メタバースの導入で地方自治体の未来はどう変わる?実際の事例も紹介

2022.07.19

2023.04.20

DXのあるべき姿を考える

メタバースの導入で地方自治体の未来はどう変わる?実際の事例も紹介
ビジネスでの活用場面が増えているメタバース。実は、地方自治体でも活用され始めています。
さまざまな可能性を秘めるメタバースは、地方自治体にどのような未来をもたらすのでしょうか。実際の事例とともに、地方自治体がメタバースを取り入れるメリットについて解説します。

地方自治体×メタバースはなぜ注目されている?

地方自治体×メタバースはなぜ注目されている?

住宅展示場や教育など、さまざまな場面において活躍の幅を広げているメタバース。メタバースに秘められた可能性の高さから、今地方自治体でもメタバースを導入するところが増えています。

そもそも注目されやすい分野であるメタバースですが、地方自治体が導入することでどのような新しい世界が生み出されるのでしょうか。それぞれの関係性とともに、地方自治体×メタバースへ注目が集まっている理由に迫ってみましょう。

地域活性の起爆剤となりうるメタバース

メタバースは、ユーザーがいる場所にとらわれず仮想空間の中に集まることができるというのが特徴。地方自治体は、このようなメタバースの特徴を地域活性に活かそうと模索しています。

地方自治体では人口減からの過疎化や、高齢化による働き手の減少など、さまざまな問題を抱えているところが少なくありません。しかし、若者の移住者を急激に増やすということはなかなか難しく、ネットを活用しながら過疎化、高齢化に立ち向かっているところが多くあります。

そこで活用され始めたのが、メタバース。実際に移住するのが難しいような地域でメタバースを導入し、アバターを通じて生産者と直接会話をしながらその土地ならではの物品を販売したり、移住したあとのイメージをよりリアルに想像できる場を設けたりと、地域の魅力を新しい方法でアピールしています。

地方自治体にとって、メタバースはその地域の未来を作っていく存在になる可能性が高く、今後活用する地方自治体も増えていくことでしょう。

 
■メタバースについて知りたい方はこちら

地方自治体のメタバース導入は日本の未来につながる

地方自治体のメタバース導入は日本の未来につながる

Facebook社が「Meta」へと社名を変更したことから、メタバースに対する動きから活発になりました。コロナ禍などを経て、2022年はメタバース躍進の年とも言われており、今後メタバースはより活性化していくと考えられています。

メタバース導入に関して世界よりも遅れを取っている日本ですが、積極的にメタバースを活用しようとする地方自治体が増えたり、地方自治体向けのメタバースサービスを展開する企業が増えたりと、地方自治体×メタバースの動きは確実に活発になっています。

メタバースは、地方自治体のスマートシティ化にも寄与。持続可能な社会を実現するために、今各地方自治体でスマートシティ化に関する構想が練られています。スマートシティを実現する前に、まずメタバース上に現実世界にある都市を再現したというケースも。デジタルの力を利用した、渋谷区公認の都市連動型メタバースには大きな注目が集まりました。

withコロナという言葉が浸透して以来、地方自治体の柱ともなっている観光業は新しい局面を迎えています。地方自治体がメタバースを用いてDXを行うことが、日本の未来を守ることにつながっていくのではないでしょうか。

地方自治体にとってのメタバースのメリットとは

地方自治体にとってのメタバースのメリットとは

現在、世界中の国々でバーチャルの力を用いた地域活性化の動きが活発化しています。日本も例外ではなく、メタバースを活用した地方自治体のさまざまな例が報告されるようになってきました。

そもそも、地方自治体にとってメタバースを導入することはどのようなメリットがあるのでしょうか。地方自治体×メタバースの動きをより活発にするためのヒントに目を向けてみましょう。

他地域・外国の人とも気軽につながることができる

新型コロナウイルスの蔓延によって、国内外問わず自由に移動できない時期がありました。社会がグローバル化を遂げる中、コロナ禍による人々の移動に対するさまざまな規制は、各方面にさまざまな影響を与えています。

人と人とがリアルでつながることができなくなり、オンラインによるコミュニケーションの機会が増えましたが、相手の顔は見えてもやはりリアルでのコミュニケーションとは異なり意思疎通の難しさを感じるケースも少なくありません。

