投稿日 2024.03.08

最終更新日 2024.03.08

国際物流業界におけるレガシー(負の遺産)の課題と可能性

国際物流業界におけるレガシー(負の遺産)の課題と可能性

国際物流業界のレガシー(負の遺産)とは?

国際物流業界のレガシーとして、古くから根付いているのは、複雑な手続きや厳格な規制です。税関手続きや輸送の規制などが多く存在し、これらが業務の非効率性や遅延を引き起こすことがあります。これらの手続きは、物流プロセスを遅延させるだけでなく、追加のコストや管理上の負担をもたらす傾向があります。国際物流業界では、情報の不透明性がしばしば問題となっています。
 
商品の移動や在庫状況などの情報が適切に共有されず、トラッキングやモニタリングが困難な場合があります。この情報の不透明性は、顧客や関係者が必要な情報を得るのに時間を費やし、効率性を低下させるだけでなく、信頼性や透明性を欠くことで業界全体の信頼を損なう可能性もあります。
国際物流業界のレガシーは、これまでの歴史や慣行から生じた課題や問題を指します。これらのレガシーに直面する企業や業界関係者は、新たなアプローチや技術の導入、規制改革などを通じて、効率性や透明性の向上を図ることが求められます。

国際物流業界の課題

国際物流業界は、世界中の貨物や商品を効率的に移動させるための重要な役割を果たしています。しかし、この業界にはいくつかの課題があります。以下に国際物流業界の主な課題を示します。
 
①複雑な規制と手続き
国際物流では、様々な国や地域の法律や規制に従う必要があります。これには税関手続き、輸出入規制、安全基準などが含まれます。これらの複雑な規制や手続きは、物流プロセスを遅延させたり、コストを増加させたりする可能性があります。
 
②情報の透明性と追跡性の欠如
国際物流では、商品の移動や在庫状況などの情報の透明性が不足しています。顧客や関係者が必要な情報を正確かつ迅速に入手することが困難な場合があります。また、商品の追跡やモニタリングも難しい場合があり、これが遅延や紛失の問題を引き起こす可能性があります。
 
③インフラストラクチャーの不足
一部の地域では、適切な物流インフラストラクチャーが不足しています。道路や港湾施設、空港などのインフラが整備されていないため、効率的な輸送や物流活動が制限される場合があります。これは運送コストの増加や遅延の原因となります。
 
これらの課題は、国際物流業界全体の効率性や競争力を低下させる可能性があります。業界関係者は、これらの課題に対処するために、新たな技術の導入や効率化の取り組み、規制の改革などの取り組みが必要です。これにより、国際物流の効率性が向上し、グローバルな貿易が円滑に進むことが期待されます。

国際物流業界のDXはどの程度進んでいるのか?

国際物流業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、業務の効率化、コスト削減、サービス向上といった面で大きな変化をもたらしています。この進化は、物流業界が直面する多くの課題に対する解決策を提供しており、業界全体の競争力を高めることに貢献しています。以下に、国際物流業界のDXがどの程度進んでいるかについて説明します。
 
①デジタル技術の活用
国際物流業界では、さまざまなデジタル技術が導入されています。例えば、IoT(モノのインターネット)技術により、リアルタイムで貨物の追跡が可能になりました。これにより、荷物の正確な位置情報を知ることができるだけでなく、温度や湿度などの状態も監視できるようになり、特に食品や医薬品などの輸送において大きなメリットをもたらしています。
 
②プラットフォームの統合
多くの国際物流企業は、オペレーションを効率化するために、プラットフォームを統合しています。これにより、注文管理、在庫管理、輸送管理など、異なるプロセスを一つのシステムで管理できるようになり、業務の透明性が向上しています。また、AI(人工知能)を活用したデータ分析により、需要予測や最適な輸送ルートの選定など、より高度な意思決定が可能になっています。
 
③ブロックチェーン技術の採用
ブロックチェーン技術は、安全なデータ共有を可能にし、偽造や改ざんのリスクを大幅に減少させます。国際物流におけるブロックチェーンの採用は、輸送過程における透明性を高め、信頼性のある情報共有を実現しています。これにより、関税手続きの簡素化や迅速な決済が可能になるなど、国際取引のスムーズ化に貢献しています。
 
④サステナビリティへの取り組み
DXは、物流業界における環境への影響を軽減するための取り組みにも貢献しています。例えば、AIを活用した最適なルート選定により、燃料消費を減らし、CO2排出量を削減することが可能です。また、デジタル技術による紙の使用量削減は、業界全体の環境負荷を軽減しています。
 
国際物流業界のDXは、まだ完全には実現されていないものの、既に多くの進歩を遂げています。これらの技術革新は、業界の効率化だけでなく、顧客サービスの向上、環境への影響軽減など、幅広い利点を提供しています。

国際物流業界のDXの成功事例の紹介

国際物流業界は、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって大きく変貌しています。この変化は、新しい技術を積極的に取り入れ、業務プロセスを効率化し、顧客サービスを向上させる企業によって牽引されています。以下に、DXを成功させた国際物流業界の事例を、マーケターが理解しやすい形で紹介します。
 
