メタバースとは?仮想空間を使ってできることやそのメリットについて解説

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メタバースとは?仮想空間を使ってできることやそのメリットについて解説
今、その注目度が急上昇している「メタバース」。Facebookの社名が「Meta」に変わったことから、メタバースへの注目度も上がったと言われています。
今回は、SNSやゲームの世界だけでなく、ビジネスの分野にも広がりつつあるメタバースについて解説。メタバースの活用やそのメリットに目を向けてみましょう。

メタバースとは?

メタバースとは?

「メタバース」という言葉を最近よく聞くようになりましたが、どういう意味なのでしょうか。メタバースとは、インターネット上に作られた仮想空間で自分の分身となるアバターを操作して他の人と交流したり、様々なサービスを楽しむことができる世界のことです。

メタバース=仮想空間ではない?

「メタバース」という言葉は、「超越した」という意味の「meta」と「宇宙」という意味の「universe」を合わせた造語です。この言葉は、1990年代に発表されたSF小説に登場する架空の仮想空間サービスに由来しています。ネット上の仮想空間という点では、日本での「電脳空間」や「サイバースペース」と呼ばれてきたものと似ていますが、それとは異なる特徴があります。それは、仮想空間内で他者とコミュニケーションが取れることと経済活動が行われることです。仮想空間において自分だけの世界を楽しむだけではなく、他者のアバターと話したり、商品やサービスを購入できることがメタバースの魅力です。仮想空間で購入した商品が現実世界に届いたり、仮想空間で働いたり学ぶことも可能です。つまり、メタバースはインターネット上に存在する現実世界と連動した仮想経済圏と言えます。

メタバースとVRは同じ?

仮想空間と聞くと、VR(仮想現実)を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、メタバースとVRは違うものです。メタバースはインターネット上にある仮想空間そのものを指しますが、VRはその空間に没入感を与えるためのデバイスや技術を指します。つまり、メタバースは仮想空間という場所そのものである一方、VRはその場所にアクセスするための手段や方法ということです。

メタバースはなぜ注目されているのか

メタバースはなぜ注目されているのか

ビジネスの世界においても、注目される機会が増えてきたメタバース。では、なぜこれほどまでにその注目度が高まっているのでしょうか。

Facebookの社名変更が大きな契機に

2021年に社名変更を行った米Facebook。現在はMetaという社名になっており、メタバースを連想させる社名であることから、2021年はメタバースの年とも言われています。

社名からわかるように、メタバース構築のための企業として名乗りを上げたMeta。1.1兆円以上ものお金をメタバースの開発につぎ込むと発表したことから、業界内でも大きな注目を集めました。メタバースの開発にかける資金は今後も増やされる可能性が高いことから、メタバースに対する注目度も今後より一層上がっていくことが予想されます。
 
ただの社名変更ではなく、メタバースに向けての大きな一歩を踏み出したMetaの動きは、間違いなくメタバースへの注目度が上がる一因となりました。

非対面でのコミュニケーションへの必要性の高まり

これまでは人と人とが直接対面して、リアルの場でコミュニケーションを取ることが当たり前でした。しかし感染症の流行により、人同士の接触機会が減ってしまった今、これまでとは違うコミュニケーションの方法に目を向けなければなりません。
 
メタバースは、非対面でリアルに近いコミュニケーションが取れる手段。そのため、リアルでのイベント開催や人同士が対面して行うコミュニケーションが取れなくなった今の世の中にとって、需要の高いコミュニケーション方法となっているのです。
 
新しいコミュニケーションの形を模索せざるを得なくなったことから、メタバースへの注目度も一気に上がりました。

ブロックチェーンの技術を活用して経済活動が行えるようになった

これまで、アバターやアート作品、アイテム、土地など、メタバース内にある自分が作ったものや自分のモノには、「所有権」という認識がありませんでした。そのため、他人に不正コピーされるようなこともあり、モノに対する所有権という認識自体が曖昧だったのです。
 
しかし、メタバースにブロックチェーンを活用した技術「NFT(デジタル資産)」が採用されたことから、所有権に対する認識は一変。自分のモノという所有権の認識が明確になったため、NFTの導入以前に起きていた不正コピーによるトラブルなどを回避できるようになったのです。

ブロックチェーンの技術を用いているNFTは、仮想通貨を用いた取引も可能。メタバース内での経済活用も行なえるようになったことも、メタバースに対する注目度が上がる一つの要因となりました。