そこで注目したいのが、メタバースの没入感です。メタバースもバーチャルの空間で他者とコミュニケーションを取るため、メタバースに対して親しみのない人にとってはオンラインでのコミュニケーションとの違いが理解しづらいかもしれません。しかし、これまでのオンラインでのコミュニケーションと大きく違うのは、アバターを通じて他者と直接やりとりできるというところ。

オンライン会議システムなどの場合、相手の顔が平面の画面上に映し出されるだけですが、メタバースならアバターを通じて相手の存在をより身近に感じることができるようになります。今後また、国内外での人々の移動ができなくなるような事態が起こっても、メタバースがあれば他地域や外国の人と気軽につながることができるようになるため、地域の魅力を継続的に発信し続けることができるようになるのです。

観光業の盛り上がりを維持できる

コロナ禍は、日本の観光業にも大きな影を落としました。人の動きがあることで活気を維持している観光業は、人々の動きが制限されることで一気にその勢いを失ってしまいます。

地方自治体にとって、観光業はその地域を維持するためになくてはならない柱的存在の業種。コロナ禍を経て、観光業の盛り下がりをどのようにして回復させるのか、頭を抱えているところも少なくありません。

メタバースは、リアルでの人の流れが抑制される中でも、その影響を受けない唯一の空間。ユーザーはアバターを通じてリアルに近い感覚でその地域の魅力に触れることができるため、気軽に気になる地域への旅行を楽しむことができるのです。

バーチャル空間に作られたその地域の観光スポットを見て回ることができたり、イベントを企画してたくさんの人を集めたりと、活用方法はさまざま。地域のブランディングにも活用できることから、メタバースはその地域の元気を維持するために欠かせない存在となることでしょう。

地方自治体のメタバース活用事例

地方自治体のメタバース活用事例

すでに、地方自治体でのメタバース活用事例が報告されています。代表的なものをご紹介しましょう。

天草メタバース計画/熊本県天草市

熊本県天草市では、メタバースを活用して地域を元気づけるプロジェクトとして「天草メタバース計画」を発表。これから到来するメタバース時代を生き抜くための人材育成も兼ねており、天草市の未来を担うプロジェクトとして注目を集めています。
 
天草メタバース計画の第一弾プロジェクトとして動き出しているのが、天草市民とともに作り上げていく天草の観光地のメタバース化。実際に天草に住んでいる人たちがアバターとなってVR観光ツアーのガイドを行うという、画期的なプロジェクトが2022年夏にリリース予定となっています。
 
観光というアナログな面と、VR技術というデジタルな面を融合させることで、天草のブランディングにもつなげていこうというのが、このプロジェクトの大きな狙い。観光業にとってのネックとなる物理的な距離の問題を、デジタルの力を使って解決することでさらなる発展を目指す注目の事例です。

バーチャルOKINAWA/沖縄県

日本国内でも有数の観光地と知られる沖縄では、新型コロナウイルス蔓延の影響から観光業が大打撃を受けました。そこで活発な動きを見せ始めたのが、メタバースを活用した「バーチャルOKINAWA」のプロジェクトです。
 
元々、新型コロナウイルスの流行前から構想が練られていたこのプロジェクト。コロナ禍への突入によって大きな影響を受けた観光業界を救うべく、2020年春より実現へと大きく動き始めました。
 
首里城や国際通りといった沖縄を代表する観光スポットが再現されているのはもちろん、さまざまなイベントなども企画されており、楽しみ方のパターンはさまざま。バーチャルOKINAWAの特色としては、バーチャルで楽しむだけでなく実際にリアルでも沖縄に訪れたくなるような世界観が広がっていることであり、バーチャルの力を使ってリアルでの観光業の復活にもパワーを与える存在となっています。

山古志プロジェクト/新潟県長岡市

新潟県長岡市にある「山古志」地域では、住民団体がメタバースに挑戦しています。人口減少に歯止めがかからない状況のなか、住民の数に左右されない地域づくりの一環として、国や市などからの補助金を活用した「仮想山古志プロジェクト」を始動しました。デジタル上での人口を増やす試みとして、NFTアートを発行し、対象者に村の電子住民票を与えます。
 
