしまう大きな原因として、移転登記の費用が高額である点が挙げられます。ブロックチェーンを使用すれば、その費用を抑えることが可能です。その結果、移転登記がやりやすくなり、不動産の所有者不明問題を解決できる可能性があります。

Propy社

アメリカの不動産業界では、ブロックチェーンの実用化が大きく進んでいます。ブロックチェーンを活用する企業として代表的なのは、Propy社です。オンラインで、不動産の売買を行えるサービスを提供しています。Propy社が提供している専用サイトでは、インターネットを通じて、関係者全員が電子署名を済ませるだけで、簡単に不動産を購入可能です。契約に関する情報は、ブロックチェーンに記録される上に、自治体にも届くようになっているため、不正な取引が行われることはありません。

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この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。