投稿日 2022.11.18

最終更新日 2022.11.18

メタバースを活用した観光とは?事例を踏まえて分かりやすく解説

メタバースを活用した観光とは?事例を踏まえて分かりやすく解説

メタバース観光とは?

メタバース観光とは、インターネット上に構築された3次元の仮想空間「メタバース」を観光に活用することをいいます。新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、感染防止対策として国内・国外ともに人の移動が難しくなった時期には、旅行や観光を控える人が多くなりました。実際の移動が難しい時期にも、その場に行くのと同じように、豊かな旅行体験や観光体験ができるインターネット上のメタバース観光は、感染症対策で移動を控えている人や、行きたいけど事情があって行けないという人からも、注目を集めています。

代表的な手法の1つが、インターネット上の仮想現実空間に現実の街を再現し、メタバース内での自分代わりとなるアバターを使用して自由に動き回ることや、VR技術で観光地を360度リアルに疑似体験できるバーチャルツアー、バーチャルイベントを行うことです。

メタバース観光のメリット

メタバース観光のメリット
メタバース観光のメリットは数多くありますが、ここでは代表的な4つのポイントを挙げてご紹介します。

誰でも・どこからでもアクセス可能

インターネットの安定した環境があれば、誰でも、世界中どこからでも、アクセスできるのがメタバースです。距離の遠さや、アクセスの不便さ、交通費の高額さなどを理由にあきらめる必要はありません。魅力的な観光地やイベントだと感じれば、世界中どこで行われていても、気軽に参加できるのです。これまで、身体的な理由で移動や旅行が難しかった人も、ハンデを感じることなく楽しめます。観光地側も、人口の多い大都市圏から遠いことや、不便な土地にあることが不利になりません。有名・便利な観光地と、同じ条件でマーケティングやプロモーションが行えます。

現実感があるのに、非接触

観光地の動画でのプロモーションは増加傾向で、現地の実情がリアルに伝わりやすい点が魅力です。メタバース観光では、観光客となる参加者はアバターとして仮想現実の世界に入り込むため、現地の実情を「アバターの自分が体験できる」点が異なります。感染症の流行拡大以降、人々の意識には変化がありました。感染対策を行うからこそ、「人との接触に抵抗を感じる」人もいれば、逆に「人との接触を求めている」という人もいるのです。どちらの人にとっても、非接触なのに現実感のある体験と、アバターとして他人との交流も可能なメタバース観光は、魅力的なコンテンツになりえます。

観光地側にとっては、感染症の流行拡大時には開催が難しい、大勢の人が集まるイベントや催しも、メタバース上であれば問題なく行える点がメリットです。もしもまた流行期がやってきて、イベント開催に制限がかかったとしても、メタバース上のイベントであれば中止する必要がないため、安定した運営と集客が見込めるでしょう。

現実の旅行よりも低価格

メタバース観光なら、交通費やホテル代といった旅行に必須の予算が必要ないため、気軽に参加できます。浮いた予算で、イベントチケットを購入して参加することもできますし、現地の名産品をメタバース観光地内で通販により購入し、届いた自宅で楽しむことも可能です。観光地側としては、メタバース内で消費してもらう工夫をすることで、本来の移動費や宿泊費などの予算分も、売上として獲得できるかもしれません。また、メタバース観光は1回の予算も時間も少なく済むため、気軽に、何度でも訪れることができます。実際の観光地にも親しみを持ってもらい、現実の旅行先として選ばれる可能性も高まるでしょう。

現実では不可能な観光もできる

メタバース観光なら、現実の観光地では対応できない、難しい観光方法や展示方法も実現可能です。たとえば、一般人が入れない世界遺産も、メタバース内に再現すれば、バーチャルツアーで内部まで案内して見せることができます。常時公開できない展示品や、実際に足を運んでも間近では見られない展示品もあるでしょう。メタバース上で公開すれば、どのような展示品も観覧時期を限定せずに行えますし、拡大して見せたり、手に取る感覚で見せたりといった対応も可能です。人が立ち入るには危険な場所にも入ることができるため、足場のない上空からの観光や、空中を走る電車からの観光など、実際には不可能な体験も味わえます。

実際サービスや事例のご紹介

実際サービスや事例のご紹介
メタバースを観光に活用している事例は、すでに数多く存在します。ここでは、メタバース観光の重要なポイントである、「現実の観光・消費行動につなげる」ことを意識して活用している事例を4つご紹介しましょう。

京都市、宇治市、滋賀県大津市:『NAKED GARDEN -ONE KYOTO-』

「京都」全体を1つの庭に見立てて、メタバースとリアルで体験できるのが『NAKED GARDEN -ONE KYOTO-』です。京都の城や神社仏閣などの歴史的建造物を舞台に、メタバースのバーチャル世界とリアル世界がクロスオーバーする次世代型アートプロジェクトを、株式会社ネイキッドと京都・宇治・大津の各市が協力して開催。デジタルツインのミラーワールドを作るだけではなく、現実とメタバースでの体験を相互に反映させる形で、現実の自分とアバターの自分が連動して楽しめます。現実世界とのクロスオーバーで、実際の観光に繋がることも期待できる点が、大きな魅力といえるでしょう。

