投稿日 2022.10.19

最終更新日 2022.10.19

自動車業界のメタバースの取り組み状況に関して活用事例を踏まえて分かりやすく解説

自動車業界のメタバースの取り組み状況に関して活用事例を踏まえて分かりやすく解説

なぜ自動車業界がメタバースを活用しているのか

自動車業界ではメタバースの活用に対して積極的な企業が多くなっています。次々に活用事例が出てきていますが、なぜ自動車業界ではメタバースの活用が進んでいるのでしょうか。

売り上げが伸び悩む状況から脱却する道になるから

自動車業界では売り上げの低迷に苦しむケースが増えています。地球環境問題への取り組みを積極的に展開せざるを得ない状況があり、電気自動車や水素自動車などの環境負荷の低い自動車の開発が求められるようになりました。しかし、ユーザーは安価で燃費が良いガソリン車を選ぶ傾向が強く、メーカーとユーザーの間でギャップが生まれてきています。また、高級車志向が強いユーザーもいますが、付加価値が大きい車も各社が競い合って開発しているため、他社との差別化が必要不可欠です。メタバースの活用はこのような苦しい状況から脱却するソリューションとして着目されています。

技術の発達によって付加価値を生み出せる可能性が高くなったから

メタバースの活用は自動車業界との相性が良いのも活用が進んでいる理由です。シミュレーション技術やAIによる予測技術の発展によって自動車の試乗体験や安全性能の向上を見込むことができるようになりました。映像技術も高まり、空間を演出するアプローチも取り入れやすくなっています。メタバースに興味を持つ人も増えてきていることから、付加価値を付けてユーザーに関心を持ってもらえる方策として注目されているのが現状です。

自動車業界がメタバースを活用するメリット

自動車業界がメタバースを活用するメリット
自動車業界ではメタバースのポテンシャルに期待して活用を進めている傾向があります。実際に導入を検討する際にはメリットがあるのかどうかを詳しく知りたいでしょう。自動車業界ではメタバースを使うメリットとして重要なのが以下の3点です。

プロモーションや販売のチャネルとして活用できる

メタバースは自動車のプロモーションや販売を促進するツールとして活用できるのがメリットです。アバターとしてメタバース空間に入ってきたユーザーはリアルな体験ができます。いつでもどこでも自動車について気になったときにはアバターになって、自由に自動車に触れることが可能です。メタバースに広告を出したり、自社の自動車を展示して問い合わせ対応をしたり、イベントを実施してプロモーションしたりすることができます。販売チャネルの拡張をする上では特に有用なアプローチになります。

ユーザーに対して新しい体験を提供できる

メタバースを活用すればユーザーに新しい体験をデザインして提供できるのがメリットです。メタバースの空間で何をユーザーに提供するかは自由です。他社との差別化をしやすいので、オリジナルのアプローチでユーザーを感動させれば大きなシェアを獲得できるでしょう。NFTやゲームなども組み合わせて多様なアプローチができる魅力があります。体験を大切にする時代になっているので、売り上げが低迷しがちな自動車業界ではメタバースが救世主になる可能性があります。

安全性と効率性を考慮した製造プロセスをデザインできる

自動車の製造プロセスでは安全で安定した生産を続けられるようにしつつ、高度な設計から製造までを一気通貫で効率的におこなえるようにする必要があります。自動車の製造コストを下げなければユーザーから選ばれないという状況もあるため、付加価値を高めつつ価格も抑える努力が必要です。メタバースは効率性を重視した製造プロセスをデジタルツインによって実現できる可能性を秘めているのがメリットです。

自動車業界のメタバースの取り組み

自動車業界のメタバースの取り組み
自動車業界におけるメタバースの取り組みはだんだんと広がってきています。今後も新しいアプローチが生まれてくる可能性が高いですが、現状としてどのような形で活用されているのかを紹介します。

新車の試乗会の開催

試乗会は最も初期からメタバースの活用方法として力が注がれてきました。メタバースの空間で実際に試乗体験をしてもらい、販売チャネルとして活用するアプローチです。

メタバースによる新しい空間の提供

メタバースによって高付加価値のある自動車を仕上げる取り組みもおこなわれてきました。バーチャル空間を車内に生み出して、カーライフをより充実させるという考え方で開発が進められています。

工場における生産・開発効率化

自動車の生産プロセスでもメタバースの活用が進められています。生産効率化や安全性確保の目的で工場のメタバース化に取り組む企業が出てきています。生産だけでなく開発や試作についても効率化する技術開発が進められているのが現状です。

自動車業界のメタバースの活用事例5選

自動車業界のメタバース活用は事例がだんだんと増えてきています。ここではインパクトのあったメタバースの活用事例を5つ紹介します。

バーチャル・ショールームの開催(ホンダ・アキュラ)

ホンダは主に北米の海外市場向け高級ブランド・アキュラでメタバースによるバーチャル・ショールームを開催しました。メタバース空間における市場体験やNFTなどを盛り込んだ自動車業界初の大規模イベントとして有名な事例です。2022年3月に実施されて大きな話題になった先駆的なイベントです。
 
ホンダ・アキュラのバーチャルショールームはこちら

電気自動車のイベントの開催(BMW)

BMWでは電気自動車のリリースに合わせてメタバースでのイベントを開催しました。新車の市場体験に加えて、アバターとして新車と一緒に写真撮影できるなど、車好きにとって楽しみがいがあるイベントとして参加者が殺到しました。美しい演出も話題になり、BMWにとって大きなプロモーションになった事例です。

バーチャル空間での新車試乗会(日産)

日産自動車のバーチャル空間での新車試乗会は日本国内では初の試みになった事例です。2022年8月に軽電気自動車のリリースに際してメタバースを活用して試乗会が実施されました。「日産サクラ」という車名に合わせて「桜」による彩を豊かにしたバーチャル空間でのドライブ体験ができる試乗会でした。メタバース上で車の充電も体験できるなど、実用面を重視したプロモーションイベントとして現在でも話題になっています。

メタバース・コネクテッドカー(日産)

日産自動車はメタバース・コネクテッドカーの開発を手掛けて独自の「Invisible-to-Visible」、略称I2Vの技術を生み出しました。メタバースを利用することで安全なドライブが可能な車に仕上げると同時に、車内に仮想空間を作り上げているのが特徴です。センサー技術によって車の周囲一帯の状況を把握・予測できる仕組みになっていて、危険の予測結果をドライバーに投影することができます。また、本来はいない友人をアバターとして登場させたり、音楽や映画などのコンテンツを楽しんだりできる車内環境を生み出しています。
 
Invisible-to-Visibl(日産)はこちら

デジタルツインによるバーチャル工場(BMW)

バーチャル工場ではBMWが2022年6月からバーチャル工場の開発に取り組んでいます。デジタルツイン技術を利用してメタバース上に自社の工場空間を再現する取り組みをしています。リアルタイムでアバターを通したコミュニケーションを取れるようにすることで情報共有を迅速化し、生産効率の向上を目指している取り組みです。2023年の上半期には工場の敷地全体のスキャンデータが揃い、運用に向けて進める予定です。
 
参照元Impress

自動車業界ではメタバースの活用に積極的

自動車業界ではメタバースを実用レベルで活用している事例が次々に生まれてきています。メタバースによる技術開発に投資できる経済基盤があり、競争が激しくてオリジナリティを出さなければならない切実な状況がある業界だからです。バーチャル空間での試乗会だけでなく、NFTの活用も進んでいて、今後も大きな発展が期待される業界になっています。

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