 
■ブロックチェーン」とは何か?を知りたい方はこちら

メタバースでできることやその活用方法

タバースでできることやその活用方法

新しいコミュニケーションの形としても、注目されているメタバース。では、メタバースでは具体的にどのようなことができるのでしょうか。

よりコミュニケーション能力の高いリモート会議

メタバース内では当然、他者との会話が可能です。今は一つの会議の形として定着したリモート会議ですが、メタバース内で開催することによってよりリアルな感覚で他者とコミュケーションが取れるようになります。
 
Zoomなどを活用したリモート会議では、画面越しに相手の顔は見えてもどこか「画面上で開催されている会議の映像を見ているだけ」のような感覚に陥ることは珍しくありません。一方メタバースにて開催される会議の場合は、メタバース内に作成した自分のアバターと他者のアバターとが同じ会議室に存在しながら会話することができるため、実際に自分もその場にいるような感覚を味わうことが可能です。

モノや土地の売買、投資などの商業活動

メタバース内では、自分が所有するモノや土地、デジタルコンテンツなどを仮想通貨を用いて他者へ売買することができます。リアルの世界にある商品をメタバース内で売買するケースもあり、個人・企業にとっての新しい経済活動の場にもなっています。
 
また、仮想通貨を用いることでメタバース内において実際に収益を上げることができるため、投資の場として活用することも可能。資産運用目的で利用されるケースも増えています。
 
メタバースでリモート会議をお考えの方はこちらの関連記事をどうぞ。

ライブなどバーチャルイベントの開催

メタバースは、ライブやイベントの開催場所として活用されるケースも珍しくありません。日本最大級の野外音楽イベントとして知られるFUJI ROCK FESTIVALでもメタバースの会場が設けられたり、大人気ゲームのフォートナイト内にて米津玄師がイベントを開催したりと、メタバースは人々の楽しむ場としても注目を集めています。

たくさんの人々が集まること自体が難しい時期であってもイベントが決行できるのはもちろん、バーチャルだからこその驚くような演出ができたりと、開催する側にとっても見る側にとってもメタバースでのイベント開催はメリット多いもの。現地に行けないときでもイベントの楽しさを味わえるのは、メタバースの強みでもあります。

メタバースのメリット

メタバースのメリット

現実の世界とはまた違った空間であるメタバース。非現実的な世界ある空間であるため、現実世界とは違ったメリットがたくさんあります。
 
では、メタバースにはどのようなメリットがあるのか、いくつかご紹介しましょう。

世界中からアクセスできる

現実世界において世界中を旅しようと思うと、旅するための日程を確保や飛行機チケットの手配、現地での宿泊先の手配、パスポートの準備…など、さまざまな準備が必要となります。その上、治安的に気軽に行けない国があったりと、世界中を自由に飛び回るということは想像以上に難しいことです。
 
その点、メタバースは国や地域の垣根なく広がっている仮想空間であることから、世界中のユーザーとつながることが可能。環境や政治、経済などの制約を受けることもないため、自由に世界の人とつながれるというメリットがあります。

非現実的な体験ができる

メタバースは、現実とは全く違う非現実的な世界に存在しています。そのため、現実では制約があってできないことも、メタバース上では実現可能。個人の表現力次第でどんなことでも可能にできるため、犯罪や不謹慎なこと以外であれば現実にはありえないことを表現することもできます。
 
非現実的なことを実現できるだけでなく、メタバース内においてそれをまるで現実に起きていることかのように体感できるのは、メタバースのメリットだと言えます。

コストカットに役立つ

企業にとっては、コストカットができるということもメタバースを活用するメリットの一つ。現実世界ではオフィスや店舗を維持するために費用が発生しますが、それらをメタバース内に移行することでオフィスや店舗の維持費は丸ごとカットできます。
 
実際に、オフィスや店舗をメタバース内に移行させる企業も増えていることから、今後もコストカットの恩恵を受ける企業は増えるでしょう。

メタバースの活用事例

メタバースの活用事例
では、実際にメタバースの活用を行っている企業の事例を見てみましょう。

ゲームでメタバースを楽しむ/任天堂

ゲーム業界では、メタバースを楽しむことができるソフトが多くあります。その中でも、特に人気が高いのが任天堂の「あつまれどうぶつの森」です。こちらのゲームは、Nintendo Switchのゲームソフトとして発売されたもので、ユーザーは自分の分身となるアバターを作成し、無人島で自由に暮らすことができます。釣りや園芸、家具作りなど様々なアクティビティを楽しんだり、島に住む動物たちと交流することができます。また、オンライン通信を使えば、他のユーザーの島に訪問したり、自分の島に招待することも可能です。
 