地域の名物である錦鯉をモチーフにしたデジタルアートを販売、アートの購入者は「Nishikigoi NFT」と呼ばれ、「デジタル村民」に認定されます。デジタル村民は村の外で生活しているにも関わらず、村のプロジェクトに参加することができます。千人以上がメタバース上の「仮想山古志」で交流し、地域活性化のプロジェクトに出席したり、地域における課題の解決のため、意見交換を行っています。デジタル村民選挙に参加し、地域を盛り上げるプランを選んだり、企画したりすることも可能です。デジタル村民が長岡市の実際の制度「お試し移住制度」を利用して現地を訪れるといった、地域とのリアルな交流も生まれており、現地を訪れてイベント運営に参加するデジタル村民や、雪かきを手伝うデジタル村民もいるとのこと。
 
山古志メタバースは、世界中に仲間を増やしつつ、みんなで支え合う街を作ることを目標としています。長岡市は、人口減少が進行する中でも持続可能な地域づくりを支援しています。市は今後も住民団体と協力し、デジタル人口の増加や移住の促進、地域振興に取り組むとのことです。

NFTアートイベント/和歌山県白浜町

和歌山県白浜町は、メタバース企画である国内最大規模のNFTアートフェスティバルを開催しました。このイベントでは、クリエイター約300人による作品を500点ほど展示。
日本のアートシーンで活躍するアーティストが白浜町に集結し、壁画を描くといったアートを楽しめる機会を提供しました。イベントのテーマソングを歌う、ミュージックNFTプロジェクトによるライブのほか、描いた絵から音が出たり、絵が動きだすデジタルアートの体験会を子どもを対象に行いました。
 
ストリートアートのプロジェクトと連動し、白浜町をバーチャルな世界にも出現させるというユニークな企画であり、デジタル作品であるNFTアートを印刷し、会場に展示。作品に記載されたQRコードをスマートフォンで読み取れば、作品をその場で購入できます。イベントはVR空間のプラットフォーム上のメタバース会場でも同時開催されており、絵画展示やステージ中継も行われました。
 
さらに、イベントと連動して、イベント参加記念NFTの配布キャンペーンを実施。主催者は、記念NFTアートを所持している人向けに特典を準備し、白浜に足を運んでもらいたいと考えています。地域振興の一環として、NFTを通じて生まれ育った白浜を盛り上げていきたいとのこと。白浜町では、アートを通じてリアルとバーチャルを融合させる取り組みを行っています。

バーチャルマーケット/静岡県焼津市

静岡県焼津市は、メタバース上で行われる世界最大規模のイベント「バーチャルマーケット」に参加し、焼津市の魅力をアピールしました。焼津市の名産である「ミナミマグロ」の巨大3Dモデルをトレードマークとしたブースを開設、焼津市の公式キャラクターである「やいちゃん」が3Dアバターとなり、バーチャル接客を披露しました。魚が名物の焼津市ならではの企画としては、「バーチャルマグロ一本釣り」など、臨場感あふれる体験を提供。メタバース上のブースを訪れたユーザーが、船の上からマグロ釣りを楽しみました。イベントの目玉として、メタバース上でマグロの解体ショーを楽しめる特設ブースも開設しています。

また、焼津市のふるさと納税品として人気のネギトロやカツオのたたき、生しらす等も3Dモデルで展示。ブース内から直接ふるさと納税の寄付サイトに移り、お礼品の閲覧やふるさと納税をできるようにしました。市の職員や、ふるさと納税の担当者もVR接客に挑戦し、ふるさと納税品のPRを行っています。

焼津市は、メタバースならではの体験を上手く活用し、遠くにいる人に対して市の魅力をアピールし、地域経済を活性化することに成功しています。他の地方自治体にとっても参考になる事例と言えるでしょう。

まとめ

地方自治体の将来を見据える上で、今後なくてはならない存在となっていくであろうメタバース。弊社でも「Fabeee Metaverse Package」という、メタバース構築のためのサービスを展開しています。

メタバースで地元や自社を盛り上げたいと考えている方は、ぜひFabeee Metaverse Packageも参考にしてみてください。

この記事の監修者:杉森由政

この記事の監修者:杉森由政

2018年2月Fabeee株式会社CTOに就任。現在は、新規事業開発部門の責任者を務めるともに、AIやブロックチェーンなどの先端技術を用いた研究開発も担当。また広島大学との連携研究においては、生体データを解析する人工知能および解析アルゴリズムの研究開発にも携わるなど、多岐に渡り活躍をしている。
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