製造業においてなぜDXが提唱されるのか?業界内の課題とDX成功事例を紹介

2021.12.14

2022.02.02

DXのあるべき姿を考える


他の業種と同じく、製造業においてもDXの推進が急がれています。製造業は、日本が世界と戦っていく上で非常に重要な業界。そのため、製造業のDXは特に必要性が高いと言えるのです。

そこで今回は、製造業が今抱える課題に対してDXがどのような方向転換の波を起こしてくれるのかというところにスポットを当てて解説。成功事例も合わせてご紹介します。
 
■DXとは何なのか?DXの全体像をより詳しく知りたいはこちら

製造業におけるDXとは?

製造業におけるDXとは?

製造業におけるDXは「製造業DX」とも呼ばれており、業界ならではなDXの形があります。まずは、“製造業におけるDXとは?”という基本的なところからおさえていきましょう。

ものづくりのノウハウをデジタル化してDXを推進

“2025年の崖”を回避すべく、国を挙げてその取り組みが推進されているDX。製造業も例外ではありません。

製造業におけるDXの柱は、「ものづくりにまつわるノウハウをデジタル化する」こと。ただ現場にロボットなどを導入することだけが目的ではなく、職人技と呼ばれる今まで肌感覚で伝えられてきたものをデジタル化することが、製造業におけるDXの本質です。

インターネットの普及とデジタル技術の高度化により、トレンドが移り変わるスピードは加速する一方。また、多様性に富んだ社会へと変化を遂げたことにより、同じものを大量生産するというこれまでの常識が、個人に合う特別なものを作られなければならないという流れに変化したことによって、製造業は今大きな転換期を迎えています。

いわゆる“職人技”と呼ばれていたものづくりにまつわるノウハウも、インターネットの普及によって、世界各国で共有されるように。リードタイムを短縮しながら生産性を向上し、品質の高さも担保するというビジネスの変革が求められる中、日本の企業が世界の製造業界と戦っていくためにも積極的なDX推進が必要不可欠なのです。

製造業における課題と現状

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<p>ビジネスの変革が求められている製造業ですが、具体的にどのような課題を抱えているのでしょうか。業界の現状と合わせて、DXで解決すべき課題に目を向けていきましょう。</p>
<h3><span class=日本の製造業は売上・営業利益ともに減少している

日本の製造業を取り巻く環境は、決して良好であるとは言えません。経済産業省・厚生労働省・文部科学省が発行している「日本ものづくり白書」によると、製造業の売上高・営業利益は2018年~2020年にかけて減少。

コロナ禍の影響も相まって、以降3年間についても減少の一途を辿るという見通しです。先行きが不透明な状況からの業績低迷に伴い、設備投資額についても減少しています。このような状況から製造業の企業への投資を控えるという動きにもつながっており、この課題についての早急な対応が求められているのは言うまでもありません。

「現場力」の強さが裏目に出ている

日本の製造業は、いわゆる「現場力」の強さに定評がありました。優秀な人材が現場に集結し、“現場主義”で日本の製造業は世界と戦ってきたのです。しかしインターネットが普及した今、高い競争力を誇っていた日本の現場力だけでは通用しないという状況に。

また、現場力が強かった影響から属人化されている仕組みが多く、人材不足の影響にさらされていることも製造業が抱える大きな課題の一つ。個人の実力、すなわち職人の技に頼りすぎている部分が大きかったことに加え人材不足に陥っていることから、後継者がおらず技術の継承がうまくいかないという課題を抱えているのです。

レガシーシステムへ投資する企業が多い

DXを推進するためには、ITに対する“攻めの投資”が必要であると言われています。しかし現状、レガシーシステムの保守や更新に予算を回している企業が多く、DXに必要なIT設備への投資に資金が回せないという状況に陥っています。

レガシーシステムを残したままでいると、将来的にセキュリティの問題やシステムトラブルによるデータ消失などの危険性は高まる一方。リスクが高止まりするだけでなく、将来的な経済損失も莫大なものとなるため、IT投資に対する考え方の改革も急がれています。

製造業におけるDXの取り組み

製造業におけるDXの取り組み

さまざまな課題をかかえる製造業ですが、DXに対してどのような取り組みが行われているのでしょうか。

サービス化

製造業と言えばものづくりを行う業種ですが、DXを実施することで新たな価値の創出が可能となります。通常製造業はものを作って提供するところまでで終わりですが、自社で生み出した製品を使って新たなサービスを提供するというビジネスモデルの変革も、DXを実施することで実現できるようになるのです。

サービスとは、一般的にものに対して保守や運用などを行うことを指しますが、これまで製造業において“サービス”にあたる部分は別部署や子会社などが担当してきました。作った製品を顧客へ納入したあとにサービスという新たな価値が生まれるため、あくまでも付帯的な業務であるという認識だったのです。

しかし、生産プロセスへデジタルの力を取り入れることで、生産を自動化することが可能に。具体的には、製造した機械や設備自体にセンサーなどを取りつけてネットワーク化させることで、随時機械の運転状況が確認できるようになります。

この生産プロセスの改革は、付帯的だったサービス業務を製品価値の向上へ直結させることができるようになるため、新たなビジネスチャンスの創出につながると考えられています。