「あつまれどうぶつの森」通称・あつ森は、新型コロナウイルス感染症の影響で外出や移動が制限された時期に発売されたこともあり、多くの人に支持されました。現実世界ではできないような体験や交流ができることが魅力で、メタバースを身近に感じられるゲームとして注目されました。また、実在する企業やブランドとのコラボレーションも行われています。例えば、アパレルブランドのGUは、「あつまれどうぶつの森」内で自社商品を再現したデザインコードを公開しました。ユーザーは、このコードを使って自分のアバターにGU商品の服を着せることができます。また、GUは「あつまれどうぶつの森」内で開催されたファッションショーにも参加しました。このように、「あつまれどうぶつの森」は現実世界と仮想空間をつなぐメタバースの一例と言えます。
 

音楽業界でメタバースを活用する/Sony Music Entertainment

音楽業界でもメタバースを活用する取り組みが行われています。その一例がSony Music Entertainment(以下SME)が提供する「MUSIC METROPOLIS」というサービスです。「MUSIC METROPOLIS」とは、SME所属アーティストや音楽ファンが集まる仮想空間です。ユーザーは自分好みにカスタマイズしたアバターを作成し、「MUSIC METROPOLIS」内で様々な音楽体験ができます。例えば、アーティストのライブやトークショーを観覧したり、アーティストのオリジナルグッズを購入したり、他のユーザーと音楽について語り合うことができます。また、自分の好きな音楽を聴いたり、自分で音楽を作ることも可能です。
 
「MUSIC METROPOLIS」は、2021年10月にβ版としてサービスを開始しました。現在は招待制で利用できる状態ですが、今後は一般公開される予定です。SMEは「MUSIC METROPOLIS」を通じて、音楽ファンとアーティストの新しい関係性やコミュニティを創出し、音楽文化の発展に貢献することを目指しています。
 

不動産業界でメタバースを活用する/三井不動産

不動産業界でもメタバースを活用する取り組みが行われています。その一例が、三井不動産が提供する「MITSUI METAVERSE」というサービスです。「MITSUI METAVERSE」は、三井不動産が運営する商業施設やオフィスビルなどの物理空間を仮想空間に再現したものです。ユーザーは自分のアバターを作成し、「MITSUI METAVERSE」内で様々なサービスやコンテンツを楽しむことができます。例えば、ショッピングや飲食、エンターテイメントやイベントなどです。また、仮想空間で購入した商品は現実に届けられ、仮想空間で稼いだ通貨は現金化することも可能です。
 
「MITSUI METAVERSE」は、2021年11月にプレオープンしました。現在は招待制で利用できる状態ですが、今後は一般公開される予定です。三井不動産は「MITSUI METAVERSE」を通じて、物理空間と仮想空間の融合による新しい価値提供やライフスタイルの創出を目指しています。
 
オンライン通信を行えば、外部のユーザーとつながることも可能。アパレルブランドなど実在する企業とのコラボアイテムが出回るなど、現実世界と非現実世界のいいところを両方楽しめるという、メタバースの魅力を凝縮したゲームソフトとして注目を集めました。
 

バーチャル配信アプリを開発/グリー株式会社

SNSの運営会社であるグリーでは、2021年よりメタバース事業に参入。その第一歩としてバーチャル配信アプリ「REALITY」を開発し、このアプリを基盤としてメタバース事業の展開・グローバル化を目指しています。
 
REALITYは、アバターを活用したバーチャルライブの配信ができるアプリ。グリーの子会社であるREALITYがこれまで力を入れてきたライブエンターテインメント事業のノウハウを活かし、メタバース事業へと展開しながら世界規模でのサービス拡大を行っています。
 
■メタバースの海外事例はこちら

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まとめ

メタバースへの需要が高まった背景には、未だ収束しない感染症の存在があります。これを機に莫大な費用をかけてメタバースの開発を行う企業も増えていることから、感染症の流行が終息したあともメタバースへの需要は高まることでしょう。
 
メタバースがこれからどのような成長を遂げていくのか、楽しみですね。

この記事の監修者:杉森由政

この記事の監修者:杉森由政

2018年2月Fabeee株式会社CTOに就任。現在は、新規事業開発部門の責任者を務めるともに、AIやブロックチェーンなどの先端技術を用いた研究開発も担当。また広島大学との連携研究においては、生体データを解析する人工知能および解析アルゴリズムの研究開発にも携わるなど、多岐に渡り活躍をしている。
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