ANA:『SKY WHALE』

ANAの『SKY WHALE』は、スマートフォン・タブレットなどの各種端末からアクセス可能な、バーチャルトラベルプラットフォームです。
「Skyパーク」、「Skyモール」、「Skyビレッジ」という3つのサービスを、2022年中に提供開始することを目指しています。「Skyパーク」では、3DCGによって描かれた世界の都市や絶景スポットでのバーチャル観光旅行が可能です。「Skyモール」では、エンターテイメントをイメージしたメタバースの空港モール内を自由に歩いて、商品の購入やエンターテイメントイベントに参加できます。

「Skyビレッジ」は、バーチャル上でのスマートシティの実現を目指して、医療・教育・行政などのサービス展開を予定している未来の街空間です。開発・運営は、ANAホールディングス株式会社が設立したANA NEO株式会社が行います。

沖縄:『バーチャルOKINAWA』

沖縄の国際通り商店街やビーチを始めとした観光地をメタバースで再現したのが、『バーチャルOKINAWA』です。新型コロナウイルス感染症の流行期に音楽イベントが中止になった際には、メタバース内でのライブコマースの開催や、イベント告知のビラ配りを行いました。参加者同士がアバターで記念撮影したり、朝のラジオ体操を開催したりと、人々の気軽な交流の場としても利用される『バーチャルOKINAWA』。沖縄で実際にガイドをしている人がバーチャルガイドを務め、メタバース上の沖縄観光も盛り上げています。

通販サイトも整備して、バーチャルでの体験をきっかけにした購買や、実際の訪問・観光につなげる工夫が多くされているのが特徴です。運営は、株式会社あしびかんぱにーが行っています。

国土交通省:横浜みなとみらいエリアのバスツアー

国土交通省と観光庁が連携し、メタバース観光を実証実験として行った事例もあります。現実の横浜・みなとみらいエリアを走るオープントップバスに乗って観光する乗客が、XRデバイスを身につけて、未来の横浜・みなとみらいエリアの姿を構築したメタバース内を観光するバスツアーです。3D都市モデルをベースに構築したメタバースと、現実の横浜・みなとみらいエリアを、高精度三次元点群地図データの位置合わせで重ね合わせ、高精度位置認識技術で現実に運行しているバスの位置を把握します。

乗客は、現実世界で乗車しているバスが移動するのと同時に、メタバース内でも移動して観光するのです。2021年12月から2022年1月に定期運行で開催されたツアーは、9割近い予約率で、約380名が参加しました。

メタバース観光の今後

メタバース観光の今後
メタバース観光の今後は、メタバースがどれだけ広く普及するかによって大きく左右されるでしょう。その場にいるような没入感を得ることが大切なメタバース観光では、VR・XRメガネやヘッドセットなど技術の進化、安定して速いインターネット環境が必要だからです。Apple社を始めとして使用するデバイスの開発に取り組む企業も多く、メタバースの利用は今後も大きく拡大することが予想されています。メタバース観光も、メタバース利用者の増加に伴って発展が期待できる、将来性のある分野です。

観光庁でも、デジタル技術による商品・サービスの改善や変革を目指すDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で、旅行者が観光で消費する機会や消費する単価を拡大するために、メタバース観光の支援を行っています。たとえば、「観光サービスの変革と観光需要の創出事業」や、「観光・地域経済活性化実証事業」といった取組です。オンライン配信技術やXR、5Gを活用して魅力的な体験型コンテンツを作り、体験価値の向上を図る事業を、審査を行った上で支援しています。

メタバース観光をビジネスに有効活用するためには、バーチャル空間での体験を、いかに実際の消費行動につなげるかが重要です。たとえば、現実では金銭面や利便性でハードルの高い観光体験を、事前にメタバース内で気軽に、お得に体験してもらうことで、現実での購入・訪問につなげるという使い方が有効でしょう。高級リゾートや飛行機のファーストクラスなど高単価の旅行商品や、知名度の低さや大都市からの距離といったハンデがある観光地は、メタバース内での疑似体験を通じて興味関心を持ってもらえれば、販売や訪問につなげられる可能性があります。また、現実の観光で購入するお土産品は通販で、イベントやツアーはバーチャルで行えば、メタバース内でも販売可能です。

【まとめ】メタバース観光を活用すれば、幅広い需要とビジネスチャンスがある

実際にメタバースを観光に活用している事例をご紹介しました。メタバースには、世界中どこからでも参加できる大きなメリットがあります。旅行や観光がしたい人々にとって、距離や時間、体調や金銭面のハードルを下げてくれるため、これまで観光したくてもできなかった人々の需要も幅広く喚起できるでしょう。メタバース観光を活用して、実際の消費行動につなげることができれば、大きなビジネスに発展する可能性がある分野です。

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