技能のデジタル化

長年人の力に頼ってきた製造業では、深刻な人材不足が大きな課題として挙げられています。日本の製造業の競争力を維持するためには、人材不足に関する課題の解決を急がなければいけません。

そこでDXの大きな目的の一つとなるのが、技能のデジタル化。日本の製造業を支えてきた職人たちの高齢化が進んでいることもあり、職人たちが持つ技術のデータ化が急がれています。

これまで人から人へと受け継がれてきた技術をデータ化することで、訓練者が今までよりも早く技術を身につけることが可能に。代用可能な部分はロボットでの対応にも移行できるようになるため、生産力の向上や安定した働き方の確保にもつながっていきます。

自動化によるコスト削減

業務プロセスの一部分にデジタルの技術を導入することで、業務改善につながるケースもあります。製造業では、一つのものを作るためにたくさんの工程が必要になりますが、DXを実施することでこの工程の中にあるムダが見つかります。

業務プロセスの一部をシステムに置き換え自動化してしまうことで、従業員数の削減や作業時間の減少につながることから、コストの削減にも直結。システムから得たデータから業務の改善につながっていくケースもあり、人材不足が叫ばれる製造業にとって自動化は希望の光となる取り組みだと言えるのではないでしょうか。

製造業においてデジタル技術が活用される場面とは

製造業においてデジタル技術が活用される場面とは

製造業にて、デジタル技術を活用できる場面はたくさんあります。DXに取り組む上でも、デジタル技術は必要不可欠。どのような場面で活用されるのか、いくつか確認していきましょう。

AIを活用して需要を予測

DXに取り組む上でも、欠かせないデジタル技術となっているAI。製造業においても、AIの力はフル活用されています。

製造業では需要予測などの場面でAIが取り入れられており、さまざまな要因からの需要予測を得意とするAIの特徴をうまく活用。在庫の最適化において欠かせない役割を果たしており、合理的な判断を可能にしています。

AIで設備保守に関わる業務を自動化

需要予測だけでなく、製造現場における設備の保守にもAIが活用されています。設備保守には、AIの画像解析能力を活用。工場内の複数個所にカメラを設置し、そのカメラにて撮影された画像を解析しながら、設備の異常を検知します。

製造業において、設備の故障は納品スケジュールに支障をきたすだけでなく、予期せぬ事故にもつながりかねません。人の目では見つけられないような小さな異常も、AIの画像解析能力を活用すれば早い段階での対処が可能。

原因究明までのスピードをアップするためにも、AIの力が欠かせません。

IoTで技術をデジタル化

製造業におけるDXは、職人たちの技術のデジタル化がマストです。今まで肌感覚で伝えられてきた技術を数値化するためには、IoTなどのデジタル技術の活用が欠かせません。

製造業の現場をデジタル化するために導入されているIoTは、自らデータを収集することが得意なデジタル技術。ものづくりの現場には今まで数値化されてこなかったデータがたくさん眠っているため、IoT導入による技術の視覚化が急がれています。

IoTによって視覚化された技術は、工具の使い方などをモデル化するためにも必要不可欠な存在。後継者を育成するためにも、製造業におけるIoT導入は非常に重要であると言えます。

製造業のDX成功事例2選

製造業のDX成功事例2選

日本の製造業の企業では、すでにDXを成功させている事例がいくつかあります。今回は数ある事例の中から、二つのケースをご紹介します。

「工場IoT」で新しいものづくりを生み出す/トヨタ自動車

日本の製造業のトップ的存在であるトヨタ自動車は、非常に大掛かりなDXに取り組んでいます。さまざまな取り組みがある中で、特に注目を集めているのが「工場IoT」とよばれる取り組み。3DCADなどの既存デジタルデータを一元管理し、開発・市場・工場をデジタルの力で連携させようとしているのが「工場IoT」の全体像です。

トヨタによるこの取り組みは、ただ最新鋭のデジタル技術を導入することが目的ではなく、TPS(トヨタ生産方式)と呼ばれる基本の原則に従って先端技術を取り入れているのが特徴。企業内だけでなく、企業とユーザーがつながりながらものづくりを行うために、工場IoTの取り組みが行われています。

社会とつながる建材・設備機器を開発/LIXIL

建材・設備機器メーカーとして知られるLIXIL(リクシル)では、社会のニーズに応えるべく新たな設備機器の開発に着手。コロナ禍を経て高まった“タッチレス”へのニーズの高まりや、ネットでの買い物が増加した今の時代に合う製品のリリースに成功しています。

2020年に発表されたのは、IoTを活用したスマート宅配ポスト。IoTシステムを構築してポストと連携させることで、スマホとつながるポストを開発しました。2021年には、音声操作も可能なタッチレス玄関ドア開閉システムをリリース。コロナ禍だけでなくバリアフリーのニーズにも対応しており、社会的注目も集めたDX事例です。

まとめ

製造業はDXと相性が良いと言われる業界でもあります。しかし属人的なシステムが根強く残っていることから、まだまだその取り組み率は低いのが現実です。

日本のすばらしい製造技術を世界に発信し続けるためにも、DXへの取り組みが急がれています。

この記事の監修者:武田恭治

この記事の監修者:武田恭治

デジタルソリューション事業部 部長。
最新テクノロジーを活用した新規事業開発をすべくFabeeeに参画。
同社デジタルソリューション事業部 責任者として企業及び地方自治体のDX推進に従事。 プロフィール情報