①Maerskのブロックチェーン技術の活用
デンマークに本拠を置くMaerskは、世界最大の船舶貨物輸送会社の一つです。MaerskはIBMと共同で「TradeLens」というブロックチェーンベースの供給チェーン管理プラットフォームを開発しました。このプラットフォームは、輸送過程で発生する文書のデジタル化を可能にし、関係各所間でのデータ共有を安全かつ効率的に行えるように設計されています。TradeLensの導入により、Maerskは輸送時間の短縮、コスト削減、透明性の向上を実現しました。
 
②DHLのAIとIoTの活用
DHLは世界最大の物流会社の一つで、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)の技術を積極的に活用しています。特に、DHLはAIを利用して物流データを分析し、需要予測や最適な輸送ルートの選定を行っています。また、IoT技術を使ったスマートウェアハウスでは、リアルタイムでの在庫管理や、効率的な資源配分が可能になりました。これらの技術の導入により、DHLは顧客への迅速なサービス提供とコスト削減を実現しています。
 
③FedExのセンサーベース追跡システム
FedExは、貨物の追跡と監視を強化するために、高度なセンサーベースの追跡システムを開発しました。このシステムは、温度、湿度、光、位置情報など、貨物の状態に関する複数のパラメータをリアルタイムで監視します。この技術の導入により、FedExは特に医薬品や高価値商品の輸送において、顧客に対して高いレベルの透明性と安心を提供しています。
 
④CMA CGMのeコマースプラットフォーム
フランスに本拠を置くCMA CGMは、オンライン予約システムやeコマースプラットフォームの導入を通じて、顧客体験の向上に努めています。顧客はオンラインで簡単に貨物の予約ができ、輸送状況をリアルタイムで追跡できます。このようなデジタルツールの導入により、CMA CGMは顧客サービスの向上と内部プロセスの効率化を達成しています。
 
これらの事例からわかるように、国際物流業界のDX成功事例には、ブロックチェー
 
ン、AI、IoT、eコマースプラットフォームなど、さまざまな技術が活用されています。これらの技術を取り入れることで、物流会社は顧客サービスの質を高め、業務効率を向上させることができるのです。これらの事例は、マーケターがデジタルトランスフォーメーションの重要性と潜在的な利点を理解するのに役立つでしょう。

レガシー課題を解決するポイント

国際物流業界は、その広範なネットワークと複雑なサプライチェーンを通じて、世界経済の重要な支柱の一つです。しかし、この業界は長年にわたって蓄積されたレガシー(負の遺産)の課題にも直面しています。これらは古い技術システム、非効率なプロセス、そして時代遅れの管理慣行によって構成されており、業界の進化と顧客の要求に応える能力に影響を与えています。レガシーシステムを乗り越える最も効果的な方法は、デジタル化を全面的に採用し、最新のテクノロジーを統合することです。
 
例えば、ブロックチェーン技術は、輸送過程の透明性を高め、書類のデジタル化を通じて効率を改善することができます。AIとビッグデータの活用は、需要予測、在庫管理、最適な配送ルートの選定などを強化し、全体の運営効率を向上させることが可能です。デジタル化は、手作業によるエラーを削減し、プロセスを自動化することで、時間とコストの節約にもつながります。また、業界のレガシー課題に対処するには、異なるステークホルダー間でのコラボレーションが必要です。これには、物流会社、顧客、技術プロバイダー、政府機関が含まれます。共有プラットフォームの開発やオープンAPIの利用を通じて、データの共有と透明性を促進することが、サプライチェーン全体の効率と柔軟性を高める鍵となります。例えば、共有物流データを活用することで、荷物の追跡、在庫レベルの管理、配送の最適化が容易になります。
 
これらのポイントを実行に移すことで、国際物流業界はレガシーの課題を克服し、より効率的で持続可能な未来へと進むことができます。技術の統合、コラボレーションの促進、持続可能性への取り組み、そして教育とスキル開発は、この過程で不可欠な要素です。
 
 

Salesforceを活用して貨物の最新情報の連携を行った事例

Fabeee株式会社は、システムの構築だけでなく運用定着まで徹底的に伴走し、お客様のビジネス成長に貢献しています。実際の事例として、国際物流サービスのフライングフィッシュ株式会社との対談を通じて、Fabeeeの『バンソウDX』の思想や価値を解説します。フライングフィッシュ株式会社は国際物流サービスを提供し、2023年にSalesforceを導入しました。本稼働を開始してから約10ヶ月間、導入と定着支援の過程を振り返りました。
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この記事の監修者

阿部 雅文

阿部 雅文

コンサルタント

北海道大学法学部卒業。新卒でITベンチャー企業入社し、20代で新規事業の事業部長を経験。その後さらなる事業開発の経験を積むために、戦略コンサルティングファームにてスタートアップ企業からエンタープライズ企業のデジタルマーケティングや事業開発におけるコンサルティング業務に従事する。2021年5月にFabeeeにジョイン。DXコンサルタントとして大手メーカーや総合商社などを担当するほか、数多くのクライアントから指名を受け、各社の事業開発を支援中。多忙を極める中でも、丁寧で迅速な対応が顧客から高い評価を得ている。